リーグV奢らず日本一へ「新しい歴史を創る方がずっと面白い」
今シーズン限りでの勇退を表明しているオリックスの宮内義彦オーナー(86)が13日、宮崎県・清武運動総合公園で行われている春季キャンプを視察した。
この日は雨天だったこともあり、エース山本由伸を筆頭に山岡泰輔、宮城大弥、平野佳寿、能見篤史らがブルペンにズラリと並び、宮内オーナーは主力投手の投球に熱視線を送っていた。投球後、挨拶をしに来た山本には笑顔で話す場面が見られた。
宮内オーナーは「天気予報を見て日にちを変えようかと思ったんだけど」と生憎の天気に残念な様子。昨年25年ぶりのリーグ優勝をした上でのキャンプ視察となったが、「去年までの話は歴史になったんだよね。歴史になったのは済んだことなんで、新しい歴史をこれから作って欲しいということです。あまり勝った勝ったというのは封印して。歴史を学ぶのもいいけど、新しい歴史を創る方がずっと面白い。最初は当然そっちに向かうべきでね。我々はそう思わないと」と今シーズンの戦いに切り替えていた。
これがオーナーとして最後のキャンプ視察となるが、「ホントのことを言うとね、もうそろそろ次の世代にオーナーは代わらんといかんなと。気がついたら僕が最長老、最も長いので嫌だなぁという感じにもなってたので、3年前からそういうことを思ってた。しかしね、最下位でオーナーが代わったら責任をとってオーナー退陣…これだけは嫌だと(笑)。去年これだと思ってもう1年やるかと。どうしようかと思ったんだけど、30何年やって突然というのも失礼かと思ったから、予告しておこうということで。そんなに感慨という思いはない」と笑顔。回想録を出したいという言葉まで飛び出した。
今年は2年ぶりに有観客でのキャンプ開催となったが、「キャンプに来てくださるお客様はコアなお客様ですよね。これを来てくれるなというのは、スポーツビジネスやってる方から言うとあり得ない話だった。やっとノーマルに少しでも近くなったと。今でも接触したらいかんとかね、ご不便をおかけしてますけど、こういうのも最後にしたいな」と語り、行動制限が解除されたプロ野球の姿を想い描いていた。
ブルペン視察については「(メンバーが)揃い踏みでビックリした。『もう仕上がってます』という選手もいて頼もしい。能見にはビックリしたけど。よく投げてるね。昔は投げろ投げろだったんだよな。今は投げるな投げるなでしょ。彼は古い象徴だね。なかなか面白い。激励をさせてもらったし、キャンプだから無理をするなよという話もしました」と満足気。
この日はオーナーとして最後の「訓示」を選手の前で伝えていたが、来年以降もキャンプには足を運び、チームにアドバイスは送るという。今度は26年ぶりの日本一になり、宮内オーナーを有終の美で送りたい。
取材・文=どら増田