5月は打率.356と好調も、死球で離脱……
2021年シーズンの巨人は、「借金1」の3位に終わりセ・リーグ3連覇を逃した。その要因は様々だが、野手陣ではテームズの故障離脱、スモークの帰国がまず挙げられるだろう。大砲候補として獲得した新外国人選手が前半戦で不在となっては、迫力不足に陥るのは当然だ。また日本人選手では、FA権を行使しDeNAから巨人に移籍してきた梶谷隆幸の離脱が大きく響いた。
梶谷は開幕からリードオフマンとして起用され、打順を点々としながら調子を上げていった。4月までは打率.280(118-33)とそこそこの数字を残し、5月に入ると一気に好調モードへ。16試合のうち13試合で安打を放ち、打率.356(59-24)と好成績を残した。しかし、左太もも裏の違和感で5月25日に登録を抹消され、6月に一軍復帰するも、7月10日の阪神戦で死球を受けて再び離脱。
その後は復帰に向けて二軍でリハビリを続けていたが、9月に入ってから腰椎椎間板ヘルニアによる腰痛を発症。シーズン中の手術を選択し、クライマックス・シリーズ(CS)を含めてシーズン中の復帰は絶望となった。
原辰徳監督が梶谷獲得時に理想として掲げていた、「1番・梶谷、2番・坂本、3番・丸、4番・岡本」の打順も9試合しか組むことができなかった。全143試合の半分にも満たない61試合の出場では、チームに貢献したとはいい難い。
本拠地最終戦を終えた10月23日に山口オーナーもV逸の要因として、「戦力の補強に失敗したというのが大きな要因。今年に関しては去年から戦力の上積みがまったくできていなかった」と、今季を振り返った。
数々の故障から復帰した実績がある梶谷
DeNA(横浜)時代にも梶谷は故障に見舞われ、期待に応えることができないシーズンが多かった。しかし、数々の故障を乗り越え一軍の戦力として戻ってきているのもまた、梶谷という選手が持つ強さでもある。
2年連続で規定打席に到達し主力となった矢先の2016年は、春季キャンプで左脇腹を痛めたことで開幕に間に合わなかった。そこから5月に一軍へ合流すると、徐々に調子を上げ、7月以降は打率.321(224-72)と打線を牽引。チームを初のCSへと導いている。
2018年は右手尺骨の骨折、さらには右肩のクリーニング手術を受けた影響で41試合の出場にとどまっている。翌2019年も41試合の出場だったが、2020年にはキャリアハイかつ、リーグ2位となる打率.323(433-140)を記録し、完全復活を遂げた。
故障の種類が違うとはいえ、そのたびに復活して戻ってきているのは心強い。また、梶谷と同じく腰椎椎間板ヘルニアの手術を選択し、復帰後も好成績を残している選手が多いのは明るい材料ではないだろうか。近年では、吉田正尚(オリックス)や近藤健介(日本ハム)、そして、川端慎吾(ヤクルト)が手術を経て復活している。
日本シリーズ進出の可能性は残しているものの、来シーズン、巨人がセ界の覇権を奪回するためにも、打線の立て直しは必須となる。外国人選手をはじめとした外部からの補強もあるだろうが、その成否は蓋を開けてみるまでわからない。これまでに何度も蘇ってきた、実績のある梶谷の完全復活が、最大の補強となる可能性は十分にあるだろう。
補強失敗から最大の補強へ──梶谷は来シーズンを見据えリハビリを進めていく。
<今シーズン成績>
・梶谷隆幸(巨人)
61試合 打率.282(227-64) 本4 打点23 盗塁11(盗塁死8)
※数字は2021年シーズン終了時点