8回1失点と好投したオリックス・田嶋大樹<写真=北野正樹>

◆ 首位攻防3連戦は1勝1敗1分けで3厘差変わらず

 オリックスは9日、ロッテとの首位攻防第3戦に臨み2-1とリードして9回を迎えたが、守護神・平野佳寿が荻野貴司にソロ本塁打を被弾して引き分け。このカードを1勝1敗1引き分けで終え、首位奪還はならなかった。

 シーズン終盤を前に、首位攻防戦らしい1点を争う好ゲームとなった。序盤は投手戦となり、オリックスは自己最短のKOとなった前回登板から「中7日」でマウンドに上がった田嶋大樹が好投。普段よりも1日長い調整期間を活用して「疲労を抜くことに専念し、体のキレを再確認した」という左腕は、最速154キロの直球を軸に、フォークボールやカットボール、ツーシームを操り、6回まで2安打、毎回の8奪三振とロッテ打線を沈黙させた。

 7回にNPB復帰を果たし、昇格即スタメン起用となった小窪哲也にソロを許したものの、8回を116球、3安打、10奪三振、2四球と好投。 田嶋は「ストライク先行の投球が出来たし、フォームのバランスも良く、落ち着いてリズムよく投げられた。フォークもいつもより少しチェンジアップ気味に抜け、より効果的に使えた」と自身のピッチングを振り返り、プレッシャーのかかる試合での好投に自信を深めていた。

 一方の打線は、左太もも裏の軽い筋損傷から復帰したT-岡田が「4番・DH」で復帰し、初回に中前打を放ったが、カットボールやシンカーで打たせて取るロッテ・石川の前に4回までに2併殺と無得点に抑えられた。それでも、5回に福田周平の中前打で先制。

 6回には今季の23本塁打中、11本をロッテ戦で記録している“鴎キラー”の杉本裕太郎がソロ本塁打を放ち田嶋を援護。「点を取れず投手陣に申し訳ない試合が続いていた。甘い球だけに絞っていた」と振り返った杉本は、「自分で決めようとすると、いい結果が出ない。Tさんが居るだけで頼もしく、後ろにつなぐ気持ちで気楽に打席に入れる」と、「T-岡田効果」を快打の要因に挙げた。

 その後、逃げ切りを図ったオリックスだったが、1点差で迎えた9回に平野が痛恨の被弾。落ち切らないフォークボールをすくい上げた荻野の打球は、風にも乗ってフェンス最上部をかすめるようにして最前列に着弾。三塁を回った荻野が左翼方向を振り返って確認したほど、紙一重の打球だった。

 その裏、オリックスは代打・ジョーンズの右中間二塁打と四球などで二死一、二塁のサヨナラ機を作り、紅林弘太郎が鋭い打球を放ったが、三塁手・三木亮がライナーを好捕。ベンチの野手全員を起用したオリックスだったが、総力戦は引き分けという結果に終わった。

 
 試合後、中嶋聡監督は好投した田嶋に「よく投げた。この前とは全く別人の、素晴らしい投球だった」と賛辞を送り、4回途中8失点と大乱調だった前回登板を払拭する投球を見せた左腕を評価。逃げ切りに失敗したことについては、「負けたわけではなく、切り替えるしかない。あと35試合。こういう試合になっていく。これをどう拾っていくかかしかない」と、前を見据えた。

 ロッテとの3連戦に勝ち越せなかったものの、初戦は8回に2点差を追いついて最後はサヨナラ勝ち。2戦目は守りのミスが出るまでは互角の勝負を展開した。この夜も、野手陣は総力戦でサヨナラの舞台を整えての引き分け。戦力が整わない中でも決して諦めない粘り強い試合運びは、終盤の勝負所でも生きるはずだ。

取材・文=北野正樹(きたの・まさき)

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