9月の月間打率は.322
9月の月間チーム打率.210と苦しんだマリーンズ打線のなかで、藤岡裕大は9月1日の西武戦から18日の日本ハム戦にかけて14試合連続安打を放つなど、9月の月間打率.322(87-28)と存在感を放った。
下位打線からチャンスメイクし上位打線に繋げば、本人は「チャンスではそんなに打てていない」と話したが、得点圏でも勝負強さを発揮。
9月26日の西武戦では4-4の5回二死一、二塁の場面で、公文克彦から勝ち越しの適時打を放つと、5-4の7回一死満塁の打席では走者一掃の3点適時三塁打を放った。9月30日のオリックス戦では、最終的にチームは敗れてしまったが、2-1の8回二死一、二塁からセンター前に追加点となる適時打。シーズンの得点圏打率は.253だが、9月に限っていえば得点圏打率は.333だった。
好調の裏に日ハム・近藤の存在
9月だけでなく、後半戦に入ってからは打率.304(135-41)と打撃好調だ。その要因について藤岡は「自主トレが一番自分にとって大きかったなと思います」と自己分析する。
「自主トレでしっかり打ち込むことができましたし、いろんなアドバイスをもらったおかけで今に繋がっていると思います」と、日本ハムの近藤健介と行った自主トレが大きかったという。
これまで取材のなかで藤岡は“強く振ること”、“下半身の使い方”、“タイミング”この3つを口にすることが多かった。「考え方とかフォームという部分では、だいぶ変わってきましたね」。
具体的に考え方の部分で、「強く振るというよりは、イメージしたことをなるべく体で表現できるように、打球方向などを打席内でイメージしていますね」と明かす。「フォーム、ボールへのアプローチの仕方、いままでやってきたことと、ちょっとイメージが違いましたけど、今も継続してやっています」と、近藤のアドバイスによって打席内での考え方や意識をガラッと変えたことが好結果に繋がっている。
これまでもセンターから反対方向への打球が多かったが、今季はセンターから反対方向に強い当たりが増えた。本人は「後半はそっち(左中間)に打てていないので、もやもやしているところなんですけど」と満足はしていないが、「前半戦は“理想の打球”だなと思って、ずっとやってきたことが試合で結果になってきた。ちょっと手応えを感じてはいましたね」と前半は納得のいく打球が多かったとのこと。
また、昨年まではセカンドゴロや外野へのフライアウトで打ち取られることが多かったが、今季はそういった打球が減少したように見える。その要因についても「左中間に打とうと意識が強い」といったことが関係しているのではないかと自己分析した。
打撃練習でも、センターから反対方向を意識して打っている。ただ、新人時代から試合前の打撃練習では、センターから反対方向に打っていた。これまでと現在では何か違いがあるのだろうかーー。
「意識は一緒なんですけど」と前置きをした上で、「昔は手で操作しているイメージだった。今は手で打ちにいくのではなく、体ごと打ちにいくイメージですね」と反対方向に打ってはいるが、当時と今では考え方に変化がでてきたようだ。
サードでも54試合に出場
守備面では今季、エチェバリアが加入したこともあり、本職のショートで89試合に出場しているが、サードでも54試合に出場する。
大学時代まではサードを守っていたが、社会人に入ってからは1年目に外野を経験した時期もあったが、社会人2年目からプロ入り後はショートをメインに守ってきた。
サードとショートでは「景色が全然違います。サードは急にボールが飛んでくる感覚がありますね」とその違いを口にする。また、「サードは足が使えないので、反応で捕って投げるしかない。また打球のスピード、バッターとの距離感は違うので、サードは反応が遅れると捕れなかったりする」とサードでの難しさについて語った。
緊張感を味わいながら
残りは21試合。前カードの2位・オリックスとの3連戦に3連敗を喫したが、マリーンズは現在首位に立っている。さらに3位・楽天と3.5差、4位・ソフトバンクまで5ゲーム差と、激しい優勝争いを繰り広げている。藤岡は「とにかく優勝したいという思いが一番強いですね」と力強く意気込んだ。
藤岡がプロ入りした2018年からチームは5位、4位、2位とCS争いの経験はあったが、シーズン最終盤で首位を経験したことがない。
これまでとプレッシャーは「全然違います。チームとして、すごい緊張感を持ってやっています。ただ本当に(優勝に)手が届くところまできている。こういうチャンスをモノにしないと」。
最前線で戦う選手たちは、リーグ優勝という大きな目標を掴み取るため、重圧を感じながらも、日々勝利のため必死に戦っている。緊張感のある戦いが続くなかで、10月も攻走守でチームの勝利に貢献する活躍を期待したい。
取材・文=岩下雄太