◆ 投手陣を引っ張る
「バッティングの部分は、キャッチャーに比べて自信がまだあるのかなと思います」。
春季キャンプが始まった直後の2月2日にオンライン取材したときに、このように話していたロッテのドラフト1位・松川虎生が、今やマリーンズの捕手陣に欠かせない存在になりつつある。
2月の対外試合から開幕前のオープン戦まで松川がマスクを被ったとき(77イニング)の防御率は1.75。3点以上失った試合は、わずかに2試合と結果を残し、開幕一軍を掴んだ。
3月25日の楽天戦では『8番・捕手』で高卒新人捕手としては史上3人目となる開幕マスクを被り、石川歩、ゲレーロ、益田直也の3投手を無失点に抑えるリードで開幕戦の勝利に大きく貢献した。
4月10日のオリックス戦で、佐々木朗希を完全試合に導く好リード。松川自身もプロ野球新記録となる捕手ゲーム20守備機会、プロ野球タイとなる捕手ゲーム19刺殺を記録した。
13日終了時点で松川がマスクを被った試合のチーム成績は5勝2敗、投手の防御率は1.37と抜群の成績を残し、4月8日のオリックス戦から松川がスタメンマスクを被った試合は2試合連続完封勝利中、18イニング連続で無失点中だ。
キャンプ直後に“捕手面よりも打撃に自信がある”と話していた背番号2は、ものすごい速度で捕手としての成長を見せている。
◆ 投手陣も評価
投手陣からの評価も高く、信頼も厚い。
7回を無失点に抑え開幕戦で勝利を挙げた3月25日の楽天戦でのヒーローインタビューで石川歩は「調子自体はそんなに良くなかったんですけど、松川にしっかりリードしてもらって抑えられたと思います。高卒新人じゃないみたいでした」と話せば、10日のオリックス戦で完全試合を達成した佐々木朗希もお立ち台で「松川がいいリードしてくれたので、要求に応えながら投げることができたと思います」と感謝した。
3月のオープン戦以降はバッテリーを組んでいないが、2月の対外試合で松川とバッテリーを組んだときに、2試合・5イニングを投げ、1安打無失点と好相性を見せた本前郁也は「すごく投げやすいですし、登板前にテンポは早めでいこうと話してやっています」と評価。本前が“テンポよく投げたい”という意図を松川がしっかりと理解し、好結果をもたらした。
開幕前に支配下選手登録となった小沼健太は「あんまりカーブは得意じゃないというか、一番苦手な変化球。今もそうなんですけど、松川だったり、積極的にサインで出してくれるので、出された以上は自信を持ってしっかり。“ボールになってもいいや!”という気持ちで低めに、今はコントロールできている。カーブはこれからも使っていけたらなと思います」と、昨年まではカウント球としてストレートやカットボールを投げることが多かったが、今季はカーブやフォークなども早いカウントで積極的に投げている。
小沼と松川がバッテリーを組んだ2月20日のヤクルトとの練習試合では、6-0の4回に2点を失ってなお、二死満塁というピンチで小沼は登板し、武岡龍世の初球にカーブを投じストライクをとると、0ボール2ストライクから3球目のフォークで二ゴロに打ち取るということもあった。佐々木朗希が岡本和真に満塁本塁打を打たれた直後にマウンドにあがった3月18日の巨人とのオープン戦でも、中田翔の初球に松川は小沼にカーブを要求している。
高卒1年目ということもありキャンプ、練習試合、オープン戦で一軍を経験し、シーズンが始まってから体づくりとともに二軍で実戦を積んでいくと思われたが、開幕から佐藤都志也とともにロッテ投手陣を引っ張っている。バットでも打率こそ.167だが、きっちりと1球目に犠打を決めたり、ランナーを置いた場面で難しいインコースの球を一塁側に打ち走者を進めるなど、その貢献度は高い。この先、対戦が増え相手から研究されたときにどのように対応していくかが、ポイントになってくる。ただここまで、高卒新人の捕手とは思えないほどの活躍を見せているのは事実。今後、どのような成長曲線を描くのか非常に楽しみだ。
▼ 松川が出場した時の投手成績
7試 5勝2敗 65回2/3 防1.37 盗塁阻止率.400
先 発:防1.06
リリーフ:防2.45
文=岩下雄太