後半は安定した投球を披露
「自分が思ったよりは、いい感じで投げられたかなと思います」。
ロッテの育成・佐藤奨真が、プロ1年目をこのように総括した。具体的に“いい感じで投げられた”理由について「前半はあんまりプロのバッターに対応ができなかったんですけど、後半は相手バッターを分析しながら、自分の思い通りにいいボールが投げられたかなと思います」と説明した。
4月13日のDeNA戦で5回3失点でプロ初勝利、続く4月23日の西武戦で6回1失点に抑え2勝目を挙げたが、5月以降は5月15日の巨人戦で2回7失点でノックアウトされるなど、5月は月間防御率12.86、6月も月間防御率5.23と苦しんだ。
「調子が悪いときにいかに相手のペースにのまれないようにするかが大事かなと考えたときに、その日の一番調子の良い変化球を見つけて、その球を軸にしてやっていこうという考えになってからは、大崩れすることはあまりなくなったと思います」。
7月11日のDeNA戦でプロ初完封勝利を挙げると、この登板から先発した試合は全て5イニング以上投げ、8月27日の西武戦では2度目の完封勝利。「1回目の完封(119球)は球数が多くなったんですけど、2回目はテンポよく100球ちょっと(105球)で終われたので、一番自分のピッチングができたと思います」。
8月19日の巨人戦以降は「自分の中で評価している」と、基本的に中6日の登板間隔で先発し、最終的には17試合・87回1/3を投げて、7勝5敗、防御率3.50という成績で終えた。特に完封勝利を挙げた7月以降は10試合・58回を投げて、5勝2敗、防御率2.17と抜群の安定感を誇った。
▼ 佐藤奨真の成績
6月まで: 7試 2勝3敗 29回1/3 防6.14
7月以降:10試 5勝2敗 58回 防2.17
来季の課題とは?
良い形でシーズンを終えた佐藤は、「課題ははっきり出ているので、そこに向けて取り組んでいる状況です」と来季に向けて動き出している。
その課題というのが、ストレートの強さとチェンジアップだ。ストレートは「スピードではなく、ベース盤の強さを大事にやっています」とのこと。
小野晋吾二軍投手コーチからもストレートの強さと、チェンジアップについてアドバイスを受けており、佐藤本人も「自分のなかでも、コーチのなかでも一致していたところ。そこが大事だと思います」と、意見が一致したことで、明確な目的意識を持って課題克服に励んでいる。
話が前後してしまうが佐藤は、シーズンが開幕してからしばらくは一塁側プレートを踏んで投げていたが、4月23日の西武戦から三塁側プレートを踏んで投げるようになった。“三塁側プレート”に変更したことが、実はチェンジアップに大きく関係している。
「チェンジアップをしっかり投げるようになってから、三塁側に踏んだ方がいい変化になるなというのを思って、そこから今年はずっと三塁側を踏んでいました」。
しっかりと抑えられた試合は、チェンジアップを投げきれることが多かったという。
「特に完封した試合は、チェンジアップがうまくはまっていたときだったりするので、落ちる球は有効だなという思いで来年のテーマとしてやっています」。
チェンジアップに力を入れる理由は、“右打者対策”のためなのだろうかーー。
「そうですね、自分の場合はすぐにカウントを追い込めるけど、粘られて3ボール2ストライクとか、そこで3球で終われるようにするにはチェンジアップが必要だなと思っています」。
そうなると、左打者に佐藤が大学時代から自信を持っているカットボール、右打者にチェンジアップが勝負球となるような配球をイメージしているのかーー
本人は「理想はどっち(左打者、右打者)もチェンジアップを使っていこうというイメージですね」と明かす。ちなみにシーズン中は左打者にチェンジアップを「投げられてはいないですし、安定はしていないですね」とのことだった。
現在育成選手である佐藤。支配下選手になるためにも「チェンジアップ、まっすぐの強さがあればいいかなと思います」と話すように、この2つの精度向上がカギを握る。
「2月1日から(ストレート、チェンジアップ関係なく)しっかり相手バッターに投げられるようにと言われているので、そこの準備を12月、1月とやっていきたいと思います」。シーズン後半のファームでの投球を見ると、課題を克服できれば、チームは左投手が不足しており、かなり面白い存在になりそうだ。
取材・文=岩下雄太