創業メンバーが語る将来のビジョン
昨年、「火の国サラマンダーズ」と「大分B-リングス」の2チームでスタートした九州アジアリーグ。そこに今シーズンから、実業家の堀江貴文氏がオーナーを務める「福岡北九州フェニックス」が新たに加わった。新参チームは開幕2戦目で白星を挙げるなど、まずは順調なスタートを切ったが、スタジアム演出はもちろん、トークンを利用したファンとの交流、イベントを行うなど、従来の野球界の常識を覆す、新しい取り組みにも次々チャレンジしている。そんなチームの陣頭指揮を執る、創業メンバーの河西智之さんにお話を伺った。
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取材=永松欣也
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オンラインサロンから立ち上がった福岡北九州フェニックス
―― まずは「福岡北九州フェニックス」を設立した経緯から聞かせてください。オーナーはホリエモンこと堀江貴文さんなんですね。
河西:はい、皆さんご存じのホリエモンが創設者でありオーナーを務めるチームが福岡北九州フェニックスです。チーム設立の経緯は、まず昨年からスタートした「九州アジアリーグ」というリーグがありまして、そこに参加しているチームの代表と堀江が元々ご縁があったんです。
そんななかで「福岡にもチームを作ろう」となったときに、堀江が「面白そうだ」と、自身が運営している「HIU」というオンラインサロンの中で「独立リーグのチームを作ってみよう」と提案したことがきっかけになります。
―― オンラインサロンからチームが立ち上がったというのが面白いですね。
河西:私を含めて創業メンバーは全員オンラインサロンのメンバーなんです。私も元々は東京で弁護士をしていたのですが、高校まで野球をやっていましたし球団経営にも興味があったので、参画させてもらうことになりました。
昨年6月からはチームの拠点になっている北九州に引っ越しまして、当面はここから球団経営と弁護士業の二足の草鞋で頑張っていこうと思っています。
―― オンラインサロンのメンバーの中から、どのようにして河西さんが創業メンバーに抜擢されたのでしょうか?
河西:特に抜擢というほどのことではなく、興味があって手を挙げたらたまたま指名された、というだけです(笑)。
―― オンラインサロンをきっかけに弁護士から突然球団創業メンバーとして経営を担うことになったんですね。不安はありませんでしたか?
河西:不安もありましたけど、元々弁護士として企業法務の知見はありましたし、他の球団経営をされている方にもアドバイザーに入ってもらいノウハウを教えてもらいながら、ちょっとずつ進んでいるところですね。
―― 堀江さんがオーナーというのはプレッシャーと心強さ、どちらの方が大きいですか?
河西:最初はやっぱり「あのホリエモンが立ち上げた球団」ということでメディアにも多く取り上げていただきましたし、かなりのプレッシャーがありました。堀江から飛んでくるボールもなかなかのプレッシャーでしたし(笑)。
でも最近では後ろに堀江がいることを心強く感じますし、良い意味でプレッシャーと緊張感を持ちながら業務をやらせて頂いています。本当にありがたいなと思っています。
―― そんなチームが3月20日の開幕戦では負けてしまいましたが1200人のお客さんが集まって、翌日の第二戦では初勝利を挙げられました。創業メンバーとして初勝利を味わったご感想は?
河西:一番はほっとしましたね。去年は「火の国サラマンーズ」(熊本)が「大分B―リングス」に圧倒的な差をつけて勝っていたので、「うちは熊本にいつごろ勝てるだろう?」という不安と、北九州は野球熱が高くて勝負事に熱いファンの方も多いので、開幕2連敗してしまったら町を歩けないんじゃないかという不安がありました(笑)。ですので、熊本相手に1勝1敗でスタートできて、喜びというよりも安堵の気持ちが一番に来ました。
―― 堀江さんの球団らしいスピード感で、チーム立ち上げから1年経たないうちに開幕戦を迎えたわけですが、その間に一番大変だったことは何でしたか?
河西:やっぱり資金集めですね。スポンサー獲得の営業に行った際に、球団としてまだ実績もないなかで「本当にやるの?」と疑心暗鬼になられることがどうしてもあって、その中で「スポンサードしてください!」と説明するのはきつかったですね。リーグ自体も2年目で知名度もまだ低いので、一から説明をして理解をしてもらうというのが本当に大変でした。
―― 選手集めはそんな大変ではなかったですか?
河西:選手集めは、監督が知名度のある西岡剛(元ロッテ、阪神など)に決まってから、多くの選手が興味を持ってくれて有望な選手がたくさん来てくれましたので、比較的スムーズに進んで戦力も整ったかなと思っています。
選手達との距離が近い、そこが独立リーグの魅力
―― 福岡北九州フェニックスは河西さんから見てどんなチームですか?
河西:今年のスローガンが『打破~新たな旋風を~』なんですけども、そこには色んな常識や自分たちの限界を打ち破っていこうという思いが込められているのですが、このスローガン通り、新しい取り組みをどんどんやっていこうと思っているチームですね。
例えば球場ではクラブミュージックを流してフェスみたいな感じでお客さんもノって試合を見られるような、そういう新しいこともやっていますし、選手が試合の解説を行ったり、SNSを通じて選手をもっと身近に感じてもらう取り組みだったり、これまでリーグやチームがあんまり取り組んでこなかったことに新しくチャレンジしています。
西岡監督もアイディアマンで色んな新しいことをやろうと思ってくれていますし、そういう自由な形で既存のスタイルにとらわれない、ユニークなチームだと思っています。
―― NPBにはない独立リーグの面白さはどういったところにありますか?
河西:一番は選手とファンの距離が近いことだと思います。NPBですと毎試合何万人もお客さんが入りますけど、独立リーグはまだまだ1000人入ったら大盛況という規模です。
でもその分、球場ではちょっと近い場所から選手を見れて、試合が終わった後は選手が直接サイン会を行ったりなど、選手を身近に感じられる、「直ぐに会いに行ける地下アイドル」に近いコンセプトで選手達と触れあえる、そこがNPBにはない、独立リーグの一番の魅力かなと思っています。
―― 地下アイドルに近いコンセプトというお話がありましたが、この選手に注目して欲しいという「推し」がいれば教えてください。
河西:結構イケメン、それでいて実力があってという選手が多いのですが、例えば開幕投手を務めた本野一哉という140キロくらい投げるサウスポーがいますし、久留米工業大学で活躍した大江海透というピッチャーもいます。
野手では妹尾克哉という動きの良いショートがいたり、キャッチャーには元西武のカブレラ選手の息子のラモン・カブレラという選手がいます。ですので、彼等を中心としたセンターラインの選手達を推したいですね。
あとはこれからもう一人ブラジル人選手を獲得しようと思っていまして、ホームランを20本くらい打ってくれるんじゃないかと期待していますので、その選手も推していきたい選手ですね。
新しい応援の仕方ができる「フェニックストークン」
―― 球団の資金調達の手段としてFiNANCiE社のトークンを利用されていますが、そもそもトークンとは何なのでしょうか?
河西:チームを応援する新しい仕組み、新しい印、という言い方が一番分かりやすいかなと思います。
FiNANCiEさんのアプリ内でチームが発行している「フェニックストークン」というものを買って頂くと、トークン保有者のみの新しいコミュニティができ、球団の企画に参加できたり、色んな特典を体験できたり、チームの意思決定にも関わることができたりと、新しいファンクラブの形としてやりとりすることができます。
将来的にチームの価値が上がれば、保有しているトークン価値も上がっていき、自分もメリットを受けられるかもしれないという、トークンを持っているファンと球団がWin-Winになるような、これまでのファンクラブとは違う新しい応援の仕方ができる、サービス、プラットフォームですね。
―― トークンを購入し保有することで球団を金銭的に支援できて、球団の意思決定にも関われるということですね。ちょっと株主みたいな感じですね。
河西:そうですね。球団株主を擬似的に体験できるサービスだと思います。とはいえ、トークンは有価証券ではありませんので金融資産にはなりません。その辺が株とは異なるところですね。
―― 実際に現在(2022年3月末時点)のトークン保有者は何人くらいいるのでしょうか?
河西:1500名弱になります。
——金額的にはトークンを通じてどれくらいのお金が集まったのでしょうか?
河西:初期の一次募集では1000万円弱くらい集まりました。そのあとの二次流通の売買の手数料も含めて現在は全体で1000万円強、集まっている状況です。
球団ロゴもマスコットの名前も、決めたのはトークン保有者
―― 先ほどトークンを保有することで色んな企画や意思決定に参加でいるというお話がありましたが、これまでにどんな企画があったのでしょうか?
河西:チームのロゴを決定する際に、いくつかの最終デザイン候補の中から投票で決定しましたし、チームの応援歌を地元出身の175Rさんが作ってくれたのですが、そのコーラス部分に参加できるイベントを行ったり、チアも作ろうと思っているんですけど、そのチアの名前の募集と集まった案の中からどれにするかを投票で決めたり、そういった企画を行ってきました。
あとはマスコットの名前が「フェニーくん」というんですけども、それもトークンホルダーの投票によって決めました。
チームが立ち上がったばかりで何も決まっていなかった中で、自分たちの投票などでそこを決められたというのは、応援してくださる皆さんにとっても非常に良い体験だったのはないかと思います。
―― トークンを活用してみて思ったことや、今後はこんなことをしてみたいと思っていることなどはありますか?
河西:開幕2試合目に何対何でどちらが勝つかという、スコア予想を皆さんにしてもらい、的中させた方にトークンをプレゼントするという企画を行いました。そのような試合を定期的に見てもらえるような仕組み、試合と連動したトークン企画をどんどんやっていきたいですね。
―― 先ほど「トークン価値」についてのお話がありましが、現在は発行当初に比べてトークンの価格は上がっているのでしょうか?
河西:発行当初に比べて若干上がっているという状況です。トークンを発行したのが昨年の7、8月頃だったと思うんですが、9月にリーグへの正式加盟が承認されて堀江と私で記者会見を行ったときにトークン価値が一気に10倍くらい上がりました。それがちょっとずつ下がってきて今は落ち着いているという状況ですね。
―― 昨年は同じリーグの火の国サラマンダーズからNPBにドラフト上位指名を受ける選手が誕生しました(石森大誠投手が中日ドラゴンズからドラフト3位指名)。北九州からもドラフト指名される選手が誕生するとトークン価値も高まりそうですね。
河西:そうですね。NPBには一人は送り込みたいなと思っています。
——まだまだトークンというものに馴染みがない野球ファンも多いと思いますが、福岡北九州フェニックスを自分も応援したい、トークンを保有したいと思ったら、まず何から行えば良いでしょうか?
河西:まずは「福岡北九州フェニックス」で検索して頂いてチームのホームページにアクセスしてください(https://phoenix2022.co.jp)。「FANCLUB」ページの中に「FiNANCiE」というコーナーがありますので、そこからまずはアプリをダウンロードしてください。そのアプリからトークンを購入して頂くことができます。
少額でお試し購入もできますので是非お願いいたします。そして、フェニックスがこれから大きくなりそうだと思ったら買い増すなどして頂ければ、私たちと一緒に将来メリットを受けられるかもしれないということですね。
九州とアジアで新しいリーグを作って野球を盛り上げていきたい
―― 最後に今後のことをお伺いしたいのですが、福岡北九州フェニックスをどんなチームにしていきたいですか?
河西:まだまだどうなるか分からない、立ち上がったばかりのチームですけれども、まずは拠点にしている北九州にしっかり根付いて地元の皆さんに応援してもらえるチームを作っていきたいと思っています。
また、我々が所属している九州アジアリーグは、アジア、台湾、韓国、中国と提携して、「アジアリーグ構想」という大きな構想を掲げてやっていますので、九州とアジアで新しいリーグを作って野球を盛り上げていきたいですし、その中で我々も自前のスタジアムを作って、エンターテイメントとして一日中楽しんでもらえるボールパークを作って、多くのお客さんに楽しんでもらえるような、そういうチームにしていきたいなと思っています。
―― 今季のリーグの目標は?
河西:今年は独立リーグ日本一を決めるチャンピンリーグも開催される予定ですので、まずは昨年優勝した熊本を倒してリーグ優勝して、創設初年度ですけど独立リーグ日本一を成し遂げたいなと思っています。
―― 最後に全国の野球ファンに向けてひと言お願いします。
河西:チームは西岡監督を筆頭にものすごく明るくてムードも良いので、球場にぜひお越し頂ければと思います。またライブ配信も積極的にやっていきますので、球場に来られない方はネットで見て頂いて、あわよくば「推しメン」を見つけて頂いて、チームと共に選手個人も応援して頂けると我々も嬉しいです。ぜひ応援よろしくお願いいたします。
■ 河西智之(かわにしともゆき)
1991年6月3日生まれ。香川県丸亀市出身。香川県立丸亀高校から中央大学法学部に進学し、卒業後の2015年に司法試験合格。2016年12月より弁護士登録をし、西村あさひ法律事務所などを経て、現在はフラクタル法律事務所に所属。2021年4月より福岡北九州フェニックスの創業メンバーとして球団経営を務める。