育成から這い上がり、昨季プロ初登板も果たした石井将希 (C) Kyodo news

◆ 逃げ切りVを目指して…

 “真夏の救世主”は、現れるか──。

 プロ野球は五輪開催による中断期間に突入。各球団はエキシビションマッチを戦いながら、後半戦への準備を進めていく。

 巨人の猛追を受けながらも2ゲーム差で首位ターンを決めた阪神は、今季開幕投手を務めながら6月以降は中継ぎ起用が続いていた、藤浪晋太郎の先発再転向を検討中。

 それに伴い、ローテーション入りしていたラウル・アルカンタラをリリーフに置くなど、複数の配置転換が行われることとなった。

 前半戦で浮き彫りとなった課題を埋め、いざ勝負の後半戦へと挑んでいく。

◆ 貴重なサウスポーに巡ってきたチャンス

 ポジションの変更だけでなく、“新戦力”の台頭も望まれる。

 23日、甲子園球場で行われた全体練習にはファームから数名の投手が合流。なかでも変則左腕の石井将希にとっては、ビックチャンスの到来だ。

 矢野燿大監督も「もちろん左(投手)は欲しいところやし。ファームでも、(一軍で)ちょっと見て欲しいというところまでは来ているんで。このエキシビションで良いものを見せてくれたんであれば、チャンスはある」とし、エキシビションマッチでの起用を明言した。

 指揮官が期待するのもうなずける。一軍のブルペンに目を移せば、「左の中継ぎ」が今後の戦いにおいて“泣き所”になりかねないからだ。

 開幕の時点では、セットアッパーを岩崎優に任せ、僅差の展開や複数イニングもこなせる万能役を岩貞祐太が務めていた。

 ところが、岩貞は状態がなかなか上がらず、7月5日に再調整のため二軍降格。現状は高卒2年目の及川雅貴と、昨年までは先発要員だったベテランの岩田稔が支えている。

 そんな中での“昇格”の意味合いを、石井将も分かっている。

 「アピールできるチャンスはいっぱいあると思うので、自分の持ち味をしっかりアピールできるように。結果を出すことが一番だと思う」

 育成で入団して3年目だった昨年9月に念願の支配下登録を勝ち取るも、同年は1試合の登板に終わった。

 立場を考えても、与えられた時間は多くない。生き残る道を探した末、腕を下げるという決断をしたのはその秋だった。

 11月のみやざきフェニックスリーグで登板を重ねると、今春の二軍キャンプでは昨年限りで現役を退き、球団の特別補佐となったOBの藤川球児氏から1時間以上も指導を受けた。

 「1球でチームを救うし、1球でチームを殺す、と言われて。今まで以上に一球一球、意識を持って取り組むことができた」

 大先輩からの言葉を胸に刻んだ。

◆ 「攻めていかないと」

 ファーム公式戦ではここまでチーム2位の23試合に登板。防御率2.30と結果を積み重ねてきた。

 しかし、待望のアピールチャンスで待っていたのは厳しい現実…。2試合連続登板となった28日のロッテ戦。6回二死一塁からの登板は、左の安田尚憲を迎えての場面。起用にベンチの意図がにじみ出ていたが、3ボールから投じた直球を捉えられ、左中間を破られる適時二塁打を浴びた。

 さらに髙濱卓也にも四球を与え、2連続の“対左”で結果を残すことができず。当然ながら、指揮官の表情も険しくなる。

 「きょうの投球じゃ、一軍ではちょっと苦しい。気持ちの部分でまずは攻めていかないと」と、ボール先行の苦しい投球に首を振った。

 目の前にやってきたチャンスは一瞬にして消失。今後、エキシビションマッチで起用されるかは分からない。それでも、失敗を取り返せるのは同じマウンドに他ならない。

 石井将希、試練の夏。崖っぷちから這い上がっていくしかない。

文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)

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