「充実はしています」
ロッテの11年目・南昌輝はファームでここまで26試合に登板して、1勝1敗、防御率2.60の成績を残しているが、まだ一軍に呼ばれていない。
「今年は一軍で結果を残していないですけど、怪我もしていないですし、順調にきているかなと思います。充実はしています」。
「怪我がないことが一番。調子が悪ければ、いろんなことができますし、良ければ、“もっとここをよくしたいな”と野球に真摯に向き合える。怪我すると治すことが一番になってしまう。もう一個上の段階でよくなるためにと考えられていることが、楽しいなと思います」。
2018年の8月には国が難病に指定する『黄色靭帯骨化症』の手術を受けて以降、“楽しく野球がやりたい”、“周りの目を気にせず、野球小僧になりたい”ということを口にしてきた。今季は大きな故障がなく、日々大好きな野球について考えられているからこそ、より楽しむことができている。
球のキレで勝負
今季に向けて1月の自主トレでは「1年間戦える体じゃないですけど、まずは怪我をしないことと、年齢もそうだし、スピードとかでは勝負できないじゃないですか。速いピッチャーも入ってきているので、球のキレでしか勝負できないと思っている。打ちにくさとかを磨くしかないなと思っています」と“球のキレ”にこだわり練習した。
現在の“球のキレ”については「1試合ごとで違いますけど、良かったり悪かったりの繰り返し。ただ良い回数は増えてきました」とのこと。
「同じようにトレーニング、コンディショニング調整をしても同じ球を投げられるわけではないですし、どこか張っているので、感覚がかわったりする。ただそんなことも言っていられない。そこを“こういうときはこうしなきゃいけない”というのを、どんどん作って試合に向けて調整している感じですね」。
体の状態が日々変わっていくなかで、その日の一番の良い感覚を見つけて投げている。その積み重ねが、6月30日の巨人との二軍戦で10試合連続無失点中に繋がっているのだろう。
若手にアドバイスも
二軍で結果を残しながらも、若手の好投手が増え、昇格していく投手を見ても若手が多い。
2019年に取材したときには「若手選手と一緒にトレーニングするなかで、しっかりと見せていきたいですし、一緒に巻き込んでお互いを高めていきたい」と話していたが、現在は「今できることと言ったら、相談されたら答えることでしか、チームに貢献ができていない。そういうところはやってきているつもりです」と明かす。
マリーンズにはこれまでも、投手にかかわらず野手も、ファームで過ごすベテランが黙々と練習し、若手選手にその背中を見せてきた。南も「一流の人はしっかりとしている印象があったので、そういうところはちゃんとしていたいというのはあります。背中を見せたいというほど何かやっているわけではないですが、サポートができればなという思いはあります」と、自分のできる範囲で若手選手にプラスになるよう声がけをしている。
ただ、勝負の世界。もちろん、一軍で投げたいという思いはある。
「一軍とか関係なく常に良い状態でいられれば、呼ばれてもなんとかなると思います。コンディションですよね。コンディショニングを常に良い状態で保っていきたいという感じですね」。
そして、最後に南はこう言った。「今年一番のボールを常に更新できるようなイメージで、最後まで怪我なくやりたいと思っています」。ファームにいても昨日よりも今日、今日よりも明日と、野球がうまくなりたいと貪欲で前向きな姿勢が南の大きな武器になっている。
取材・文=岩下雄太