話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、9月15日に行われた巨人-DeNA戦で、劇的なサヨナラ勝ちの立役者となった八百板卓丸選手と、岡本和真選手にまつわるエピソードを取り上げる。
9月に入って、引き分けを挟み、まさかの6連敗。3連覇に突き進むはずが一転、首位から3位に後退してしまった巨人。連敗は12日の広島戦で、エース・菅野智之が奮投。女房役の小林誠司が決勝アーチを打って何とか止めましたが、続く14日のDeNA戦ではルーキー・牧秀悟に決勝2ランを打たれて敗北。チームに暗雲が立ちこめていました。
そんな嫌な流れを何としても断ち切りたかった原辰徳監督は、かねてから期待していた“元気者”を今季(2021年)初めて1軍に昇格させました。元楽天の八百板卓丸・24歳です。
八百板が昇格した15日のDeNA戦、巨人は最終回を迎えて2点ビハインドと苦しい展開でした。9回、1死一・二塁のチャンスで、原監督は八百板を代打で起用します。1軍の試合に出場するのは、楽天時代の2018年以来、実に3年ぶりのことでした。
八百板は期待に応え、三嶋のスライダーをセンター前に運び1点差に。このタイムリーがプロ初打点、というおまけ付きでした。さらに松原聖弥がヒットでつなぎ、坂本勇人が同点タイムリー。土壇場で巨人は追い付きます。
なおも1死満塁のチャンスで、打席には4番・岡本和真。岡本はレフトに浅いフライを放ちます。ここで三塁から果敢にタッチアップして、ホームへヘッドスライディング、サヨナラ勝ちを決めたランナーは八百板でした。
岡本らしい言い回しで、ドームは笑いに包まれましたが、原監督にとって八百板は、崖っぷちにいたチームを甦らせた救世主でした。
もともと楽天の育成選手だった八百板。入団3年目の2017年にやっと1軍昇格を果たしますが芽が出ず、2019年に戦力外通告を受けてしまいます。そんな八百板を拾ってくれたのが、巨人でした。契約は再び育成選手でしたが、引き続きNPBでプレーする機会が与えられた八百板。燃えないわけにはいきません。
プロ6年目の昨季(2020年)は2軍戦で打率3割1分3厘、本塁打8本の好成績を残して首脳陣にアピール。この活躍が実り、晴れて今年(2021年)の春季キャンプ中に巨人移籍後初の支配下登録を勝ち取ったのです。新しい背番号は「51」。イチローと同じ番号を与えたところに、原監督の期待の高さが窺えます。
楽天時代は、自己流でプレーしていたと言う八百板。巨人では、バッティングフォームを一から見直してくれた“恩人”がいました。阿部慎之助2軍監督と、当時2軍の野手総合コーチだった、村田修一1軍野手総合コーチです。
阿部2軍監督と村田コーチに、タイミングを意識することと、バットのヘッドが下がるクセを修正するよう繰り返し指導されたと言う八百板。毎日トスバッティングを繰り返すことで、実戦でも結果を出せるようになって行きました。
そして今年の自主トレ期間中には、練習場所のジャイアンツ球場で、ある選手とあれこれ話す機会がありました。今回、一緒にお立ち台に立った岡本和真です。岡本は1996年6月、八百板は1997年1月の早生まれで、実は2人は同学年なのです。
自分と同い年ながら、すでに巨人の主砲を張る岡本。その野球に対する姿勢を改めて知ったことも、八百板が大きく飛躍するきっかけとなりました。環境を変えれば、働ける選手はたくさんいる、というのが原監督の持論。積極的なトレードや、他球団をリリースされた選手の獲得はその一環でもあります。
まだまだ先の見えないセ・リーグ。リーグ3連覇、そして9年ぶりの日本一奪回を実現するには、八百板のようにひたむきな“起爆剤”が必要なのです。
『今日登録されて、やっと巨人の一員になれた気がします。本当にうれしい気持ちです』
~『デイリースポーツ』2021年9月15日配信記事 より(八百板卓丸・ヒーローインタビューでのコメント)
そんな嫌な流れを何としても断ち切りたかった原辰徳監督は、かねてから期待していた“元気者”を今季(2021年)初めて1軍に昇格させました。元楽天の八百板卓丸・24歳です。
八百板が昇格した15日のDeNA戦、巨人は最終回を迎えて2点ビハインドと苦しい展開でした。9回、1死一・二塁のチャンスで、原監督は八百板を代打で起用します。1軍の試合に出場するのは、楽天時代の2018年以来、実に3年ぶりのことでした。
八百板は期待に応え、三嶋のスライダーをセンター前に運び1点差に。このタイムリーがプロ初打点、というおまけ付きでした。さらに松原聖弥がヒットでつなぎ、坂本勇人が同点タイムリー。土壇場で巨人は追い付きます。
なおも1死満塁のチャンスで、打席には4番・岡本和真。岡本はレフトに浅いフライを放ちます。ここで三塁から果敢にタッチアップして、ホームへヘッドスライディング、サヨナラ勝ちを決めたランナーは八百板でした。
『あのフライで僕がランナーだったら走っていない。(八百板)卓丸が走ってくれたので、感謝の気持ちでいっぱいです』
~『スポーツ報知』2021年9月16日配信記事 より(岡本和真・ヒーローインタビューでのコメント)
岡本らしい言い回しで、ドームは笑いに包まれましたが、原監督にとって八百板は、崖っぷちにいたチームを甦らせた救世主でした。
もともと楽天の育成選手だった八百板。入団3年目の2017年にやっと1軍昇格を果たしますが芽が出ず、2019年に戦力外通告を受けてしまいます。そんな八百板を拾ってくれたのが、巨人でした。契約は再び育成選手でしたが、引き続きNPBでプレーする機会が与えられた八百板。燃えないわけにはいきません。
プロ6年目の昨季(2020年)は2軍戦で打率3割1分3厘、本塁打8本の好成績を残して首脳陣にアピール。この活躍が実り、晴れて今年(2021年)の春季キャンプ中に巨人移籍後初の支配下登録を勝ち取ったのです。新しい背番号は「51」。イチローと同じ番号を与えたところに、原監督の期待の高さが窺えます。
楽天時代は、自己流でプレーしていたと言う八百板。巨人では、バッティングフォームを一から見直してくれた“恩人”がいました。阿部慎之助2軍監督と、当時2軍の野手総合コーチだった、村田修一1軍野手総合コーチです。
「楽天の時はバッティングフォームとかいじられたことなくて『そのままでやってくれ』と言われて。巨人に来てから、こうした方がいい、ああした方がいい、と結構言ってもらえたんです」
~『スポーツ報知』2021年2月15日配信記事 より(八百板コメント)
阿部2軍監督と村田コーチに、タイミングを意識することと、バットのヘッドが下がるクセを修正するよう繰り返し指導されたと言う八百板。毎日トスバッティングを繰り返すことで、実戦でも結果を出せるようになって行きました。
そして今年の自主トレ期間中には、練習場所のジャイアンツ球場で、ある選手とあれこれ話す機会がありました。今回、一緒にお立ち台に立った岡本和真です。岡本は1996年6月、八百板は1997年1月の早生まれで、実は2人は同学年なのです。
『あいつは、あんまりよく何考えているかわからないんですけど、すごい野球に対して真摯というか、そういう姿勢は僕も見習うべき』
~『スポーツ報知』2021年2月15日配信記事 より(八百板コメント)
自分と同い年ながら、すでに巨人の主砲を張る岡本。その野球に対する姿勢を改めて知ったことも、八百板が大きく飛躍するきっかけとなりました。環境を変えれば、働ける選手はたくさんいる、というのが原監督の持論。積極的なトレードや、他球団をリリースされた選手の獲得はその一環でもあります。
まだまだ先の見えないセ・リーグ。リーグ3連覇、そして9年ぶりの日本一奪回を実現するには、八百板のようにひたむきな“起爆剤”が必要なのです。