◆ 若手、中堅がアピール
5勝9敗2分け、9位。
これはロッテの今年のオープン戦の成績だ。勝敗という部分だけに目を向ければ物足りなく映るが、あくまでオープン戦は調整の場。シーズンに向けて色々と選手を試したり、相手チームの情報を得たり、選手に目を向ければ開幕一軍入りを目指しアピールしなければいけない若手・中堅選手、復活を目指す選手、主力選手は開幕に向けて調整するなど、それぞれの選手によって開幕に向けての準備、立場が異なっている。
そのなかで、若手、中堅、そして主力選手たちは開幕に向けて良い調整ができた選手が多かったのではないだろうかーー。2年連続ファームで打率3割以上をマークしながら、一軍では思うように結果を残せなかった大卒3年目の髙部瑛斗は、2月の対外試合から1度も調子を落とすことなく、オープン戦を終えた。オープン戦の打率.393、22安打、5盗塁、出塁率.435は12球団トップ。
3月8日の日本ハム戦からオープン戦最終戦となった21日の中日戦にかけての11試合全て1番で出場し、安打がなかったのはわずかに2試合だけ。その間の打率は.425(40-17)だった。昨季セ・リーグ の最優秀防御率と最多奪三振の二冠に輝いた柳裕也(中日)、菅野智之(巨人)といったセ・リーグ の“エース級”の投手からも安打を放っており、オープン戦の終盤に入っても調子を落とさなかったことなかったことに価値がある。荻野貴司の出遅れが確実視されるなかで、髙部の台頭は大きい。
髙部だけでなく、同じくレギュラーを目指す藤原恭大はオープン戦の打率こそ.244だったが、最後の1週間は打率.357(14-5)。21日の中日戦では途中出場して満塁本塁打を含むマルチ安打をマーク。対外試合前の2月に行った取材で、対外試合で一軍首脳陣にどんなアピールをしたいか質問すると、“本塁打も打てるところも見てもらいたい”と力強く話していたが、最後の1週間で2本の本塁打を放って見せた。
昨季“ヒロミナイト”で話題を呼んだ岡大海も、若手に負けじと2月の対外試合から存在感を示した。オープン戦では4度の複数安打、21日の中日戦では猛打賞を記録した。髙部、藤原、そしてレギュラーのマーティンは左打ちの外野手。荻野が開幕を間に合わない可能性が高いだけに、ひとまずオープン戦で“打てる”というところを改めて示したのはプラスだ。
内野に目を向けると、“三塁・遊撃”の争いでは藤岡裕大、エチェバリアが本命と思われたが、高卒7年目の平沢大河が猛アピール。3月に入ってから藤岡、エチェバリアが一軍合流し、ベンチスタートという日もあったが、途中出場からでも1日の日本ハム戦で1安打1四球、8日の日本ハム戦で2安打と与えられた機会で結果を残した。18日の巨人戦からオープン戦最終戦となった21日の中日戦にかけて4試合連続三塁でスタメン出場し、4試合全てで安打を放った。
捕手陣も田村龍弘、加藤匠馬、柿沼友哉、佐藤都志也の4人がレギュラー争い、一軍の枠をめぐる争いになるかと思われたが、高卒ルーキーの松川虎生が守備で高い能力を示した。松川が2月の対外試合からマスクを被ったとき(77イニング)の防御率は1.75。3点以上失った試合は、わずかに2試合だけだった。開幕投手が内定している石川歩が先発登板した試合でも2試合先発マスクを被り、3月8日の日本ハム戦が4回無失点、16日の広島戦が6回2/3を2失点の好リード。一軍の戦力として、開幕一軍を掴み取りそうな勢いだ。
若手、中堅だけでなく、主力選手たちもマーティンがオープン戦の打率.364、レアードも3本塁打、中村奨吾は打率こそ.179だが最後の1週間に限れば.294(17-5)としっかりと開幕に向けて調子を上げてきた。
◆ 投手陣も順調
投手陣も石川歩、小島和哉、佐々木朗希、守護神・益田直也といった主力投手陣は開幕に向けて順調そうだ。
昨季“勝利の方程式”を担った佐々木千隼、唐川侑己がここまで一、二軍の実戦での登板がないが、鈴木昭汰がオープン戦6試合・6回1/3を投げ、許した被安打は0、7奪三振、防御率0.00と抜群の安定感を誇った。トミー・ジョン手術から復活を目指す西野勇士は、3月19日の巨人戦で1回2失点だったが、その他の4試合はいずれも無失点。
19年に58試合に登板した東條大樹もオープン戦最終盤に一軍合流し、16日の広島戦、21日の中日戦ともにパーフェクトリリーフ。ストレートに力強さが戻り、今季は再び一軍の戦力になりそうな予感だ。新外国人のゲレーロは21日の中日戦で失点したが、16日の広島戦、19日の巨人戦では心配された制球面での不安定さはなく、力強いストレートを武器に抑えた。そのほかにも新人の廣畑敦也、八木彬もアピールしており、延長12回制が復活する今季に向けて、リリーフ陣の層はさらに厚くなった印象だ。
主力の故障者もあるが、このチャンスをつかもうと若手、中堅組に加え、復活を目指す実績のある選手たちが必死にアピールした。オープン戦の順位だけでは判断できないチーム内の競争はレベルが上がっている。
文=岩下雄太