阪神とオリックスが首位ターン
約1カ月の五輪中断期間を終え、後半戦を再開させようとしているプロ野球。そこで今回はセ・パ両リーグの前半戦を振り返りつつ、前半戦の「ベストナイン」、「MVP」、「新人王」などを選んでみようじゃないかということで、対談企画を実施。野球ライターの西尾典文さん、菊地選手に加え、「河野名鑑」でもおなじみの河野万里奈さんをゲストに迎えて、各項目を選んでいただきました。
今回は前半戦の「MVP」について。首位ターンとなった関西勢から選手は選ばれたのか?!
——それでは早速、前半戦のセ・リーグのMVPから見ていきたいと思います。まずは西尾さんから見ていきましょう。新人の佐藤輝明選手(阪神)がMVP!
<佐藤輝明/阪神>
84試合:打率.267(311打数83安打)/20本塁打/52打点/OPS.833
西尾 ベストナインからはちょっと外れてしまったんですが(笑)。
菊地 評価低いのかなと思ってました(笑)。
西尾 セ・パあわせても(前半戦で)1番印象に残った活躍をしたのが佐藤選手だったと思います。阪神ファンの期待が高くて、開幕前はそれに応えられるのか不安だったんですがそれを遙かに超える活躍を見せてくれたのは凄いなと思います。阪神の株主総会で何も意見が出なかったのは佐藤選手が打っているからだと思うんですよね。
菊地 (笑)。
西尾 前半のホームランが20本ですから新人のホームラン記録31本を抜いて欲しいですし、三振記録もいま並んでいるようなのでそこも誰も抜けないくらいの数字を残して欲しいなと思います。
——ベストナインに選ばなかったのは?
西尾 成績を細かく見ていくとベストナインに選んだ3選手よりちょっと落ちるかなということころで選ばなかったんですけど、インパクトでMVPは佐藤選手かなと。エンゼルスの大谷選手もホームランか三振かじゃないですか? 小さくまとまらずに「三振してもあれだけホームラン打てているからいいんだ」っていう、日本の野球を変えるくらいのインパクトのある活躍だったのでMVPに佐藤選手を選びました。
——次点が同じ阪神から青柳投手。
<青柳晃洋/阪神>
14登板(95.1):8勝2敗/防御率1.79/QS率85.7%
西尾 正直、アマチュア(帝京大学)時代は青柳選手がプロでこんなに活躍できると思っていなかったです。変則フォームなので中継ぎでちょっと投げるくらいなのかなと思っていたのですが、今年はエースじゃないですか? なので「ごめんなさい!」の意味も込めて......MVPの次点に選ばせていただきました。
——雨男と呼ばれるほど、雨でことごとく登板機会を奪われている中で8勝を挙げていますもんね。
西尾 防御率も唯一の1点台でダントツの1位ですよね。
——続いて菊地さんのセ・リーグMVPを見ていきましょう。西尾さんと同じく佐藤選手ですね。
<佐藤輝明/阪神>
84試合:打率.267(311打数83安打)/20本塁打/52打点/OPS.833
河野 うわっ! えっ!? すごっ!
菊地 「プロ野球のMVP」といいますが、あまり野球に興味のない人を野球に振り向くきっかけになったくらいの存在だと思うんですよ。大谷選手がメジャーであれだけばかすか打って、プロ野球に佐藤選手がいなかったら「メジャーに比べて日本は寂しいね」という空気になっていたと思うんですよ。そこに佐藤選手が颯爽と現れてですね、「Number」の表紙とかね、むちゃくちゃかっこいい写真で馬鹿売れしているみたいですけど、凄いインパクトですよね。
開幕前は、僕とか西尾さんは「阪神ファンはいかに我慢できるかがポイントです」「三振かホームランの選手なので最初は我慢してくださいね」とかずっと言っていたんですけど、そんなことを言っていたのが馬鹿らしくなるような、みんながハッピーになりましたよね。佐藤選手が空振りするだけで「いいもん見れたな」って思えるような。本当にもう「プロ野球MVP」といえる選手だと思いますね。
——次点ではヤクルトの村上選手を挙げられていますね。
菊地 前半戦は非常に良いところで打って、前評判が決して良くなかったヤクルトを3位という順位に押し上げているという要因が一つと、あとは(サイン伝達疑惑事件で)阪神ベンチに果敢に向かって行ったというね。
河野 ヒヤヒヤしましたよね。
菊地 しっかり敬語を使って向かっていくという、きっちりスポーツマンシップというかマナー向上にも非常に貢献したんじゃないかなと。そういう意味での「プロ野球MVP」の次点ですね。
——続いてパ・リーグのMVPを見ていきましょう。西尾さんはMVPがオリックスの吉田正尚選手、次点もオリックスから山本由伸投手ですね。
<吉田正尚/オリックス>
87試合:打率.343(315打数108安打)/17本塁打/55打点/OPS.989
西尾 基本的には前半戦トップのチームからかなと思ってこの2選手を選びました。吉田選手はもうメジャーに行けるんじゃないかって思いますね。ホームランはそんなに打てないかもしれないですけど、あれだけ長打が打てて三振をしない。ピッチャーからしたら一番嫌じゃないですか? もう凄すぎて、パ・リーグだけにとどまらずプロ野球界で一番安定しているバッターという気がします。
——昨年首位打者をとって今年も前半戦で打率.343と打っていますけど全然騒がれないですよね。
西尾 それくらい打って当然、4割近く打って初めて騒がれるかなという領域に入ってきている選手ですよね。
あと山本選手もベストナインのところでも話しましたけど、この投打の柱がしっかりしているので、オリックスが優勝したら、この2人のどちらかがMVPになるんじゃないですかね。そこに宮城選手も絡んでくると思いますけど、でもやっぱりこの2人じゃないですか。
——続いて菊地さんのパ・リーグのMVPを見ていきましょう。菊地さんは西尾さんと逆、MVPが山本投手、次点が吉田選手ですね。
<山本由伸/オリックス>
16登板(113.2回):9勝5敗/防御率1.82/121奪三振/QS率81.3%
河野 おー!
西尾 (笑)。
菊地 この2人を外したら嘘でしょ。僕が山本投手を吉田選手より上にしたのは、野手は毎試合出るわけですから、貢献度が高いと思うんですよね。山本投手も打線の援護があんまりなくて、これまでのキャリアハイが8勝というなかで、今年は前半で9勝を挙げていますから。
全く野球を見たことが人でも山本投手の試合に連れて行ったら「なにこの人!? 凄いね!!」って思えるような、胸を張っておすすめできるピッチャーだと思うので、そういう存在でいうと(ベストナインで選んだ)平良投手(西武)ともちょっと迷いましたけど、やっぱり山本投手だなと。
——吉田選手はどうですか?
菊地 さっき西尾さんもおっしゃっていましたけど、ピッチャー視点で考えたらこんな嫌なバッターいないですよね。非の打ち所のない、押しも押されぬスター選手になったなという感じですね。
西尾 2人とも背は大きくないですよね。
菊地 170cmちょっとですね(吉田が173cm、山本が178cm)。
西尾 宮城選手も小さい(171cm)ですよね。
河野 確かに、ほんとだ。
——それは野球少年達に勇気を与えるという意味でも凄いですね。
菊地 去年までだったら吉田選手の孤軍奮闘だったところが青山学院大の先輩の杉本選手が、補佐じゃないですけど露払い的な感じでブレイクしたので、相乗効果で吉田選手の負担も少し減ってよかったですよね。
それではセ・パ両リーグの前半戦MVPはこの辺で。次回は両リーグの前半戦新人王を勝手に選びます!