解説陣も感じた「野球の怖さ」
今季の日本一チームを決する「SMBC日本シリーズ2021」が20日に開幕。
セ・リーグ王者のヤクルトは敵地に乗り込み、9回表終了時点で3-1とリードを奪う展開も、9回裏にまさかの3失点…。逆転サヨナラ負けを喫した。
奥川恭伸と山本由伸の両先発による投げ合いで、5回までスコアレスで進んだこの試合。ヤクルトは6回に中村悠平の適時打で先制に成功する。
その後、好投を続けていた奥川が7回にスティーブン・モヤに一発を浴びてしまうも、直後の8回表に4番・村上宗隆の2ランで勝ち越し、その裏は清水昇が32球を要しながらもピンチを脱出と、着々と初戦勝利に歩みを進めていた。
ところが9回、クローザーのスコット・マクガフが紅林弘太郎に安打を浴びると、つづく代打のアダム・ジョーンズには際どいボールを見切られて四球。無死一・二塁としてしまい、つづく福田周平のバントで三塁封殺を狙ったが、これが送球が逸れてフィルダースチョイスに。無死満塁の大ピンチを迎えた。
宗佑磨との対戦も1ボール・2ストライクと追い込みながら、決めに行ったスプリットを弾き返され、センターに抜けていく適時打。これで二者が還り、3-3と試合が振り出しに戻る。
大歓声の中、打席には吉田正尚。初球の153キロが高めに浮くと、パ・リーグ首位打者はこれを逃さずスイング一閃。ライナーはあっという間にセンターの頭上を越え、二塁から走者が悠々生還。一死も奪えぬまま、悪夢の逆転サヨナラ負けを喫した。
今季66試合の登板で31セーブを挙げた守護神が、大一番でまさかの大乱調…。高津臣吾監督も「責められない」というコメントを出しているように、この展開は“誤算”としか言いようがない。
20日に放送されたCSフジテレビONE『プロ野球ニュース』に出演した解説陣は、「まさか」の9回を場面ごとに振り返った。
まずはピンチを広げてしまった無死一・二塁のバント処理について、解説者の平松政次氏は「マクガフも守備はものすごく上手い選手なんですよ」と語り、自信があったからこそのミスだったと強調。「(タイミングは)際どかったんだけど、三塁手の村上がボールを落としていましたからね」と、ギリギリのチャレンジだったと語った。
それ以上に平松氏は、この日のマクガフについて「きょうは腕が全然振れていなかった」とコメント。宗の適時打のシーンでも、「(スプリットが)これだけ落ちていても、かんたんに芯で捕らえられてしまう。状態の悪さを感じました」とし、コンディション面を不安視した。
「冷静にならないと…」
無死満塁の状況から、一人目の打者が適時打を放って同点。こうなればオリックスのホーム・京セラドーム大阪は押せ押せムード。歓声も止み切る前に投じた1球目の153キロを、吉田正尚に弾き返された。
サヨナラのシーンについて、解説者の野村弘樹氏は「スワローズ側も、もう一度冷静にならないといけない場面だったと思う。まだ同点だったのでね」と指摘。
「何かこう…球場の雰囲気のままにマクガフも投げに行ってしまった。初球を見逃さなかった吉田のスゴさもそうですけど」と、打った打者も讃えつつ、「スワローズとしては痛かった」と振り返る。
この場面については平松氏も、「あの場面はベンチからピッチングコーチが行って、少し間を置いてやらないと」と、これまでの経験を踏まえて解説。
つづけて、「ピッチャーはストライクを取りたい、アウトを取りたいもの。そこでど真ん中に投げてしまった。3番打者、一番打てる打者にね」と振り返り、「たとえば、田口(麗斗)に代えても良かったと思う」と、この日のマクガフの状態を鑑みれば、左の吉田に左投手を当てていく作戦も一考の余地があったとコメント。いずれにしても、ひと呼吸置いてから難敵に挑む必要があったと語った。
☆協力:フジテレビONE『プロ野球ニュース2021』