オフは石川と自主トレ
「この4年間で一番、自信をもって取り組めているところが大きい。体的にも精神的にも今年が一番、自信がある年になるかなと思います」。
ロッテ・古谷拓郎はこれまで自身を客観的に分析し、若いのにしっかりしている印象だったが、今回の取材を通して表情、そして言葉から“強さ”というものを感じた。
「今年のオフはフォームの安定といいますか、そこを一番の課題としてあげていたので、そこにフォーカスして取り組みました」。
昨年の後半戦から投球フォームを変更したが、オフはフォームの固定に取り組んだのだろうかーー。
「ベースは変わらないんですけど、そのままではレベルアップができないと思ったので、試行錯誤しながらあの形をベースに“こうしたらよくなるんじゃないか”と、色々試しながら2カ月間取り組みました」。
自主トレは「去年シーズン中に石川さんがケガをされて、僕も悩んでいた時期があった。そこで気にしてくださって、一緒に練習する機会が多かったんですけど、それに伴ってよくなっている実感はあった。実際にゲーム復帰もできたので、それを継続したいと思っていたので自分からお願いしてやりました」と、石川歩と行った。
古谷と石川の関係性でいえば、古谷が新人時代に「石川さんは体の使い方がしなって、パチンと投げられている。キャッチボールをみてお手本になった。そこは生で見られたのはよかったです」とその凄さについて熱く語ってくれたことを今でも覚えている。
話を自主トレに戻すと、“継続”という部分について、「投球フォームだったり、トレーニングに関してもそうなんですけど、練習メニューというか、もっと具体的に聞きたいこともあったのでお願いさせていただきました」とのことだ。
「いい形になっている」
古谷の昨季後半戦の投球をみると、古谷独特の腕のしなり、柔らかさというものが戻っているように見えた。
「去年フォームが崩れて感じたのは、腕の使い方、末端を意識してしまうと崩れてしまうというのが実感した。今は体幹というか、体の大きな部分を意識して、結果的に腕が振れている感覚。客観的にそういう風に見えているのであれば、いい形になっているのかなと思います」。
ストレートも昨年10月12日に行われたフェニックス・リーグの中日戦では、スピードガン以上に伸びているように感じた。
「今はかなり手応えがある感覚。(3月1日の)シート打撃でもまっすぐで空振りが取れた。そこは継続してよくできているところかなと思います」。
変化球に関しても、左打者へのチェンジアップの抜け具合がすごく良い。
「左バッターはまっすぐとチェンジアップが中心になっていくのかなと継続して変わらないかなと思います」。
カーブ、そしてスライダーのような軌道のカーブも投げている。スライダーのような軌道のカーブに関しては「あれはナックルカーブです。カーブの軌道は似ているんですけど、球速に差があって決め球に使えるような感じで今年は使っていきたいなと思います」と教えてくれた。
その一方で、スライダーの割合が減ったように見える。そこについては「単純に今、精度があまりよくないというのがあって、わざわざ使う必要がないという感じです。まっすぐ、カーブである程度カウントが取れるのであれば、甘くなりやすいボールを選択するならば、まっすぐを(選択する)確率が高い。今は少し減らしている感じです」という理由でスライダーを選択肢から外している。
また、プレートの踏む位置は一塁側、三塁側と時期によって変えていたが今は「昨シーズン復帰してからもいろいろ試して、景色が違う。自分の球の質というか、癖というか、しっかりいかせる位置だったり投げやすさが違うと思う。試合ごとに試していた。今は基本真ん中で投げています」。
取り組みに自信
試行錯誤しながらも、ここへ来て自分のやるべきこと、今何が必要かというものが具体的に見えてきた。
「去年復帰したくらいから手応えを感じていましたし、今まではいろんなことに手を出して、どれがあっているのかというのを自分でも疑いながらといいますか、半信半疑でこれやったらよくなるんじゃないかなと思って手を出していた。今は結果というか、安定感も出てきたので方向性は自分のなかで定まってきた感じがある。自信をもって取り組んでいます」。
その言葉、表情からも自信がひしひしと伝わってきた。現在はファームでの調整となっているが、シーズンをどう始めるかではなく、シーズンを終えたときにどういった活躍を見せているかが重要だ。
「ケガなく、シーズンを完走するというのが大きな目標。1試合でも多く一軍で投げて、そのなかで先発ローテーションに割って入れるくらいの力をつけて、一軍の戦力として戦いたいと思います」。
プロ初勝利だけでなく、2勝、3勝とどんどん勝利を積み重ねて、先発ローテーションを自らの手で掴みにいってほしい。
取材・文=岩下雄太