広島の外野争いに熱気…目立ったルーキー・末包のアピール (C) Kyodo News

◆ 逆襲を期す鯉の注目ポイント

 広島には、投打ともに春季キャンプ中に目星を付けておきたいテーマがあった。

 それは「勝ちパターン」と「開幕右翼」の候補をそれぞれ見つけること。まだ競争の途中ではあるものの、春季キャンプを終えて、チームの弱点を埋めようとする選手が徐々に浮かび上がってきた。

 救援陣では、栗林良吏以外に個別調整を認められた投手はおらず、中﨑翔太ら中堅組から新人2人を含む若手まで一斉参加による競争が行われた。

 その中でも、2年目の森浦大輔が仕上がりの早さでアピールした。

 以下は主な救援投手の、2月中に登板した紅白戦と対外試合の通算成績である。

▼ 広島リリーフ陣・2月の実戦成績

・森浦大輔(左投/2年目・23歳)
3試合=3回・1安打・無失点

・中﨑翔太(右投/12年目・29歳)
3試合=3回・3安打・2失点

・塹江敦哉(左投/8年目・25歳)
3試合=3回・3安打・2失点

・栗林良吏(右投/2年目・25歳)
2試合=2回・無安打・無失点

・松本竜也(右投/1年目・22歳)
2試合=2回・1安打・無失点

・島内颯太郞(右投/4年目・25歳)
2試合=2回・2安打・1失点

・黒原拓未(左投/1年目・22歳)
2試合=2回・2安打・2失点

◆ 仕上がりの早さと広がった“投球の幅”

 森浦は2月中に3試合に登板した救援投手の中で、唯一の無失点。被安打は16日のDeNA戦で森敬斗に許した左前打のみで、打者9人に5奪三振と抜群の安定感を見せた。

 ルーキーイヤーの昨春は、ハイペースにならないように抑え気味のスタート。その結果、実戦登板が始まった2月下旬になっても直球が140キロ前後と状態が上がりきらずに裏目に出た。

 昨春の反省を生かし、今オフは1月中からブルペン投球の強度を上げて調整。「新人も入って競争が厳しくなるので、去年みたいな遅いペースでやっていたらアピールできない。今年は最初からしっかりとアピールする」と、狙い通りに調整を早めたことが功を奏した。

 今春の好調の要因は、仕上がりの早さだけではない。昨季と比べると、投球の幅が広がっている。

 走者のいない場面で突然クイック投法を披露するなど、打者を幻惑する場面も目立った。超速クイックに相手が慌ててタイミングを合わせようとしたところに、持ち球の中で最も球速の遅いカーブを投じて打者の体勢を大きく崩すことも一度だけではなかった。

 昨季はチーム最多となる54試合に登板し、シーズン終盤には勝ち継投入りも果たした。接戦の終盤で本領を発揮し切れない試合もあっただけに、昨季の経験を生かして勝負強さをアピールすることができれば、開幕時に「8回の男」を担っている可能性は十分にある。

 さらに春季キャンプでは、元守護神の中﨑翔太や新人ドラフト5位の松本竜也(Honda鈴鹿)が首脳陣の評価を高めた。

 実績組と新戦力の融合により、救援整備の道筋が少しずつ見え始めている。

◆ ルーキーが活性化させた外野の一角争い

 一方の「右翼探し」は、ドラフト6位・末包昇大(大阪ガス)が堂々と名乗りを上げた。

 以下は主な右翼候補が2月中に出場した紅白戦と対外試合の通算成績である。

▼ 広島外野陣・2月の実戦成績

・中村奨成(右打/5年目・22歳)
打率.389(18-7) 本0 点4

・堂林翔太(右打/13年目・30歳)
打率.389(18-7) 本0 点2

・野間峻祥(左打/8年目・29歳)
打率.364(11-4) 本0 点1

・宇草孔基(左打/3年目・24歳)
打率.321(28-9) 本0 点3

・末包昇大(右打/1年目・25歳)
打率.269(26-7) 本1 点3

・中村健人(右打/1年目・24歳)
打率.200(20-4) 本2 点4

◆ 勢いに乗って、いざ勝負の3月へ

 打席数が少なく、打率は参考程度ながら、外野手が次々に結果を残す相乗効果で競争が活発化。その火付け役となったのが新人2人だった。

 最初に存在感を示したのは、ドラフト3位・中村健人(トヨタ自動車)だった。紅白戦と対外試合でチーム1号を放つ好発進。この強烈な印象に負けることなく、末包が長打力で光った。日南キャンプ初日から打撃練習で柵越えを連発して、首脳陣を驚かせた。

 キャンプ序盤の実戦では結果が出なかったものの、「いまは、まだ長打が出る形ではない」と冷静に自己分析して打撃コーチと修正に励んだ。

 そして、2次キャンプ地の沖縄で本領発揮。沖縄では紅白戦を含めて3試合連続マルチ安打を放つなど、計6試合で打率.333(21-7)と活躍。26日の巨人戦では左翼越えの特大弾を放った。

 この“プロ1号”に成長の跡が見えた。

 日南キャンプでは、内角を捉えた会心の当たりが左翼ファウルゾーンに飛ぶ場面が目立った。強く振ろうとする力みが、左肩の開きを早くしていたのだ。

 巨人戦での一発は、戸田の1ストライクからの内角144キロ直球に強引になることなく反応し、高く上がった打球は左翼ポール方向ではなく、左翼後方の防球ネットに向かって一直線に伸びた。

 本人も「いい形でバットを出せたので、きれいに真っすぐ打球が飛んだ」と納得。キャンプでの成果が詰まった一発だった。

 末包は2月中の実戦全試合に4番で起用されたように、首脳陣の期待も大きい。

 現在は一塁と外野との併用が続くものの、一塁を守れる坂倉将吾らが一軍に戻ってくれば、外野での出場機会はさらに増えるだろう。開幕右翼の可能性は十分にある。

 ただし、春季キャンプ中にコンディションの整わなかった野間峻祥や中村奨成のアピール次第で、外野の構想は大きく変わっていく可能性も残されている。開幕スタメンへの道のりは長く険しい。

 春季キャンプで首脳陣に好印象を与えた選手がいたのは事実。

 そのリードが一時の好調によるものだったのか、本来の実力だったのか──。

 3月の実戦で見極められることになる。

文=河合洋介(スポーツニッポン・カープ担当)

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