代走の切り札たち
試合終盤の緊迫した場面に代走で出場し、走るとわかった場面で盗塁を決める。様々なプレッシャーを跳ね返し、今季のロッテの代走での盗塁数は“30”個だった。
その内訳は、盗塁王に輝いた和田康士朗が21盗塁、岡大海が5盗塁、小川龍成が2盗塁、三木亮と高部瑛斗が1盗塁だ。
和田は昨季代走で15盗塁だったが、今季は代走だけで21盗塁を決めた。和田は代走の役割について「代走で出るからには少しでも相手のミスで次の塁を狙えるようにはしています」と話す。
特に素晴らしいのが代走での21盗塁中18盗塁が3球目以内(盗塁を決めたときに打席に立っていた打者)に決めたこと。1球目が8盗塁、2球目と3球目が5盗塁ずつ、4球目が2盗塁、5球目が1盗塁という内訳だ。
和田は早いカウントから仕掛ける理由について、「早いカウントでいかないと、バッターにも迷惑がかかってしまいます。なるべく早いカウントで走るようにしています」と明かした。
半分以上は和田が稼いだ数字ではあるが、岡、小川、高部と走れる選手が控えていたこともあり、シーズン通して“代走”のバリエーションは豊富だった。シーズン序盤は和田、岡のスペシャリストが同時に代走で出場することもあり、5月18日のオリックス戦、6月8日のヤクルト戦は揃って盗塁を決めた。岡も今季代走で決めた盗塁は3球目以内が5盗塁中4盗塁で、初球で成功させたのは2度。
ちなみに今季ロッテ全体で、代走で決めた盗塁数は30だったが、24盗塁が3球目以内に成功させたもの。和田に限らず、早いカウントから積極的に仕掛けるのがロッテの代走の特徴だった。
▼ 代走盗塁成績
和田康士朗 21盗塁
岡 大海 5盗塁
小川 龍成 2盗塁
三木 亮 1盗塁
高部 瑛斗 1盗塁
※途中出場からの盗塁は含まない
盗塁だけじゃない!
盗塁を決めることもそうだが、先を狙う走塁で相手にプレッシャーを与え続けることも代走の役割のひとつだ。
4月7日のオリックス戦では8-2の8回二死一塁から安田尚憲のファーストの頭を超える当たりに、一塁走者の代走・和田が一塁から長駆ホームイン。4月13日の楽天戦では、3-1の8回一死一、二塁から藤岡裕大のセンター前に落ちる安打で、二塁から代走の和田がヘッドスライディングでホームインする好走塁を見せた。
9月12日の楽天戦では8-2の9回無死満塁からエチェバリアの右犠飛で、三塁走者に続き二塁走者の代走・岡が三塁へタッチアップ。一塁走者の三木もライトからの送球が乱れている間に二塁に進んだ。点差が開いていても、相手のミスを突いて、1つでも先の塁を狙い続けた。
和田という“足のスペシャリスト”が代走に控えていたことに加え、岡、小川、高部、藤原恭大といった足の速い選手がいたことで、終盤に躊躇することなく代走を送ることができた。特に9回で打ち切りだった今季は、その強みを生かしたといえるだろう。
文=岩下雄太