ニュース 2021.12.21. 10:00

盗塁王に輝いたロッテ・和田康士朗の夜明け前

無断転載禁止
秋季練習で走塁練習を行うロッテ・和田康士朗[撮影日=2021年11月24日]

盗塁技術を磨いた育成時代


 ロッテの和田康士朗が今季24盗塁で、自身初の盗塁王のタイトルを獲得した。そのうち代走で決めた盗塁は21個で、ほぼ代走で出場し決めたもの。今季立った打席数はわずかに24で、同じく盗塁王の荻野貴司が643打席、西川遥輝が537打席、源田壮亮が516打席ということを考えれば、その凄さがわかる。

 育成出身の和田は、育成時代スタメンで起用され盗塁機会が多かったかと言われれば、そういうわけではない。当時二軍にも藤原恭大、山口航輝といった同世代の外野手をはじめ、一軍再昇格を目指す中堅外野手などが優先的に先発で起用されていた。現在と同じように代走で起用されることが多かった。

▼ 和田の育成時代の出場試合数
(和田の出場試合数/和田のスタメン出場試合数)
18年:94試合/12試合
19年:103試合/33試合

 少ない機会で、和田は“根拠を持って走る”技術を磨いた。2019年3月2日に行われた教育リーグ・巨人との二軍戦で、「キャッチャーがボールを見失っていた。僕の武器は足。そこを見逃さず積極的な走塁。三塁コーチが、ストップと止めていた。僕はそれを無視して突っ込んでいったら、(三塁コーチに)とまらずに良くいったと褒められました」と、ワイルドピッチで二塁から一気にホームイン。

 19年4月29日に行われた日本製鉄鹿島との練習試合では、「ピッチャーのモーションだったり、カウントだったり、色々考えながら走っています」と、代走で途中出場し2盗塁決めた。

 同日の取材で和田は「自分がいいスタートだと思っても、周りからみたら遅いと言われていたので、スタートの構えであったり、色々試しています。走らないと改善点も分からないので、アウトになってもいいからというのはおかしいですけど、トライして色々改善点を見つけていきたいなと思います」と話し、自信を持って盗塁できているかという質問に「まだ、不安もありますね」と答えていた。

 19年7月30日の取材でも、「一番の構えはスタートの構えですね。ちょっと揺れてみたりとか、反応しやすい姿勢を探している。いまいちわからなくて…」と、吐露。

 ただ、19年のオールスター以降は盗塁の失敗数も減り、イースタン・リーグ2位の23盗塁をマーク。本人もシーズン終了後に課題だったスタートについて「前半に比べたら良くなってきている。前半よりも後半の方が失敗は少なかった。盗塁はかなり進歩しているのかなと思います」と手応えを掴みつつあった。

 また、代走という役割についても「シーズン中盤は代走が多かった。代走の役割として、相手の守備陣にプレッシャーを与えないといけない。ひとつでも先の塁を盗むことが代走の役割だと思います」と語っていた。


武器を磨いた2020年の自主トレ


 3年目を迎える2020年の自主トレでは、「今年(2020年)は足がカギになると思うので、バッティングより足のトレーニングを増やしたりしています」と徹底的に自身の武器を磨いた。

 「秋のキャンプで大塚さんや伊志嶺さんに教えてもらったので、構えとか確認してやっていたという感じですね」。

 「スタートが遅いので、少しでも速く正面に向けるようにというか。今はそういう構えの練習です」。

 ロッテ浦和球場で行った自主トレでは、一塁ベースから二塁ベースへダッシュしたり、盗塁のスタートの練習を何度も繰り返してきた。

 春季キャンプは二軍スタートも、20年2月8日の楽天モンキーズとの国際交流試合でライトスタンドへ飛び込む特大の本塁打を放つと、11日の第3クールから一軍に合流し、那覇の一軍遠征の切符も掴み取った。

 代走で出場した20年2月14日の広島との練習試合では、相手が前進守備を敷く中、藤原が放ったセカンドへのゴロで、三塁走者の和田は好スタートを切りホームイン。2月20日の韓国・サムスンとの練習試合でも代走で出場し2盗塁をマークすれば、2月22日の西武との練習試合でも盗塁を決めた。

 ファームでも代走で出場することが多かったが、一軍と二軍では当時「雰囲気もそうですけど、一軍のキャッチャーは全部二塁へドンピシャの送球をしてきます」と一軍の舞台を経験するなかで、その違いを肌で感じた。

 代走で出場し少ない機会でアピールを続けていた和田は20年3月1日の取材で「スタートを一番に練習していたので、その成果が出ているかなと思います。一軍に帯同しているのも足だと思うので、結果を残さないと支配下になれないと思う」と意気込んでいた。その後も、“代走”という役割のなかで結果を残し、同年6月に支配下選手登録となった。


支配下登録


 支配下登録選手になってからも、その武器に磨きがかかり今季は自身初となる盗塁王にも輝いた。今年8月に行った取材では、スタートの構えについて「あれから結構、何回か構えを試していて去年のシーズン中にも構えを変えたりというのをしていましたね」と現在もより良いスタートを切るために、試行錯誤を続けている。

 準備面では、アップはファーム時代と変わらないとのことだが、「相手投手の癖を見るようにしています。癖がなくても良いスタートが切れれば、初球からでもいくようにしています」と、入念に映像を見るようになったという。

 根拠を持って盗塁できるようになったのか訊くと、「相手投手の癖を見るようにしていますし、なければないで、良いスタートが切れれば、初球からでもいくようにしています」と教えてくれた。

 育成選手時代に“スタートが遅い”と言われ、盗塁で悩んでいた男は、“成功”と“失敗”を繰り返しながら自身の技術を磨き、支配下選手となり、一軍で“盗塁王”というタイトルを手にした。

 育成時代に取材していたときはどこか自信がなく弱々しい印象だったが、今年8月に取材したときには、一軍という舞台を経験していくなかで自信を掴み、うまくなるために考え、頭を使いこの1年半過ごしてきたのだなと感じ、その印象はガラリと変わった。

 “一芸”を磨けばタイトルを獲得できると“育成選手”たちに勇気を与えたことは間違いないだろう。“代走のスペシャリスト”としてチームに欠かせない存在となっているが、控えであるということを忘れてはならない。何度も“盗塁王”を獲るためにも、打撃を磨きレギュラーを獲得する必要がある。これに満足することなく、来年はさらに進化した姿を見せて欲しいところだ。

取材・文=岩下雄太
ツイート シェア 送る

もっと読む

  • ALL
  • De
  • 西