左右に関係なくインコースを突ける希少性
昨季は出足好調ながら終盤に息切れし、首位・ヤクルトと0ゲーム差で2位という悔しい結果に終わった阪神。矢野燿大監督がシーズン前から今季限りでの退任を表明し、不退転の覚悟で2022年シーズンを迎える。
そんな優勝が至上命題のチームに、新風を吹き込もうとしているのがドラフト3位のルーキー左腕・桐敷拓馬(新潟医療福祉大)だ。
アマ時代には全国大会での華々しい実績はなく、ドラフトファンの間で知る人ぞ知る存在だった。そんな無名の左腕の足跡を簡単にたどってみよう。
本庄東高時代の桐敷は埼玉県内で好投手として知られた。高校3年夏の4回戦・市川口戦での熱投は語り草になっている。延長11回裏二死二塁と、本庄東の勝利まであとアウト1つという場面で、桐敷への平凡な投手ゴロが飛んだ。簡単に処理して試合終了かと思いきや、ボールが桐敷のグラブのウェブ部分に挟まって抜けない。桐敷は右手からグラブを外し、グラブごと一塁に投げたがセーフ。内野安打となっている間に二塁ランナーが生還し、同点に。何らかの魔力が働いたとしか思えない珍場面だった。結局、その試合は桐敷が延長12回を完投し、19奪三振で勝利に導いている。
その後、新興の新潟医療福祉大に進んだ桐敷は、順調にレベルアップしていく。球速はコンスタントに140キロ台に乗り、スライダー、チェンジアップを駆使して関甲新学生リーグで奪三振を量産した。
何よりも左腕ながらコントロールがいい希少性が際立った。左打者のインコースに投げ込むのが苦手な左投手は多いものの、桐敷は打者の左右に関係なくインコースを突ける。両コーナーを幅広く使える投球こそ、桐敷の身上だ。
ドラ1の森木も大物ぶりを披露
2021年10月11日のドラフト会議で阪神から3位指名された直後、桐敷は大仕事をやってのける。10月16日の平成国際大戦に先発した桐敷は1人のランナーも許さず、リーグ新記録の19三振をマーク。なんとリーグ史上初の完全試合を達成した。上昇気流に乗ってプロ入りし、春季キャンプからアピールに成功したのだった。
開幕3戦目の3月27日・ヤクルト戦での先発登板が有力とされる。今が旬の新人左腕が、チームに勢いをつけられるだろうか。
桐敷が一軍で脚光を浴びる一方、二軍ではドラフト1位ルーキーの森木大智(高知)が着々と大物ぶりを披露し続けている。高卒新人のため体作りと並行しながらの実戦登板になるが、春先から150キロ台の快速球で飛ばしている。
3年夏の高校野球引退後もフォーム微修正を続け、好感触を得ていた。中学3年時に軟式ボールで150キロをマークした怪童の進化は止まらない。早期一軍デビューの可能性も十分にありそうだ。
阪神タイガース
2021年ドラフト指名選手のオープン戦成績
*1軍成績(3/21終了時点)1.森木大智・投手(高知高)
出場なし
2.鈴木勇斗・投手(創価大)
出場なし
3.桐敷拓馬・投手(新潟医療福祉大)
3試合 1勝1敗0セーブ 防御率0.82
4.前川右京・外野手(智弁学園高)
5試合 3安打 打率.176 0本 0打点 0盗塁
5.岡留英貴・投手(亜細亜大)
出場なし
6.豊田寛・外野手(日立製作所)
出場なし
7.中川勇斗・捕手(京都国際高)
1試合 0安打 打率ー 0本 0打点0盗塁
◇育成
1.伊藤稜・投手(中京大)
出場なし