メダル獲得の有力候補?!
近年は国際舞台で日本と対戦することも多く、日本より長いプロ野球の歴史をもっているメキシコ(WBSCランキング5位)だが、オリンピックの出場は今回が初めて。
『WBC』や『プレミア12』などの国際大会を積極的に誘致し、今年も開催を辞退した台湾に代わってオリンピック世界最終予選開催に手を挙げるなど、世界の野球シーンで急速にその存在感を増している。
また、国内トップリーグの『メキシカンリーグ』には、ラテンアメリカ諸国からタレントが集まり、またウインターリーグの『メキシカンパシフィックリーグ』も、今や「カリブ最強」とも言われるなど、メキシコは今やラテンアメリカにおける野球の中心地となっている。
今大会の代表チームは、メジャーリーガーの参加が認められていないため、メキシカンリーグでプレーする選手中心の構成だ。その中でも、24人中11人がメジャーリーグでのプレー経験をもっている。オリンピック出場を決めた一昨年の『プレミア12』のメンバーは4人のみで、オリンピック本番を前にメンバーを一新。24人中6人がアメリカ生まれの「メキシコ系アメリカ人」であることもこの国らしい。
準備万端の投手陣
まずは投手陣に目を向けてみると、先発陣は人材が豊富だ。
メジャーで2シーズンの経験があり、昨年は台湾リーグの富邦ガーディアンズで6勝を挙げ、今シーズンも台湾でプレーしていたマニー・バニュエロスは、オリンピックを控え7月にメキシカンリーグのモンテレイ・スルタネスに移籍。オリンピック本番に向けて準備は万端と言えるだろう。
同じ「台湾組」では、メジャー経験はないものの、昨年シーズン半ばの加入ながら統一ライオンズで6勝負けなしの成績を挙げ、チームの7年ぶり優勝に貢献したテオドレ・スタンキエビチ(テディ・スタンキーウィッチ)も先発の有力候補だ。今シーズンも引き続き統一でプレーし、コロナ禍でリーグ戦が中断するまで6勝を挙げ、リーグトップの防御率1.07をマーク。彼もまた、オリンピックを前にメキシカンリーグのティファナ・ブルズと契約している。
また、今シーズンから日本の独立リーグ、『ルートインBCリーグ』の茨城に加入し、7試合に先発して5勝2敗、防御率1.64と格の違いを見せつけたセサル・バルガスも忘れてはならない。彼もまた、オリンピックを前に茨城を退団し、名門モンテレイ・スルタネスでメキシカンリーグ復帰を果たした。メジャー経験もあり、2019年春に行われた侍ジャパンの『強化試合』では1イニングを無失点で切り抜けている。
この3人のほか、2019年の『強化試合』と『プレミア12』で来日を果たしているマニー・バルエダ(オリオールズ3A)と、メキシカンリーグのタバスコ・オルメカスで4勝を挙げているフアン・オラマスも先発陣を形成する可能性がある。
そんな投手陣の中で一番の実績を持つのが、メジャー通算19シーズンで通算73勝、WBCには過去4大会すべてに出場しているオリバー・ペレスだ。39歳になる今シーズンは、インディアンスで開幕を迎えたものの、5月初めにはリリースされ、メキシカンリーグのティファナ・トロスに移籍している。メジャー時代の全盛時は先発で2ケタ勝利を挙げたこともあるベテランだが、現在はリリーフに回っており、今大会でも勝負どころで左キラーの役割が期待される。
その他にも、2019年にDeNAでプレーした経験をもつサムエル・ヒッキー(サミー・ソリス)もブルペン陣の一角を担う。クローザーは、プレミア12のメンバーでもあるカルロス・ブスタマンテか、カージナルス時代の2011年に24セーブをマークした36歳のベテラン、ノエル・サラスが務めるだろう。サラスは今季、抑えとして11セーブをマークし、20試合に登板して未だ無失点と好投を続けている。
野手陣は半数以上が元メジャー組
攻撃陣には、メジャー経験者が名を連ねる。
その中でも一番の注目は、メジャー通算2050安打317本塁打のエイドリアン・ゴンザレス。WBCにもペレス同様、過去4大会すべてに出場しているレジェンドだ。2018年(メッツ)を最後に引退していたが、オリンピックを前にメキシカンリーグの新球団、グアダラハラ・マリアッチスで現役復帰。打率.340をマークし、いまだ打棒が健在なことをアピールして代表入りを果たした。
ゴンザレスはメジャー時代同様、グアダラハラでもファーストを守っているが、同じポジションには一昨年の『プレミア12』の3位決定戦でオリンピック出場を決めるサヨナラ打を放ち、今シーズンもメキシカンリーグで「.345」と好調な元阪神のエフレン・ナバーロが控えている。メジャー時代はファーストの守備力にも定評のあったゴンザレスだが、ブランクを考えると、オリンピックではDHに回るのではないだろうか。
内野陣には、最終ロースター発表後、出場辞退したロッテのブランドン・レアードに代わり代表入りしたライアン・ゴインズ(ブレーブス3A)、メキシカンリーグで17盗塁のイサック・ロドリゲス(ティファナ)、ナショナルズでレギュラーの経験もあるダニエル・エスピノサ(モンクローバ)らが控えており、不動のセカンドとして毎年のようにカリビアンシリーズに出場している元広島のラミロ・ペーニャはバックアップに回ることになるかもしれない。
ゴンザレスを核とする打線の中軸を担うのは外野陣だ。ナバーロ、ペーニャと同じく日本でのプレー経験もある元オリックスのジョーイ・メネセス(レッドソックス2A)、メキシコの名門・モンテレイで打率.381と絶好調のセバスティアン・エリサルデがレジェンドの脇を固めることになれば、侍ジャパンにとっても怖い打線になる。
ディフェンス陣をまとめる正捕手は、『プレミア12』のメンバーでメジャー経験もあるロマン・ソリスが務めるはずだ。チームを率いる監督は、1990年代半ばから2000年代初頭にかけてレンジャースやエンゼルスで活躍したベンジー・ヒル。最終ロースター発表前に監督交代やメンバー選考を巡っていざこざがあったが、世界にメキシコ野球の底力を見せつけるべく、レジェンドの下でメダルを狙う。
▼ 予想スタメン
1番(二)イサーク・ロドリゲス
2番(一)エフレン・ナバーロ
3番(右)ジョーイ・メネセス
4番(指)エイドリアン・ゴンザレス
5番(左)セバスティアン・エリサルデ
6番(中)ホセ・ゴンザレス
7番(三)ダニエル・エスピノサ
8番(捕)ロマン・ソリス
9番(遊)ライアン・ゴインズ
<投手>
17 エドガー・アレドンド(24)
20 マヌエル・バニュエロス(30)
22 サムエル・ヒッキー(32)※元DeNA
29 オリバー・ペレス(39)
35 フアン・オラマス(31)
36 テオドレ・スタンキエビチ(27)
46 カルロス・ブスタマンテ(26)
48 ササヒ・サンチェス(27)
49 セサル・バルガス(29)
50 マニー・バルエダ(32)
53 ダニエル・ドュアルテ(24)
59 ノエル・サラス(36)
<捕手>
13 アレクシス・ウィルソン(24)
44 ロマン・ソリス(33)
<内野手>
2 ライアン・ゴインズ(33)
18 ダニエル・エスピノサ(34)
19 ラミロ・ペーニャ(36)※元広島
23 エイドリアン・ゴンザレス(39)
24 エフレン・ナバーロ(35)※元阪神
74 イサーク・ロドリゲス(30)
<外野手>
5 セバスティアン・エリサルデ(29)
27 ホナタン・ジョーンズJr.(31)
32 ジョーイ・メネセス(29)※元オリックス
33 ホセ・ゴンザレス(27)