ここまでファームで4本塁打も…
春季キャンプのときに「ホームランを打ってアピールしたい」と話していたロッテの山本大斗は、9月15日に行われた日本ハムとの二軍戦で、プロ入り後初めて1試合2本塁打を放つなど、ここまでファームで4本のアーチを描く。
「自分のなかではもう少し打ちたいなという気持ちがあったんですけど、簡単には打てないんだなと感じました」。
山本はイースタン・リーグ開幕戦となった3月20日のDeNA戦、プロ初打席で田中健二朗が投じた初球のストレートをライトへ運ぶプロ初本塁打の好スタートを切ったが、その後2本目の本塁打を放つまでに時間がかかった。
「打ちたいという気持ちが強くて、技術面で自分から打ちにいった部分がありました」。
本塁打だけでなく、打率も5月が.148(27-4)、6月が打率.182(22-4)、7月が.111(18-2)と結果を残せずにいた。
「自分のバッティングができるようにというのをずっと続けてやっていました。自分は突っ込んでしまうところがあったので、引きつけて強い打球を打つということを今も意識してやっています」。
福浦和也二軍ヘッドコーチ兼打撃コーチからアドバイスを受け、課題克服に励んだ。
山本の技術面を支えるうえで、重要になってくるバットも変更した。春季キャンプ取材したときには、85センチ、890グラムの重さのバットを使用していたが、「長さを1センチくらい長くしました。グリップも細いのが好きだったんですけど、太めのグリップにしました」とのこと。バットの長さを変えたことで「下半身を意識して振ったら、バットが長いので飛ぶイメージがつきました」と好感触を得た。
8月以降に調子を上げる
8月に入ると、1日の西武戦で、2-2の6回一死二塁の第3打席、12年のMVP左腕・吉川光夫が投じた高めのストレートをセンター前に運ぶ安打を放つと、4-2の8回二死走者なしの第4打席では、昨季最多セーブのタイトルを獲得した増田達至からライト前に安打。一軍で実績のある投手から安打を放ち、マルチ安打を達成した。
「結果を残せたことは自信になりましたし、掴めたものもあったかと思います」。
具体的に掴めたものについて「打席に入って力を抜いて構えることの大事さがわかりました。力を抜いて打席に立つようにしました」と教えてくれた。
力を抜いて打席に立つ大切を知った山本だったが、一軍の緊張感だろうか、プロ入り後初めて一軍の試合出場となった8月8日ヤクルト(ZOZOマリン)とのエキシビションマッチでは、石山泰稚の高めのストレートに手を出し3球三振。「ちょっと打ちたいという欲がありすぎました。正直あんまり覚えていなくて、なんで振ってしまったのかなと」と反省した。
それでも、「2回目のマリンスタジアムということもあって、一軍のエキシビションマッチよりかは楽に立てました」と、8月24日の日本ハムとの二軍戦では、金子弌大から左中間を破る適時二塁打を放ち、マリンで初安打・初打点をマークするなど、プロ入り後初の猛打賞を達成。
8月は月間打率.375(24-9)、7打点と状態をあげた。9月に入ってからも好調は続く。1日のDeNA戦で開幕戦以来となる本塁打を放つと、9月8日のヤクルト戦から4試合連続安打、さらに15日の日本ハム戦では1試合に2本塁打を放った。9月はここまで、打率.278(36-10)、3本塁打、9打点だ。
「何回も対戦してくる投手になってくると、打席のなかである程度、自分で投手の球種の軌道を描いて入れるようにはしています」。試合を出場するなかで、経験値、相手投手との対戦が増えたことで、春先よりも投手のイメージができるようになったことも好結果の要因となっている。
そのなかでも、15日の日本ハム戦で吉田輝星の高めに浮いた変化球を捉え、レフトスタンドに放り込んだ本塁打は素晴らしかった。
「その日の練習でまっすぐが強いから福浦さんに、まっすぐにタイミングを合わせて、浮いてきた変化球を打っていくように言われていたので、その通りできたので良かったと思います」と、福浦コーチの助言を活かした本塁打になった。
また、ここ最近の打撃を見ていると、甘い球を1球で仕留められているように見える。本人は「甘い球がきたら仕留めにいくんですけど、最近はボール球に手も出るようになってきたので、そこは課題かなと思います」と冷静に自己分析した。
結果を残そうと、目の前の課題を一つ一つクリアしていき、また新たな課題と向き合う。シーズンも残すところあとわずか。「最後なんとかもっとバッティングで、少しでもアピールできるようにしたいです」。将来の大砲候補は、支配下選手登録、その先の一軍での活躍を目指すために、今はファームで実戦経験を積んでいく。
取材・文=岩下雄太