話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、プロ野球で注目の2人の新人キャッチャー、ロッテ・松川虎生(まつかわ・こう)選手と、楽天・安田悠馬(やすだ・ゆうま)選手にまつわるエピソードを紹介する。
3月25日の開幕戦が近づいて来たプロ野球。「開幕スタメンは誰だ?」という予想が賑わいを見せるなか、にわかに注目されているのが、パ・リーグの「ルーキー捕手」です。プロ野球の長い歴史において、2リーグ制以降は11人しかいない“新人開幕マスク”を実現するルーキー捕手が、今季(2022年)は何と2人も生まれそうだからです。
まずは、ロッテのドラフト1位高卒ルーキー・松川虎生です。まだ18歳、3月1日に市立和歌山高校を卒業したばかりにもかかわらず、開幕投手が内定しているエース・石川歩とオープン戦で2度もバッテリーを組み、堂々のリードを見せました。初めて組んだ8日の日本ハム戦のあと、石川は「捕手・松川」についてこう語っています。
16日の広島戦でもソツのないリードを見せ、石川に「問題なくやれている」と言わせた松川。ロッテ・井口資仁監督も試合後、松川の「開幕スタメンマスク」を明言しました。
高卒のルーキー捕手が、プロ1年目の開幕戦でいきなりスタメンデビューしたのは、2リーグ制以降たった2例しかありません。1955年の大映・谷本稔と、2006年の西武・炭谷銀仁朗(現・楽天)です。ついこの前まで高校生だった選手が、キャリアのある先輩捕手たちを押しのけて開幕投手をリードするわけですから、通常なら「あり得ないこと」です。過去2人しかいない事実から見ても、どれだけすごい快挙かおわかりいただけるでしょう。
松川のキャッチャーとしての資質でまず注目されているのは、石川も認める「キャッチング」です。キャンプでは佐々木朗希のブルペンキャッチャーを務め、160キロ近いストレートも、高速で曲がるフォークやスライダーも難なくミットに収める様子から、「18歳じゃなく、18年目じゃないの?」といった声がSNSでも飛び交ったほど。
さらにもう1つ付け加えるなら、捕手難のチームならともかく、ロッテには経験豊富な田村龍弘、強肩の加藤匠馬、打撃が売りの佐藤都志也と、実力のある捕手が揃っています。ハイレベルな正捕手争いのなか、高卒ルーキーの松川がどれだけスタメンマスクをかぶれるのか、興味は尽きません。
そしてパ・リーグにはもう1人、開幕スタメンマスクを狙う楽しみなルーキーがいます。楽天のドラフト2位・安田悠馬です。こちらは愛知大学出身の大卒新人で、身長185cm、体重105kgの恵まれた体格から生み出す並外れたパワーを武器に、日増しに存在感を高めています。
3月8日、ヤクルトとのオープン戦で、ライトスタンド上段まで届く特大3ランを放ってみせた安田。驚愕の一発とともに話題になったのが、ダイヤモンドを一周してベンチに帰還した際に披露した、ゴリラが胸を叩くドラミング・パフォーマンスです。このゴリラポーズは、スポーツ紙の1面を飾ったほどです。
楽天には「新人スタメンマスク」の先輩で、今年17年目のベテラン・炭谷銀仁朗や大卒4年目の太田光ら、こちらも実力者が控えていますが、安田には彼らにない「長打力」という魅力があります。いまは「打てるキャッチャー」が主流になって来ているので、時流に合った捕手と言えます。
パを大いに盛り上げてくれそうな、松川と安田。実は2人には共通点があります。高校時代から「規格外の強打者」をイメージしたニックネームを付けられていた点です。
市立和歌山高校時代、通算43本塁打を記録した松川は、故・水島新司さんの野球マンガ『ドカベン』にちなんで「紀州のドカベン」の異名をとりました。また安田は、須磨翔風高校時代、松井秀喜さんに顔も似ていることから、高校のチームカラーにちなんで「須磨の青ゴジラ」と呼ばれていました。もっとも、先述のドラミング・パフォーマンスで、楽天では「東北のゴジラ」ならぬ「東北のゴリラ」と呼ばれるかも知れません。
そして松川と安田には、もう1つ共通点があります、どちらも巨人軍の4番打者に憧れを抱いている点です。松川の憧れは現・巨人の4番・岡本和真で、昨年(2021年)12月のロッテ入団時には、こんな記事も出ました。
一方、左打者の安田は、同じ巨人の4番でも「左の強打者」に憧れて来ました。
既にオープン戦でホームランを記録した安田に対して、松川はバッティング面で能力を発揮するのはこれからですが、「強打の捕手」としての存在感を高められれば、これも正捕手争いの上で大きな武器になるはずです。
昨季、パ・リーグで規定打席に到達した捕手は、西武・森友哉とソフトバンク・甲斐拓也の2人だけでした。ロッテと楽天では、昨季、正捕手を争った選手たちも軒並み打率は低く、ルーキー捕手がバッティングでもその持ち味を存分に発揮することになれば、パ・リーグの勢力図にも大きな影響を与えるかも知れません。開幕スタメンマスクだけでなく、2人が今季、パをどれだけ盛り上げてくれるのかにも注目です。
3月25日の開幕戦が近づいて来たプロ野球。「開幕スタメンは誰だ?」という予想が賑わいを見せるなか、にわかに注目されているのが、パ・リーグの「ルーキー捕手」です。プロ野球の長い歴史において、2リーグ制以降は11人しかいない“新人開幕マスク”を実現するルーキー捕手が、今季(2022年)は何と2人も生まれそうだからです。
まずは、ロッテのドラフト1位高卒ルーキー・松川虎生です。まだ18歳、3月1日に市立和歌山高校を卒業したばかりにもかかわらず、開幕投手が内定しているエース・石川歩とオープン戦で2度もバッテリーを組み、堂々のリードを見せました。初めて組んだ8日の日本ハム戦のあと、石川は「捕手・松川」についてこう語っています。
『配球は初めてだったけど問題なくいい感じだった。キャッチングがいいのでけっこう投げやすかったのはあります』
~『スポーツ報知』2022年3月9日配信記事 より
16日の広島戦でもソツのないリードを見せ、石川に「問題なくやれている」と言わせた松川。ロッテ・井口資仁監督も試合後、松川の「開幕スタメンマスク」を明言しました。
『しっかりと組めてると思いますし、次回はもう開幕ですから、そのバッテリーでいくんじゃないですかね』
~『日刊スポーツ』2022年3月17日配信記事 より
高卒のルーキー捕手が、プロ1年目の開幕戦でいきなりスタメンデビューしたのは、2リーグ制以降たった2例しかありません。1955年の大映・谷本稔と、2006年の西武・炭谷銀仁朗(現・楽天)です。ついこの前まで高校生だった選手が、キャリアのある先輩捕手たちを押しのけて開幕投手をリードするわけですから、通常なら「あり得ないこと」です。過去2人しかいない事実から見ても、どれだけすごい快挙かおわかりいただけるでしょう。
松川のキャッチャーとしての資質でまず注目されているのは、石川も認める「キャッチング」です。キャンプでは佐々木朗希のブルペンキャッチャーを務め、160キロ近いストレートも、高速で曲がるフォークやスライダーも難なくミットに収める様子から、「18歳じゃなく、18年目じゃないの?」といった声がSNSでも飛び交ったほど。
さらにもう1つ付け加えるなら、捕手難のチームならともかく、ロッテには経験豊富な田村龍弘、強肩の加藤匠馬、打撃が売りの佐藤都志也と、実力のある捕手が揃っています。ハイレベルな正捕手争いのなか、高卒ルーキーの松川がどれだけスタメンマスクをかぶれるのか、興味は尽きません。
そしてパ・リーグにはもう1人、開幕スタメンマスクを狙う楽しみなルーキーがいます。楽天のドラフト2位・安田悠馬です。こちらは愛知大学出身の大卒新人で、身長185cm、体重105kgの恵まれた体格から生み出す並外れたパワーを武器に、日増しに存在感を高めています。
3月8日、ヤクルトとのオープン戦で、ライトスタンド上段まで届く特大3ランを放ってみせた安田。驚愕の一発とともに話題になったのが、ダイヤモンドを一周してベンチに帰還した際に披露した、ゴリラが胸を叩くドラミング・パフォーマンスです。このゴリラポーズは、スポーツ紙の1面を飾ったほどです。
楽天には「新人スタメンマスク」の先輩で、今年17年目のベテラン・炭谷銀仁朗や大卒4年目の太田光ら、こちらも実力者が控えていますが、安田には彼らにない「長打力」という魅力があります。いまは「打てるキャッチャー」が主流になって来ているので、時流に合った捕手と言えます。
パを大いに盛り上げてくれそうな、松川と安田。実は2人には共通点があります。高校時代から「規格外の強打者」をイメージしたニックネームを付けられていた点です。
市立和歌山高校時代、通算43本塁打を記録した松川は、故・水島新司さんの野球マンガ『ドカベン』にちなんで「紀州のドカベン」の異名をとりました。また安田は、須磨翔風高校時代、松井秀喜さんに顔も似ていることから、高校のチームカラーにちなんで「須磨の青ゴジラ」と呼ばれていました。もっとも、先述のドラミング・パフォーマンスで、楽天では「東北のゴジラ」ならぬ「東北のゴリラ」と呼ばれるかも知れません。
そして松川と安田には、もう1つ共通点があります、どちらも巨人軍の4番打者に憧れを抱いている点です。松川の憧れは現・巨人の4番・岡本和真で、昨年(2021年)12月のロッテ入団時には、こんな記事も出ました。
『球界を代表する4番・岡本和からは右打ちを学んだ。高校通算43本塁打を誇るドラ1は「ユーチューブでは岡本和真さんだったり、そういうのはすごく見ている。ライトに本塁打を打っていたので」とその長打力に加えバットコントロールにも着目。「僕は本塁打打者だと思われると思うが、首位打者というのはちょっと狙っている」と率も残せる“打てる捕手”を目指す』
~『スポーツ報知』2021年12月14日配信記事 より
一方、左打者の安田は、同じ巨人の4番でも「左の強打者」に憧れて来ました。
『幼少期から「4番」に強い憧れを抱いてきた。「左打者の4番と言えば、阿部慎之助さん(1軍作戦兼ディフェンスチーフコーチ)、王貞治さん(ソフトバンク球団会長)、松井秀喜さん(ヤンキースGM付特別アドバイザー)ですね」と巨人の歴代主砲の名を列挙しつつ、「4番という打順はやっぱり華があるので、いずれは打ってみたいです。(周囲から)『4番は安田』だなと言っていただけるようになりたい」と高い志を口にした』
~『スポーツ報知』2022年3月3日配信記事 より
既にオープン戦でホームランを記録した安田に対して、松川はバッティング面で能力を発揮するのはこれからですが、「強打の捕手」としての存在感を高められれば、これも正捕手争いの上で大きな武器になるはずです。
昨季、パ・リーグで規定打席に到達した捕手は、西武・森友哉とソフトバンク・甲斐拓也の2人だけでした。ロッテと楽天では、昨季、正捕手を争った選手たちも軒並み打率は低く、ルーキー捕手がバッティングでもその持ち味を存分に発揮することになれば、パ・リーグの勢力図にも大きな影響を与えるかも知れません。開幕スタメンマスクだけでなく、2人が今季、パをどれだけ盛り上げてくれるのかにも注目です。