1つ先を狙った走塁
プロ野球の開幕前となり新聞、Web、雑誌といった様々なメディアで、プロ野球解説者による順位予想が掲載されている。2年連続2位に入ったロッテを優勝に予想する解説者が例年に比べて多い。ちなみに昨年の開幕前は前年2位に入りながら、日本シリーズ4連覇中だったソフトバンク、田中将大が復帰した楽天を優勝予想する解説者が多く、ロッテはというと3位、4位という順位予想が多かった。
ロッテというと、どうしてもレアード、マーティン頼みの打線、佐々木朗希の活躍というのが注目されがちだ。打線に関して得点力という部分でいえば、荻野貴司、中村奨吾がチャンスを作り、レアード、マーティンで還すという攻撃パターンが多かったのは事実。
ただ、ロッテ攻撃の武器は“足を使った攻撃”。2018年に井口資仁監督が就任してから走塁への意識がチーム全体で高まっている。昨季チーム107盗塁はリーグトップだったが、本当に注目しなければならないのは“1つ先の塁を狙った走塁”、“相手の隙を突いた走塁”、“全力疾走”といった部分だ。
“1つ先の塁を狙った”走塁は、ロッテの得意な攻撃のひとつになっている。1本の安打で一、三塁、一塁からホームに還ってきた。打者走者も、打った安打に満足することなく、外野手がホームに送球している間に一塁から二塁を陥れることが度々あった。
今年のオープン戦でも20日の中日とのオープン戦、0-3の4回一死三塁から佐藤都志也のセカンドへの飛球で、二塁手の捕球体勢を見て、三塁走者の中村奨吾がタッチアップしホームイン。さらに1-4の7回二死二塁からマーティンのボテボテのセカンドへのゴロで、二塁走者の髙部瑛斗はスピードを緩めることなく、三塁ベースを蹴る。中日の二塁手は慌ててホームに送球するも、髙部はヘッドスライディングで生還した。
俊足の選手だけでなく、長打力のある選手たちも隙があれば一つ先の塁を狙う。3月16日の広島戦で、山口航輝が無警戒の広島バッテリーの隙を見て二塁盗塁を決めた。
“打てない”と何かと批判されがちな打線だが、無死一塁や無死二塁という場面で犠打や進塁打で走者を進め、1点を取るための工夫がある。かつては得点圏でポップフライを打ち上げ得点できないということも多かったが、打てなくても1点を取るための方法というのをチーム全体で浸透してきている印象だ。レアード、マーティンに続く日本人の大砲の出現は確かに必要だが、1点を取るための攻撃ができているからこそ2年連続で2位に繋がっているのだ。
リーグ優勝するために今まで積み上げてきた足を使った攻撃に、どこまで“長打力”をプラスできるか。そういった意味でも山口航輝、安田尚憲といった日本人の和製大砲候補の若手選手にかかる期待は大きい。
コマが揃ってきた投手陣
投手陣に関しては毎年のようにチーム最多勝利投手が変わっており、絶対的なエースはここ数年不在。今季は昨年チームで唯一規定投球回に到達し、チーム最多の10勝を挙げた小島和哉、昨季後半から抜群の安定感を誇る佐々木朗希、2年ぶり3度目の大役を担う石川歩といった“ローテーション”の軸になりそうな先発がいる。さらにエンニー・ロメロ、美馬学、二木康太、岩下大輝、河村説人、本前郁也、森遼大朗など、先発候補の名前が10人前後挙がるようになってきた。10勝以上を計算できる先発投手は少ないが、状態に応じてうまく使っていけば、5勝〜8勝前後は見込める先発陣だ。
リリーフ陣も昨季の後半戦は7回・国吉佑樹、8回・佐々木千隼、9回・益田直也という“勝利の方程式”が確立された。今季を迎えるにあたって、佐々木、唐川侑己が2月の対外試合から一、二軍の登板がないが、新外国人のゲレーロ、トミー・ジョン手術から復活を目指す西野勇士、新人の廣畑敦也、八木彬といった新戦力、復活を目指す投手たちがオープン戦からアピールを続けている。“左”のリリーフが手薄という一昨年から続く課題はあったが、そこも鈴木昭汰がオープン戦で好投を見せた。リリーフ陣の層自体は年々厚くなってきている。
投手陣に限らず野手も故障者や調整が遅れていても、それをカバーするだけの戦力が出てきている。シーズンは長く、無理に早期復帰して再び故障で離脱するよりも、長い目で見れば万全な状態で戻ってきて、そこから一軍でプレーすることの方がチームにとっても選手にとっても良い。飛び抜けた選手はいないが、若手、中堅、ベテランとバランスがよく、戦国パ・リーグの優勝候補といってもいいだろう。
文=岩下雄太