日本体育大・矢沢宏太 [写真提供=プロアマ野球研究所]

◆ 2022年のドラフト最注目候補?

 プロ野球の2021年シーズンも、日本シリーズの戦いを残すのみ。

 パ・リーグ代表のオリックスとセ・リーグ代表のヤクルトを除く10球団は来季の準備期間に入っており、10月のドラフト会議で指名された新人選手たちが契約を結んだというニュースも日に日に増えてきた。

 そんな中、すでに来年のドラフト戦線は動き始めている。

 特に来秋の主役候補として注目が集まっているのが、大学球界で“二刀流”に挑戦している日本体育大の矢沢宏太だ。

 つい先日、満票でのリーグMVP受賞が大きな話題となった大谷翔平に続く「Two-way star」の誕生となるのか。その実力に迫ってみたい。

▼ 矢沢宏太(日本体育大)
・投手兼外野手
・173センチ/70キロ
・左投左打
・藤嶺藤沢高

<主な球種と球速帯>
ストレート:142~150キロ
カーブ:115~118キロ
スライダー:125~127キロ
カットボール:134~136キロ
ツーシーム:133~135キロ

<クイックモーションでの投球タイム>
1.22秒

<各塁へのベスト到達タイム>
一塁到達:3.80秒
三塁到達:11.40秒

◆ 投手でも外野手でも好成績

 東京六大学野球と関西学生野球、そして全国大会の明治神宮大会を除いて、指名打者制が導入されている大学野球。

 そんな中、投手と野手の両面で高い注目を集めているのが日体大3年の矢沢宏太だ。

 高校時代から神奈川県内では評判のサウスポーで、3年時にはプロ志望届も提出したが、173センチという上背の無さと制球力の低さから指名は見送られ、大学に進学した。

 日本体育大進学後も、基本的には投手として練習に取り組んでいたが、打力が買われて1年春から野手としてリーグ戦に出場。1年秋には2本塁打を放つと、2年秋には打率.368という高打率を残し、外野手のベストナインに輝いた。

 今年の春から本格的に二刀流に取り組みはじめると、いきなり投手として3勝2敗、防御率0.90という見事な成績をマーク。

 秋にはさらに投手として成長した姿を披露してみせ、勝ち星こそ春と同じ3勝だったものの、その全てが完封勝利というまさにチームのエースとして相応しいピッチングを見せた。

◆ 最速150キロも計測!

 現地で取材した秋の開幕戦・対帝京大戦でも、2安打・11奪三振という圧巻のピッチング。

 最速150キロを叩き出したストレートに、鋭く変化するスライダーなどを織り交ぜ、相手打線をまったく寄せ付けなかった。

 投手としての魅力は、まずその完成度の高いフォームにある。

 上背のない投手が速いボールを投げようとすると、どうしても反動をつける動きが大きくなって、フォームの無駄も多くなりがちだが、矢沢に関してはそういったことが全くないのだ。

 軸足にしっかりと体重を乗せてからスムーズに直線的に体重移動することができており、躍動感も申し分ない。

 年々下半身も大きくなっており、右足の着地が安定したことで、スピードと制球力が順調にアップしているように見える。

 ストレートもコンスタントに145キロを超え、サウスポーらしいボールの角度があるのも魅力だ。

 変化球で特に素晴らしいのが、スライダーとカットボールだ。

 どちらも腕の振り、ボールの軌道ともストレートと変わらず、手元で鋭く変化するため、打者は対応することが難しい。

 この秋のピッチングを見た限り、投手としての完成度という意味では、同じ年齢のサウスポーで、今年巨人から2位指名を受けた山田龍聖(JR東日本)と比べても上回っている印象を受けた。

◆ 「二刀流論争」が再び…?

 投手としての評価だけでも、来年の上位候補となることは間違いない。

 しかし、冒頭でも“二刀流”として紹介した通り、矢沢は野手としても高い能力を誇っている。

 今年は春・秋ともに少し打率を落としたが、春のリーグ戦では2本塁打を放つなど、長打力を見せている。

 タイミングのとり方がゆったりとしており、全身を使ったフルスイングの迫力は大学球界でもトップクラスだ。

 また、2年秋に参加した大学日本代表候補合宿では、50メートル走でも並木秀尊(獨協大→ヤクルト)と五十幡亮汰(佐野日大→日本ハム)に次ぐ全体で3番目のタイムを計測。その脚力もプロで上位に入るだけのものがある。

 春のリーグ戦では7回まで投手として出場し、8回からはライトに回るという試合もあったが、外野から物凄い返球を見せて強肩ぶりもアピールしていた。

 今年だけの成績を見れば、投手としての評価が高くなりそうだが、野手としての能力も捨てがたいものがあり、プロの各球団も両面の可能性を見ていくことになるだろう。

 大谷翔平(エンゼルス)とは選手としてのタイプが異なるものの、プロで二刀流に挑戦すると言っても、簡単に否定できないだけの能力を備えていることは間違いない。

 来年の今頃は「二刀流論争」が再び巻き起こることも十分に考えられるだろう。

☆記事提供:プロアマ野球研究所




BASEBALL KINGの配信番組にも出演している西尾典文を主任研究員とし、ドラフト情報を中心にプロ野球、アマチュア野球に関する記事を配信する野球専門ニュースサイト。ドラフト候補に関する各種データも充実している。

◆ 【特集】
今から知っておくべき!ドラフト会議“2022“注目選手



この記事を書いたのは

西尾典文

西尾典文 の記事をもっと見る

もっと読む