今年は育成として4人が入団
ロッテは今年のドラフト会議で育成選手を4人指名した。本指名された選手たちに比べると、現時点では注目度が低い。それはドラフト会議までの評価だ。入団したときは確かに育成選手かもしれないが、ここからチームに欠かせない選手になる可能性を全員が秘めている。
ロッテでいえば、岡田幸文(現楽天コーチ)が広い守備範囲を武器に2年連続ゴールデングラブ賞を受賞し、西野勇士も3年連続で20セーブ以上をマークした。近年でいえば、和田康士朗がそのひとりに当てはまる。
和田は3年目に支配下選手となったが、育成選手時代、ファームでは盗塁の際のスタート、構えをよくするために成功と失敗を繰り返した。支配下選手になるために必要なことについて当時、和田は「守備、走塁をしっかりしないと支配下になれないと思う。バッティングよりは守備、走塁を100%、ミスなしでできること。100%目指してやっていきたい」(19年3月2日取材)、「一番は盗塁の成功率を上げなくちゃいけない。体重ももちろんそうですけど、一番は盗塁の技術をあげていきたい」(19年10月2日取材)と、自身の武器を磨き続けた。もちろん、打撃も打ちにいくときに猫背になってしまう癖を福浦コーチから指摘され、打席内で猫背にならないように意識した。
3年目を迎えた20年1月の自主トレでは「足が鍵になると思うので、バッティングよりは足のトレーニングを増やしたりしています」と黙々と走塁練習を繰り返し、同年の練習試合、オープン戦で結果を残して開幕前の6月に支配下選手登録。
同年チームトップの23盗塁を決め、今季は24盗塁で盗塁王に輝いた。レギュラーをつかみ取れていないが、自身の武器である“足”を1年目から磨き、現在はチームに欠かせない存在となっている。
育成選手たちの武器は?
支配下選手登録されるためにどんな技術を磨き、どういった選手になっていきたいのかをイメージし、一軍という舞台でどうチームに貢献できるか考えてプレーしていくことが重要だ。特に和田が育成選手から支配下選手になる過程を取材してきて、それを強く感じた。
そこで、10日にZOZOマリンスタジアムで行われた新入団会見で、育成で入団した4選手に「支配下選手になるためにどんな技術を磨き、どういうアピールをしていきたいのか」という質問をぶつけた。
▼ 田中楓基投手(育成1位・旭川実業高)
「育成選手として指名されたということは必ず理由がある。自分のなかでしっかり自己分析して、そのなかでも特にストレートが武器なので、そこを磨いてアピールしてやっていきたいと思います」
▼ 速水将大内野手(育成2位・BC富山)
「長所の走力と守備力を磨いて、7回、8回の代走・守備固めで出られるような選手になりたいと思います」
▼ 永島田輝斗投手(育成3位・立花学園高)
「ピッチャー経験がとても少ないので体づくり、トレーニングから学んでいき、最終的には自分のまっすぐが、アピールできるように頑張っていきたいと思います」
▼ 村山亮介捕手(育成4位・幕張総合高)
「プロ野球のピッチャーの球になれることと、スピードやキレをもっと磨くことだと思っています」
まだ育成選手たちの練習している姿を1度も見たことがないことに加え、個別で取材したことがないので4選手のことを詳しく理解しているわけではない。会見を通して、育成1位・田中が「育成選手として指名されたということは必ず理由がある。自分のなかでしっかり自己分析して…」という部分に、思考力があるのだなと感じた。
また、育成2位・速水の「長所の走力と守備力を磨いて、7回、8回の代走・守備固めで出られるような選手になりたい」と、プロの世界でどう生きていくのかというビジョンが伝わってきた。育成3位の永島田、育成4位の村山も“二軍の試合に出てすぐに支配下”というのではなく、プロの体を作ってからが勝負だと先を見据えているように見えた。
振り返れば、今季まで育成選手だった森遼大朗も、1、2年目は故障が多かったものの、4年間でしっかりとプロで戦う体力と技術を身につけ、高卒4年目の今季はシーズン通してファームの先発ローテーションを守り、イースタン最多の10勝を挙げ、このオフに支配下選手登録を勝ち取った。
ただ忘れてはならないのは、のんびりと過ごしている時間はないということ。毎年のようにライバルが入ってくる。体づくりをするなかで、きっちりと将来の自分を描き、ファームである程度結果を残す必要があるのだ。
育成選手としてプロ入りした4人がプロで活躍するためには、まずは“支配下選手”になる必要がある。育成選手の4人だけでなく、今季ファームで最多セーブに輝いた小沼健太、今季ファームで7勝を挙げた佐藤奨真、フェニックス・リーグで5本のアーチを描いた山本大斗といった他の育成選手たちとの競争にも勝たないといけない。支配下登録に向けた競争に勝ったうえで、今度は一軍に向けた戦いに挑むことになる。その道は非常に険しい。自分の頑張り次第で、未来を変えることができるのも事実だ。その技術で自分の未来を切り拓け。
取材・文=岩下雄太