◆ 日本シリーズ進出ならず
ロッテがリーグ優勝したオリックスとのクライマックスシリーズ ファイナルステージを3敗1分に終わり、2010年以来の日本シリーズ進出が叶わず、2021年の戦いが終わった。
日本シリーズ進出に向けもう1敗も許されないロッテは12日の第3戦、3回に中村奨吾の犠飛で幸先よく先制。先発・岩下大輝も5回までオリックス打線をわずか1安打に抑える好投を見せた。しかし、6回一死走者なしから福田周平にライト前に弾き返されると、続く宗佑磨に逆転の一発を食らう。引き分けも許されないロッテは7回に代打・佐藤都志也の適時打で同点に追いつくと、8回に中村の一発で勝ち越しに成功する。
1点リードの8回はセットアッパー・佐々木千隼が二死一、二塁のピンチを招くも、杉本裕太郎をスライダーで空振り三振に仕留めた。1点リードの9回は、守護神・益田直也が登板。益田は先頭のT-岡田を2球で追い込んだが、1ボール2ストライクから4球目のシンカーをライト前に運ばれる。続く安達了一にレフト前に安打を許すと、小田裕也に適時二塁打を浴び、ここでロッテの勝ちがなくなり試合が終了となった。
最後は益田が打たれたが、責めることはできない。今季は9回打ち切りで、セーブがつく場面だけでなく、同点の9回にもマウンドにあがり、何度もチームを勝利、引き分けに持ち込む投球を見せてきた。シーズンで67試合に登板し、CSでも3試合に登板と、シーズンとCS合わせて今季は70試合にマリーンズの勝利のために腕を振り続けた。益田で逃げ切るのがマリーンズの形。その益田が打たれて引き分けならば、仕方がない。
◆ エースの存在
2年連続2位でチームとして成長を見せているが、さらに上にいくためにも日本人の“エース”と“和製大砲”の存在が必要不可欠だろう。
日本シリーズ進出を果たしたオリックスは、エース・山本由伸が初戦に完封勝利し、2戦目は4番・杉本の一発で勝利した。短期決戦で、チームを勝利に導く“エース”と勝負所で一振りで仕留める“4番”の重要性を改めて感じた。
一方のロッテは石川歩、美馬学、佐々木朗希、小島和哉、岩下大輝など先発の名前は出てくるが、山本のように投げれば勝ちが計算できる“絶対的なエース”が今季に限っていえば出てこなかった。
ただ、佐々木朗希は東京五輪の中断明け6試合に先発して、9月10日の楽天戦以降の4試合は全てクオリティ・スタート(6回以上3自責点以内)をクリアするなど、東京五輪明けに限ると6試合・37イニングを投げて、イニング数を上回る44奪三振、2勝0敗、防御率1.22。今季シーズン自己最多の10勝をマークした小島も、後半戦に限っていえば3完投(2完封)するなど、5勝1敗、防御率は2.67と安定した投球を見せた。佐々木朗希と小島が来季、シーズン通して後半戦のような働きを見せれば、先発の軸として十分に期待がもてる。昨年9月にトミー・ジョン手術した種市篤暉も、故障前はエースに近い位置までのぼりつめており、順調に復帰することができれば心強い存在となりそうだ。
◆ 出てこい和製大砲
問題は“和製大砲”だろう。レアードがリーグ2位の29本塁打、95打点、マーティンも27本塁打、75打点をマークしているが、日本人のチーム最多本塁打が荻野の10本、打点は中村の67だった。“4番打者”に限らず、“長打の打てる日本人打者”という部分がロッテ打線の長年の課題だ。
長打を打てる日本人選手が全くいないわけではない。今季9本のアーチを描いた山口航輝、左打者ではマーティンに次ぐ8本の本塁打を放った安田尚憲、さらには今季不本意な成績に終わったが、18年と19年にシーズン24本塁打を放った井上晴哉などがいる。今季32本塁打を放った杉本は昨季2本塁打だったことを考えれば来季、なにかのきっかけを掴み井上、山口、安田が30本塁打近く打っても不思議ではない。
チーム盗塁数リーグトップの107を決め、1本の安打で一塁走者が三塁、本塁に生還するといった“足を絡めた攻撃”、さらにはノーヒットで1点を奪うなど、打てないなかでも1点をつかみとり勝利してきた。攻撃の質は年々上がってきている。この先、チームが安定して勝ち続けるためにも、日本人の長距離砲は絶対に必要だ。
この2年はチームの“総合力”で2位となったが、来年は“総合力”にプラス“個”の力を今季以上に高めていきたい。来年の秋こそ悔し涙ではなく、歓喜の涙を流すためにも、選手個々のレベルアップは必須だ。
文=岩下雄太