新人最多タイの37セーブを挙げ新人王を大差で受賞
新人特別賞を5選手が受賞するなど、大激戦となったセ・リーグの新人王争いを制したのは、やはり栗林良吏(広島)だった。投票では打率.314(487-153)、22本塁打を記録した牧秀悟(DeNA)の76票を大きく上回る201票を獲得し、予想以上の大差となった印象だ。
新人投手としては最多タイとなる37セーブに、防御率は0点台。さらには、セーブ成功率10割と非の打ち所がない成績である。また、新人王の投票結果と直接の関係こそないが、東京オリンピックでも守護神として侍ジャパンの金メダル獲得に貢献しており、まさに充実した1年だったと言えるだろう。
これだけの成績を残すと、気になるのは「2年目のジンクス」というもの。広島では、新人ではないものの2017年に15勝を挙げ優勝の立役者となった薮田和樹が、翌年は振るわず9試合でわずか2勝、防御率5.74と苦しんだことも記憶に新しい。その他にも、2019年に7勝を挙げブレイクした床田寛樹が、翌年は5勝8敗、防御率4.93と結果を残せていない。
過去5年の新人王受賞者を見ても、高山俊(阪神/2016年)や田中和基(楽天/2018年)が苦しみ、東克樹(DeNA/2018年)も故障とはいえ、2年目に成績を残すことができなかった。故障なく複数年連続で結果を残すことの大変さがよくわかる。
しかし、栗林にとっては「吉兆」となりそうなジンクスがある。楽天が新規参入した2005年以降、中継ぎ投手として新人王を受賞した選手に限ってみると、その全員が翌年も結果を残しているというものだ。
過去7人の中継ぎ新人王は、翌年も全員が活躍
2005年以降、中継ぎ投手(中継ぎで30試合以上登板)として新人王を受賞したのは、山口鉄也(巨人/2008年)、攝津正(ソフトバンク/2009年)、榊原諒(日本ハム/2010年)、牧田和久(西武/2011年)、益田直也(ロッテ/2012年)、山﨑康晃(DeNA/2015年)、平良海馬(西武/2020年)の7人で、栗林は8人目となる。
7人の翌年の成績を見ると、山口と攝津は最優秀中継ぎ、益田は最多セーブと3人がタイトルを獲得している。先発に転向した牧田は、規定投球回に到達し13勝9敗、防御率2.43と先発ローテーションを支えた。榊原も60試合の登板で23ホールドをマークし、防御率は1点台。山﨑も33セーブをマークし、球界を代表する選手へと成長した。
昨年の新人王である平良は、今シーズン開幕から39試合連続無失点の偉業を達成し、東京オリンピックの日本代表にも選出されている。2年目のジンクスで低迷するどころか、前年と同等以上の成績を残した。
栗林が所属する広島は、主砲の鈴木誠也がポスティングシステムを用いてのMLB移籍が濃厚となっている。期待できる若手は台頭しているものの、鈴木の穴を補うことはほぼ不可能といっていいだろう。上位浮上を目指すには、やはり投手陣の踏ん張りが必要不可欠となる。
投手陣に目を向けると、今シーズン中に国内FA権を取得した大瀬良大地と九里亜蓮が揃って残留しており、大卒3年目を迎える森下暢仁も健在。先発ローテーションの柱は揃っている。
ドラフトでは、黒原拓未(関学大/1位)、森翔平(三菱重工WEST/2位)、松本竜也(Honda鈴鹿/5位)と3人の大学生・社会人の即戦力候補を獲得。これまでに補強した新外国人選手も投手がふたり、野手がひとりとなっており、投手補強に重きをおいた。
しかしながら、これだけ投手陣を整えても、絶対的守護神であり、すでに佐々岡真司監督から来シーズンの守護神を明言されている栗林がしっかりと成績を残さなければ、戦い方そのものが崩れてしまう。
2年目のジンクスを打ち破り、「中継ぎ投手の新人王は翌年も活躍する」というジンクスが継続されることを期待したいところだ。
<中継ぎでの新人王受賞者と翌年の成績>
※2005年以降
▼ 山口鉄也(巨人)
[08年]67試合 11勝2敗2セーブ23ホールド 防御率2.32
[09年]73試合 9勝1敗4セーブ35ホールド 防御率1.27
※最優秀中継ぎ
▼ 攝津正(ソフトバンク)
[09年]70試合 5勝2敗34ホールド 防御率1.47
[10年]71試合 4勝3敗1セーブ38ホールド 防御率2.30
※最優秀中継ぎ
▼ 榊原諒(日本ハム)
[10年]39試合 10勝1敗16ホールド 防御率2.63
[11年]60試合 1勝3敗23ホールド 防御率1.66
▼ 牧田和久(西武)
[11年]55試合 5勝7敗22セーブ1ホールド 防御率2.61
[12年]27試合 13勝9敗 防御率2.43
▼ 益田直也(ロッテ)
[12年]72試合 2勝2敗1セーブ41ホールド 防御率1.67
[13年]68試合 2勝6敗22セーブ9ホールド 防御率2.76
※最多セーブ
▼ 山﨑康晃(DeNA)
[2015年]58試合 2勝4敗37セーブ7ホールド 防御率1.92
[2016年]59試合 2勝5敗33セーブ7ホールド 防御率3.59
▼ 平良海馬(西武)
[2020年]54試合 1勝0敗1セーブ33ホールド 防御率1.87
[2021年]62試合 3勝4敗20セーブ21ホールド 防御率0.90
▼ 栗林良吏(広島)
[2021年]53試合 0勝1敗37セーブ 防御率0.86
[2022年]――