投打にいぶし銀の働き
2017年のオフに、ドラゴンズから戦力外通告を受け、ベイスターズにやってきた武藤祐太。2018年オフ、ジャイアンツを戦力外となった後、トライアウトを経てベイスターズに加入した中井大介。一度は非情通告を受けながらも、横浜の地で再び輝きを取り戻した2人が、今シーズン限りで現役引退を決心し、17日に球団事務所にて引退会見を行った。
武藤は「11年間ありがとうございました」、中井も「14年間ありがとうございました」とそれぞれ感謝を口にして会見がスタート。
キャリア2度目の通告を経て現役引退を決断した武藤は「1度目の戦力外でそこからベイスターズに拾ってもらったときに、次にこういうことが来たら諦めるというか、しっかり覚悟を持って毎年腕を振ってきたので、言われたときにはすぐ決断していました」と話し、中井は「ジャイアンツで1度戦力外を経験して、ベイスターズでユニフォームを着れるチャンスを頂いたときに一年一年悔いの残らないように、これまでトライできなかったことにもしっかりトライして、ベイスターズでは野球を一年一年やっていこうと思っていたので、悔いがないといえば嘘になるんですけど、ジャイアンツでのときとは違った思いで、受け入れようという気持ちのほうが強かった」と引退を決意する経緯を説明した。
キャリアを通して印象に残っている場面を問われると、武藤は「初勝利をしたとき(中日時代=12年5月27日対ソフトバンク)とか、ベイスターズ入ってから一番最初に投げた試合(2018年5月18日対巨人)は、プロ野球選手でいられるんだなという思いを噛み締めながら投げた思い出がある」とし、中井は「ジャイアンツではリーグ優勝、日本一を経験させて頂き、ベイスターズでお立ち台に上がれたときは印象に残っています」と振り返った。
ベイスターズ在籍4年で72試合に登板した武藤は「年も上のほうに当たるんですけどすぐに打ち解けてくれて、みんな家族のように接してくれた。一軍コーチもフラットな状態で僕を見てくれた。すごく居心地のいい4年間だったな」とDeNAの一員として過ごした時間を振り返り、中井も「温かく迎えて頂いて、コーチの方にもたくさんチャンスを頂きましたし、チームメイトのみんなにも色んなことを教えてもらいながら。一緒に野球できたことが幸せで、これからの財産になって行くなと。ありがたい限りです」と、チームの環境に感謝。
またファンに対して武藤は「満員のナゴヤドームでも、満員の(横浜)スタジアムでも投げたことがありますけど、大声援がすごく力になりましたし、もうひと押ししてくれるファンの声援が力にもなりました。本当に感謝してもしきれないです」。
中井も「14年間色々なことがあって、ファンの方の期待に応えられたことよりも、応えられなかったことのほうが多かったんじゃないかなといった部分があるんですけど、どんなときも温かく、球場に足を運んでくれる方たちの声援で前を向くことができました。本当に声援に支えられて14年間頑張れたという気持ちが大きいです。ありがとうございましたという気持ちしかないです」と改めて気持ちを表した。
今後について2人共ハッキリとは決まっていないとした上で、武藤は「しっかりベイスターズさんに恩返しをしたいと考えてます」とし、中井は「野球に恩返ししたい」と未来を見据えていた。
今シーズン1軍での登板はなかったが、貴重な中継ぎ右腕としてブルペンを支えた武藤と、今シーズンは12試合の出場で14打数1安打に終わったものの、ユーティリティプレーヤーとして存在感を発揮した中井。同じような境遇からベイスターズに貢献してくれた彼らの存在は、ファンの心にいつまでも残り続ける。
取材・文=萩原孝弘(はぎわら・たかひろ)