右の長距離砲として期待
ロッテは昨季、25歳以下の右打者の本塁打が0本に終わるなど、“右の長距離砲”に課題を抱えていたが、プロ3年目の山口航輝が、ここまで6本のアーチを描く。
「チャンスをもらっているわりに、6本塁打は少ないかなと思います」と、本人は全く満足していない。
前半戦はプロ初本塁打を含む4本塁打を放ち、オールスター明けは2本の本塁打を放つ。8月15日のオリックス戦では1-2の5回一死一塁の場面で加藤匠馬の代打で登場し、山崎福也が1ボールから投じた140キロのストレートをとらえると、低い弾道のまま左中間スタンドに飛び込む一時逆転となる2ランとなった。
8月25日の日本ハム戦では、1-3の6回に同学年の藤原恭大が2ランを放ち同点に追いついた直後に、河野竜生が投じたストレートをバックスクリーンに放り込む勝ち越しの2ラン。
山口は藤原とのアベック弾に「(藤原)恭大打ったので自分も打ちたいと思って打席に入った。最高の結果になって良かったと思います」と振り返った。
後半戦に放った2本塁打はともに“価値”のある場面での一発だ。
エキシビションマッチで豪快な一発
5月31日に一軍登録抹消となりファームで調整となった山口は、東京五輪期間中に行われたエキシビションマッチで再び一軍でプレーしていたが、阪神との3連戦では8打数0安打、7月30日の広島戦では0-2の2回の第1打席、矢崎拓也が投じたスライダーに追いかけるようなスイングで空振り三振に倒れ、エキシビションマッチ序盤は安打が出ないのか、当てにいくようならしくないスイングに見えた。
それでも、同日の3-2の5回二死一、三塁の第3打席、1ストライクから矢崎が投じた外角高めの147キロのストレートを、山口らしいスイングでライトスタンドに放り込んだ。その後の打席でも安打を放ちこの日は3安打と、本塁打をきっかけに打撃の状態を上げたように見える。
「結果が出なかっただけで、変えたことはないですね。(7月30日の広島戦で)ホームランを打った打席は、変化球がきたら三振でいいやと思っていたので、まっすぐを弾き返すと考えて打席に入って、そこで1本出て1本出たことで気持ちが楽になった。思い切って打てるようになったのかなと思います」。
「エキシビションマッチはエキシビションマッチで、あの1本が自分のスイングができた。(好調が)続けられた要因になったと思いますし、後半戦に入ってからも1試合目で安打が出たり、気持ちの面で楽になった部分もある。そこでバットが振れているのかなと思います」。
その言葉通り、後半戦が始まってからは、パワフルな打撃を披露している。8月17日の西武戦では、2-7の6回二死一塁から高橋光成が1ボール2ストライクから投じた132キロの低めのスライダーに対し、体勢を崩されながらもレフトフェンス直撃の二塁打は見事だった。
本人は「練習していることが出せたのかなと思います」と話す。これは新人時代から常に口にしていた“下半身主導”で打つということがつながっているのだろうかーー。
「そうですね。福浦さん、松中さんに崩されてでもああやって打つのが理想と言われていたので、あの打席は自分のなかでもいい感じに打てたと思います」。
リーグ優勝を争うなか一軍でプレー
昨年は新型コロナウイルス感染により主力選手が離脱し、ファームから多くの選手が一軍昇格されるなか、山口は一軍に呼ばれなかった。今季はファームで調整する時期もあったが、エキシビションマッチで存在感を示し、後半戦は一軍でプレーする。
「去年は1回も一軍に上がることなくシーズンが終わったので、去年よりかはいいシーズンが送れていると思いますけど、内容はまだまだ。大事な試合がたくさんあると思うので、挽回するではないですけど、貢献できたらなと思います」。
リーグ優勝を争うチームのなかで、一軍の舞台で経験を積むだけでなく、結果を残しつつある山口。残り試合で1本でも多くチームを勝利に導く、一打を放って欲しい。
取材・文=岩下雄太