守備のスペシャリスト・三木亮
絶対にミスが許されない試合終盤に守備固めと出場し、そのプレッシャーをはねのけミスなくベンチに戻ってくる。ロッテにも3年連続で内野の全ポジションを守った三木亮をはじめ、試合終盤の“守備固め”でチームの勝利に貢献した選手が多かった。
なによりも凄いのが、今季守備から途中出場した選手は22人いたが、そのうち失策したのはショートの小川龍成(8月28日の楽天戦)とエチェバリア(10月30日の日本ハム戦)の2人だけ。それも2失策のみ。守備固めに限らず代打や代走から出場しそのまま守備についた選手を含めても、小川龍成、エチェバリア、井上晴哉、菅野剛士の4人だけで、その他の選手たちは無失策だったのだ。
特に素晴らしかったのが“ユーティリティープレーヤー”の三木だ。守備固めで出場したポジションを見ると、一塁で47試合、二塁で2試合、三塁で15試合、遊撃で3試合に出場したが、もちろん無失策。
2019年に行った取材では「本当にいつ出番がくるかわからない状況。いつ出されても後悔のないような準備の仕方をしている」と話し、試合前の練習から「バッティングにしても守備にしても、練習の1球目をしっかり良い形で入れるように意識しています」と語っていた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で取材制限により今季は三木に取材ができなかったため、現在の考え方についてわからない部分はあるが、試合前の練習から“試合”のための準備を重ねてきたことは変わっていないはずだ。
寿司パフォーマンスやベンチでのムードーメーカーとしての貢献度について注目されることが多いが、どのポジションでも安定した守備力を発揮するという部分も、もっと評価されて良いだろう。
藤岡、田村は守備固めからバットでも貢献
藤岡裕大と田村龍弘は守備から出場し、回ってきた打席で結果を残すことが多かった。
藤岡は今季新人時代の18年以来となる規定打席に到達し、田村も捕手としてチーム最多の70試合に出場しており、“守備固め”というくくりで2人の活躍を紹介するのは少し違うのかもしれない。ただ、守備から途中出場したときの打撃は素晴らしかった。
藤岡は4月2日の日本ハム戦、11-0の6回にショートの守備から途中出場すると、7回の1打席目にレフトへの二塁打を放ち、先頭で迎えた9回の2打席目もレフトへ安打とマルチ安打を達成。4月7日のオリックス戦も3-1の7回からショートの守備で出場し、その裏に回ってきた打席でライトへ2ランを放った。
ちなみに藤岡は4月7日のオリックス戦を最後に守備固めからの出場はなく、翌4月8日のオリックス戦で『7番・ショート』でスタメン出場して以降は、ショートやサードでスタメン出場した。守備から回ってきた打席で結果を残し、スタメンに返り咲いた。
一方の田村は加藤匠馬、柿沼友哉など併用も多く、試合終盤での守りから登場することも多かった。守備だけでなく、バットでも7打数4安打、打率.571、2打点と存在感を示した。7回の守備から出場した8月24日の日本ハム戦は、0-3の9回に三塁線を破る適時二塁打。8回の守備から途中出場した8月29日の楽天戦は、0-0の9回に二死一、二塁の場面で、3ボール2ストライクから宋家豪が投じた10球目のチェンジアップをしぶとくレフト前に弾き返す決勝の適時打を放った。
守備から途中出場するということは、ある程度勝ちが計算された場面で出場することが多い。“勝っている場面”でのミスは、勝敗を左右する。そのプレッシャーに勝って、ほとんどミスがなかった選手たちに大きな拍手を送りたい。
▼ 守備から途中出場した選手
田村龍弘 捕:18試 0失
柿沼友哉 捕:18試 0失
江村直也 捕:16試 0失
加藤匠馬 捕:11試 0失
佐藤都志也 捕:9試 0失
宗接唯人 捕:3試 0失
吉田裕太 捕:1試 0失
三木 亮 一:47試 0失 二:2試 0失 三:15試 0失 遊:3試 失0
高濱卓也 一:10試 0失
井上晴哉 一:5試 0失
岡 大海 一:3試 0失 左:6試 0失 中:8試 0失 右:11試 0失
菅野剛士 一:1試 0失 左:2試 0失 右:2試 0失
小川龍成 二:1試 0失 遊:4試 1失
安田尚憲 三:2試 0失
鳥谷 敬 三:1試 0失 遊:1試 0失
エチェバリア 遊:17試 1失
藤岡裕大 遊:6試 0失 3打数3安打 2打点
和田康士朗 左:1試 失0 中:21試 失0 右:9試 失0
加藤翔平 左:1試 0失 中:1試 0失
福田秀平 左:1試 0失
高部瑛斗 左:1試 0失
藤原恭大 中:8試 0失
文=岩下雄太