全球まっすぐの真っ向勝負
今季限りでの現役引退を表明しているDeNA・武藤祐太が23日、本拠地で行われた中日戦の9回に登板。
古巣を相手に打者1人と対戦。髙松渡を空振り三振に斬って取り、11年のプロ野球生活にピリオドを打った。
5-0とリードした状況で、9回表の頭から横浜スタジアムのマウンドに登った武藤。
1番・髙松に対して全5球ストレートの真っ向勝負を挑むと、2ボール・2ストライクから投じた低めの138キロで空振り三振。
後を継いだケビン・シャッケルフォードとハグを交わし、球場全体360度からの拍手を受けて最後のマウンドを降りた。
戦力外を乗り越えて…
試合後にはセレモニーも行われ、中日に入団してからDeNAでの活躍を振り返るVTRが放映。つづいて、ともにブルペンを支えた仲間たちからメッセージが送られた。
三嶋一輝は「集中力と責任感」、平田真吾は「芯の通っているひと」、三上朋也は「素直に生きているひと」、田中健二朗は「野球に真摯に取り組むひと」…。
それぞれが印象を明かし、最後に木塚敦志コーチからは「助けてくれた」と労いの言葉をかけられた。
スピーチでは、「ドラゴンズ7年、ベイスターズ4年。あまり良い結果は出ませんでしたが、自分なりに必死にやってきました。本当にお世話になりました」と、まずは所属した両球団へ感謝。
つづけて、「まだ家族に感謝の気持ちを言えていないので、この場を借りて言わせてください。お父さん、お母さん。丈夫な身体に生んでいただきありがとう。妻、娘。どんなときも味方でいてくれてありがとう」と、家族への感謝も。
最後は「満員のナゴヤドーム、そして横浜スタジアムで投げられたことは一生の宝物です。11年間、本当にありがとうございました」と、球場を埋めたファンに頭を下げた。
三浦大輔監督は武藤について、「今までブルペンを支えて来てくれた。黙々と仕事をこなす真面目な投手と思って見ていました」とコメント。
特に自身がピッチングコーチを務めていた2019年は、中継ぎとして31試合に登板するなどチームのために腕を振り続けた姿を間近で見ていただけに、その貢献度はよく知っている。
最後は「ファンにセレモニーで送り出してもらい、“お疲れ様”のひと言に尽きますね」と労いの言葉を送った。
2017年のオフに中日を戦力外となり、DeNAにやってきた男は、勝ち試合・負け試合に関わらず、回跨ぎも連投もこなし、さらにはオープナーまで、チームの戦術に合わせていかなるシチュエーションでもチームのために全力で腕を振ってきた。
思えば中日時代の2011年、プロ初登板も横浜スタジアムだった。プロのキャリアをスタートさせた地で迎えた現役最終登板。八重歯が特徴的な爽やかな笑顔を残し、マウンドを後にした武藤祐太の勇姿を、ファンは決して忘れない。
取材・文=萩原孝弘