4月下旬に手術
「はじめのスタートの時点で怪我をしてしまって、そこから試合に出られないというのが続いた。ただこの1年を通して、体が大きくなったと実感できている」。
「シーズン中はメンタルのことで悩んだりしたんですけど、最終的に少しでも試合に出られたので、高校のときとは違う体の強さが感じられた。そこは良かったかなと思います」。
ロッテの育成・谷川唯人は、4月下旬に「鏡視下腰椎椎間板ヘルニア摘出術」を受けたこともあり、プロ1年目は二軍戦の出場は4試合にとどまったが、この1年を通して体が大きくなったことに、手応えを感じたようだ。
2月の春季キャンプ中に腰を痛め、「焦りは常にありました」と、周りの選手がグラウンドでプレーしているなか、その後は別メニュー調整で様子を見ていた。4月末に手術したが、手術を受けるべきか、受けずに回復を待つべきか、当時まだ18歳の谷川は悩んでいた。悩む18歳に声をかけたのが、同期入団で年上の河村説人だった。
「最終的には同期入団で先輩の河村さんに話をして、“10代なので手術をするなら早めにやったほうがいい”、“ここからいざ支配下にあがる目前で再発したときにはダメだろう”という話をされてヘルニアの手術を決断しました」。
ヘルニアの手術をした谷川は、「やることが限られているというか、本当に何にもできない状態だったので、まずは普通に歩けないということがあった」と、そのリハビリはかなり苦しいものだったという。
「もともと自分は体が硬くて、そういう面でも下半身の筋肉を柔らかくするのと、体の柔軟性を主にやっていました」。自身の体で弱い部分をリハビリの期間で強化した。
ロッテ浦和球場で二軍の公式戦が行われるときはネット裏でチャートをつけ、「自分が試合に出た時の想定はある程度できていましたね」と、投手陣の特徴などを勉強。
長いリハビリを経て9月23日のDeNAとの二軍戦で公式戦初出場を果たすと、10月3日の楽天戦で「その前からもブルペンは何回か入らせてもらっていた。普通に捕れていたが、試合に出たら出たで緊張感、ランナーが出てからの緊張感というのはすごくあった。力が入ったりして、最初は思ったようにはいかなかったです」と、二軍戦で初めて守備についた。
捕手としての出場機会を増やす
10月中に行われたフェニックス・リーグでは、捕手としての出場機会を増やした。10月11日の広島戦、0-7の5回無死一塁の場面で、南昌輝が3ボール2ストライクからフォークで矢野雅哉を空振り三振に仕留めると、谷川はスタートを切っていた一塁走者の木下元秀を二塁で刺した。
ノーバウンドで、かなり早い送球で刺したように見えたが、本人によると「カメラ的にノーバウンドだったんですけど、実際はワンバウンドだった」と話しながらも、「自分の送球というのを担当コーチと一緒に会話しながら、だいぶ理想に近い送球ができていた。形的には悪くなったかなと思います」と振り返った。
谷川は昨年の新入団選手発表会や2月に行ったオンライン取材でも、“肩”が持ち味と話していたが、まだまだ課題もある。「ランナーが一塁でショートバウンドを毎回準備をしないといけない。そうなった時に、自分の送球というのができなくなってというのが現状。そこをもっとブロッキングに力を入れていこうと思っています」。
それでも、フェニックス・リーグ終了後の11月5日に行われた巨人との二軍練習試合で本人が納得のいく送球ができた。3-4の6回二死走者なしから中村稔弥が湯浅大に内野安打で出塁を許したが、続く岡本大翔の初球、スタートを切った一塁走者の盗塁を谷川が刺した。
「最後のジャイアンツ戦で1個自分のなかで一番良いボールがいったんです。刺したというのはひとつ自信になりました」。
年下の捕手が2人加入
良い形で今季最後の実戦を終え、シーズンオフに突入。ただ、来季に向けた戦いが始まっている。10月に行われたドラフト会議ではドラフト1位・松川虎生(市立和歌山高)、育成ドラフト4位・村山亮介(幕張総合高)と年下の捕手が2人加入し、ライバルが増えた。谷川は「ただ負けないということだけです」とキッパリ。
自主トレでは「体の柔軟性とウエイト、バランスよく体を大きくしていくというのがひとつ課題にしようかなと思っています」と話す。その理由について谷川は「試合を見ていても、佐藤都志也さんとかはバランスが良い。体がとても強いので、体を強く、怪我をしない体を作りたいです」と説明した。
「キャンプから遅れを取ることがないようにこのオフシーズンで、万全の状態にして、キャンプが終わってシーズン入る時からしっかりアピールできるように。数多く一軍に呼ばれるようにやっていきたいと思います」。春季キャンプ初日にあたる2月1日に最高のスタートを切るために、このオフはしっかりと鍛えていく。
取材・文=岩下雄太