これぞエースの投球
パ・リーグ2位のオリックスは18日、本拠地・京セラドーム大阪で西武と対戦。
エース・山本由伸が8回を投げて5安打・11奪三振で無失点の好投を見せ、リーグトップを独走する14勝目(5敗)を挙げた。
1週間前の同カードでは、山本が先発した初戦で白星を挙げながら、土日で連敗を喫して負け越しているオリックス。
そのリベンジはもちろんのこと、この日は敗れると首位・ロッテにマジックが点灯する可能性もあっただけに、より負けられない試合となった。
立ち上がりから奪三振ショーを展開する山本に対し、西武も同級生との投げ合いに闘志を燃やす今井達也が3イニングで6奪三振と一歩も引かぬ力投。序盤を0-0で終える。
迎えた4回、オリックスは杉本裕太郎とT-岡田の連打で無死一・二塁のチャンスを作ると、スティーブン・モヤが初球の外寄りまっすぐを逆らわずに左中間へ。
「山本が投げているゲームだし、こうして良い結果になってくれて良かったよ!」と振り返った打球は左中間突破の適時二塁打。一塁走者のT-岡田も生還し、一気に2点を先制した。
さらに5回には一死から四球の宗佑磨を一塁に置き、3番を任されている高卒2年目の19歳・紅林弘太郎がレフトスタンドに叩き込む豪快な一撃。
実に6月23日以来、約3カ月ぶりのアーチは「打ったのはカットボールだと思います。後ろにはラオウさん(杉本)がいてくれますし、前の打席で凡退してしまっていたので、なんとかラオウさんにつないでいく気持ちで打席に入っていました。それが良い結果につながってくれたと思います」という会心の一打。リードを4点に拡げた。
援護をもらった山本は、6回に先頭を安打で出すも併殺でピンチの芽を摘み、8回も先頭に安打で出塁を許したが、後続から2つの三振を奪ってここも無失点。
この日は8回まで投げて119球、被安打5で与四球が1、計11個の三振を奪って無失点の好投。9回はタイラー・ヒギンスがわずか7球で三者凡退に仕留め、エースに14勝目をプレゼントした。
「ひとつひとつ積み重ねて…」
山本由伸は試合後、「西武との対戦が多くなってきたので、より丁寧に投げました。ランナーも出しましたが、ピンチを抑えられたので良かったです」と試合全体を振り返ってコメント。打線の援護については、「いつも先に点をあげないように投げているので助かりました」と笑顔を見せた。
また、この日の11奪三振でキャリア通算の奪三振数が507個に到達。球団最速での500K到達となったことに関しては、「ひとつひとつ積み重ねて、また大きな記録を達成できれば良い」とし、次なる大台に向けて無心で突き進んで行く考えを示す。
最後は「今は2位になってしまっているんですけど、絶対に越すぞという気持ちで戦っていこうと思っています」と力強く意気込みを語り、球場は拍手に包まれた。
チームを率いる中嶋聡監督も、エースの好投について「いつも通りの入りだったと思う」としつつ、頼りになる存在かという問いには「誰もが分かっているでしょ」と全幅の信頼を口にする。
また、1週間前に完封を食らった西武・今井との再戦については「前回やられた反省点をみんなで考えた」と対策を練って臨んだことを明かし、紅林の一発は「大きかったんですけど、“3番”ではないですね。たまたま“3番目を打っている”打者」と手放しで褒めることはしなかったが、「シーズン終盤になって落ち着いて打席に立てているのは良いこと」と付け加え、厳しい優勝争いの中で奮闘する若手を讃えた。
「あと1点は取れた」というチームの状態には、「いろいろなことが起きて、いろいろな選手がいなくなってしまったんですが、今いる選手で何とかやっていくしかない。やりくりしていきます」と正直な想いを吐露しながら、「みんなで考えてつないでやってくれれば」と“つなぐ意識”を改めて強調。
最後は「久しぶりに京セラに戻ってホッとしています。本当に勝てて良かったと思う」と、先月末以来となった京セラドーム大阪での試合で手にした勝利の味を噛み締めた。
快勝でマジック点灯を阻止しただけでなく、ライバルであるロッテが日本ハムに敗れて連勝が6でストップした。
残り30試合を切って、首位とのゲーム差は「2.5」…。25年ぶりの歓喜に向けて、中嶋オリックスは『全員で勝つ』野球を最後まで貫く。
取材・文=どら増田