ニュース 2021.12.27. 10:00

昨季は一軍出場なし…「勝負の年」と話し9本塁打放ったロッテ・山口航輝

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ロッテの山口航輝

昨季は一軍出場なし


 「今年は勝負の年だと思ってやっています。一軍キャンプ参加させてもらうことで、そこでも気合が入りましたし、本当にこの1年が自分のなかで勝負だと思っています」。

 今年2月2日に行ったオンライン取材でロッテの山口航輝は、力強く宣言した。その表情からは今季にかける意気込み、覚悟というものが伝わってきた。

 昨季はファームで全70試合に出場して、チームトップの7本塁打、30打点をマークし、8月25日の巨人との二軍戦からシーズン最終戦となった11月1日の楽天戦にかけて4番で出場するなど、34試合で4番を務めた。

 ファームでみっちりと経験を積んでいたが、昨年10月に新型コロナウイルス感染で離脱した選手の代替選手として、若手選手たちが一軍昇格、一軍練習に参加するなかで、山口は一軍昇格することができなかった。

 「活躍していてすごいなというのは見ていて思いましたし、悔しい思いの方が強かった。あの時期に上がれなかったというのが、今まで野球してきたなかで一番悔しいといっていいくらい悔しかった。試合を見ていても出たいなという気持ちもありましたし、もっと練習して自分のレベルをあげないと、と思いました」。

 11月のフェニックス・リーグから左足をすり足気味に打っていた構えを、野球人生で初めて左足を上げるフォームに挑戦する。

 「自分の中で飛ばしたいというのがありました。そのなかで、長打というのを増やしたいと考えたときに、何か変えてみようと思い、今まで野球を始めた頃からすり足で打っていたのを、足をあげて打ってみようかなと。少し練習してフェニックスに入って、そのなかでいい形で打てました」。

 自主トレでは「オフに入るときに2、3キロ落としてキャンプインしようと決めていた」と、怪我をしないからだを作るために体脂肪を落として筋肉量をあげ、体重を92、3キロにし、キャンプインした。


春季キャンプからアピール


 春季キャンプでは、「バッティングでアピールして、長打力を考えてそこをアピールしようと思ってやっています」と話した一方で、「打つだけではダメだと思いますし、守りもしっかりしないといけないと思うので、どこまで残れるかわからないですけど、しっかり自分の長所をアピールしていれればなと思います」と攻守にアピールすることを誓った。

 2月20日のオリックスとの練習試合で左の濵口遥大から安打、23日のオリックスとの練習試合では左の田嶋大樹から2安打、27日の西武との練習試合では一軍で初めて4番に座った。翌28日の西武との練習試合で、4番で初の適時打を放つと、オープン戦が始まってからも3月11日の楽天戦で対外試合初本塁打、3月17日の日本ハム戦でも第2号ソロと結果を残した。

 昨年11月のフェニックス・リーグから挑戦する一塁の守備でも、2月13日の楽天との練習試合で一、二塁間への当たりをダイビングキャッチすれば、2月18日の楽天との練習試合でも一、二塁間に飛んだ鋭いライナー性の打球を好捕。プロ3年目で初の開幕一軍をつかんだ。


プロ初安打とプロ初本塁打も…


 3月26日のソフトバンク戦、『5番・指名打者』でプロ初スタメン・プロ初出場を果たし、0-3の2回一死で迎えた第1打席、石川柊太のパワーカーブの前に3球三振に倒れるも、第3打席で初球のスライダーをレフト前に弾き返す嬉しいプロ初安打。

 4月9日の西武戦では高橋光成のカットボールをライトスタンドへ放り込むプロ入り第1号2ラン。4月13日の楽天戦でプロ入り後初のマルチ安打を達成し、4月20日の日本ハム戦では4-4の8回に宮西尚生からライトへ勝ち越しの第3号ソロを放った。さらに4月25日のソフトバンク戦では、1学年先輩の安田尚憲とアベック弾。

 持ち前の長打力を一軍の舞台でも発揮していたが、4月終了時点での打率は.164、5月も打率.133と確実性を欠き5月31日に一軍登録抹消された。

 二軍降格後、本人は「あれはたまたまです」と振り返ったが、6月17日の巨人戦で大竹寛から放った本塁打に成長を感じた。4-4の8回二死二塁で迎えた打席、山口は1ボールから大竹の真ん中低めのスライダーに2球空振り。同じコースにきた低めのスライダーを見送りボールを選んだ直後の5球目、同じコースの低めのスライダーをライトへ勝ち越し2ラン。スライダーを2球空振りしたが、その打席内でしっかりと修正して、同じようなコースにきたスライダーを対応したところが素晴らしかった。


シーズン最終盤に巻き返し


 東京五輪期間中に行われたエキシビションマッチで再び一軍でプレー。阪神との3連戦では8打数0安打、7月30日の広島戦では0-2の2回の第1打席、矢崎拓也が投じたスライダーに追いかけるようなスイングで空振り三振に倒れ、エキシビションマッチ序盤は安打が出ないのか、当てにいくようならしくないスイングに見えた。

 それでも、同日の3-2の5回二死一、三塁の第3打席、1ストライクから矢崎が投じた外角高めの147キロのストレートを、山口らしいスイングでライトスタンドに放り込んだ。その後の打席でも安打を放ちこの日は3安打と、本塁打をきっかけに打撃の状態を上げたように見えた。

 「結果が出なかっただけで、変えたことはないですね。(7月30日の広島戦で)ホームランを打った打席は、変化球がきたら三振でいいやと思っていたので、まっすぐを弾き返すと考えて打席に入って、そこで1本出て1本出たことで気持ちが楽になった。思い切って打てるようになったのかなと思います」。

 「エキシビションマッチはエキシビションマッチで、あの1本が自分のスイングができた。(好調が)続けられた要因になったと思いますし、後半戦に入ってからも1試合目で安打が出たり、気持ちの面で楽になった部分もある。そこでバットが振れているのかなと思います」。

 その言葉通り、後半戦が始まってからは、パワフルな打撃を披露した。8月17日の西武戦では、2-7の6回二死一塁から高橋光成が1ボール2ストライクから投じた132キロの低めのスライダーに対し、体勢を崩されながらもレフトフェンス直撃の二塁打は見事だった。

 本人は「練習していることが出せたのかなと思います」と話す。これは新人時代から常に口にしていた“下半身主導”で打つということがつながっているのだろうかーー。

 「そうですね。福浦さん、松中さんに崩されてでもああやって打つのが理想と言われていたので、あの打席は自分のなかでもいい感じに打てたと思います」。

 シーズンが始まってからも、打撃フォームを微調整させた。9月に行ったオンライン取材では「楽に構えられる位置からと思っているので、変わったかなと思います」と話し、ホームベースからやや離れて打席に立つケースが多くなっていたことについて訊いてみると、「少し離れたり、くっついたり色々試している感じです」と打席内で工夫していることを教えてくれた。

 またその時の取材で、「力だけじゃダメだというのもわかりましたし、当てにいくのではなく、振りにいくなかで、コンパクトにというイメージでやっています」と、一軍の投手と対戦したなかで新たに取り組み始めたことについても明かしている。

 マーティンが足を骨折し離脱した後、外野で出場する機会が増え、そこで結果という形で応え、オリックスとのリーグ優勝を争う大事な終盤戦で、再び出場機会を増やしていった。

 10月10日の日本ハム戦で第8号ソロ、10月12日からのオリックスとの首位攻防3連戦では3試合全てで安打を放った。惜しくもチームはリーグ優勝を逃したが、シーズン最終戦となった10月30日の日本ハム戦でプロ入り後初の猛打賞を達成。楽天とのCSファーストステージでは、第1戦で則本昂大からセンター前にCS初安打を放つと、第2戦では第1号ソロ本塁打を含む猛打賞。ファーストステージでは2試合合計6打数4安打、1本塁打、2打点の大暴れ。

 春季キャンプ中に「一軍で活躍できるようにというのを目標として、この3年目はスタートした。そこは変えずに1年間その目標をもって頑張りたい」と意気込んでいた山口。シーズン途中に二軍落ちはあったものの、シーズン最終盤の活躍は、来季に期待をもたせる働きぶりだった。

取材・文=岩下雄太

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