「ベストゲーム」と「悔いが残る試合」は…?
プロ野球の2021年シーズンもいよいよ大詰め。
パ・リーグは30日のロッテ-日本ハム戦をもって今季のレギュラーシーズン全日程が終了した。
各部門の上位者を見ると、25年ぶりのリーグ優勝を果たしたオリックス勢が個人タイトルレースでも躍動。
エースの山本由伸は、2006年の斉藤和巳以来となる“投手四冠”を達成。最多勝(18勝)・最高勝率(.783)・最多奪三振(206個)・最優秀防御率(1.39)と主要部門を独占しただけでなく、完封もリーグトップの4つと圧巻の成績を残した。
「シーズン前から、取れるタイトルは全部取りたいと思っていたから実現することができてうれしい」。23歳にして球界のエースへと成長した右腕は、あらためて喜びを口にした。
今季最後の黒星は5月19日。怒涛の15連勝でシーズンを締めくくった右腕が「ベストゲーム」に挙げたのは、今季最終戦となった10月25日の楽天戦(楽天生命パーク)だった。
「絶対に勝たなければいけない試合に勝つことができた。そこは一番うれしかった」
勝ってロッテにプレッシャーを与えたいという大一番で、田中将大と投げ合い完封勝利。まさにエースとしての仕事を果たしたという点では、今季の集大成と言っても過言ではない。
一方で、悔いが残る試合に挙げたのは開幕戦。3月26日の西武戦は、山本にとってはじめて任された開幕の大役だったが、チームの開幕戦の連敗を止めることはできず…。
「来年はリベンジしたいと思っている」と、早くも闘志を燃やしている。
「今以上にやれて当然」
充実のプロ5年目を終えた若きエースにとって、“1年間フルに働いた”ということが最も大きな収穫ではないだろうか。
過去のシーズンは故障などで戦列を離れたこともあり、その反省から管理栄養士にお願いをして食事を作ってもらうなど、練習と並行してケガのリスクを減らす取り組みにも着手。私生活の環境づくりにも気を配り、五輪もあった過酷なシーズンを乗り切った。
調子の波を少なくして、シーズンを通して健康で投げることができれば、こうしたタイトルがついてくるのも当然だったのだろう。
過去の“投手四冠”といえば、江川卓や野茂英雄、上原浩治に斉藤和巳ら、そうそうたる大投手が名を連ねる。
「実感はないが、四冠を獲られた方の名前を見るとすごい方々ばかり。そこに喜びを感じる」
しかし、余韻に浸る暇はなく、すぐにまた大一番がやってくる。
次なる目標は、クライマックスシリーズを勝ち抜いて日本シリーズを制することだ。
負けられない戦いに向けて気を引き締めつつ、今後ついては「今の自分が出来ていることなので、今以上にやれて当然だと思う。より進化できるようにしっかりと練習したい」と力強くコメント。
これからは“今年の自分”を最低限の目標にしながら、さらなる飛躍を目指して戦っていくことを誓った。
取材・文=北野正樹(きたの・まさき)