ファームで過ごす中で新たな挑戦
「そういう場面(優勝を争いをするなか)で投げられなかったのは、悔しかったなと思っていました」。
ロッテの東條大樹は、昨季の悔しさを晴らすかのように今季は開幕から安定した投球で不安定なブルペン陣を支える。
19年に大きく曲がるスライダーを武器に、58試合に登板し一軍に定着。翌20年も39試合を投げて防御率2.54という成績を残したが、昨季はわずか5試合・防御率5.40で、4月21日の日本ハム戦を最後に一軍登板がなかった。
ファームで過ごすなかで、新たな発見もあった。「去年はスライダーが微妙だったので、カーブも使ってみようかなと。高校のときもカーブは使ったりしていたので、それでちょっとカーブをやってみようかなと思って投げたら意外と良くて、それで使っています」と、高校時代以来となるカーブに挑戦した。
「結構良くて、今年も使っています」と話すように、早いカウントで120キロ台前半のカーブを投げる。本人も「カウントが取れているので、有効なボールになっていると思います」と話す。
威力が戻ってきたストレートとスライダー
ファームで再挑戦したカーブもそうだが、何よりも今年良いのがストレートとスライダーだ。
「今のところストレートがすごくいいので、状態よくできているかなと思います」。
今季のストレートは145キロ以上を計測し、強さも2019年、20年の頃に戻った印象だ。「ストレートあってのピッチングなので、ストレートの強さは意識してやっていました」と、自主トレからストレートの強化に取り組んだ。
一軍で活躍できている要因についても「ストレートだと思います。ストレートでカウントが取れているので、良い要因かなと思います」と、ストレートを挙げた。
“伝家の宝刀”スライダーも素晴らしい。今季は右打者に大きく曲がるスライダーだけでなく、これまで課題にしていた左打者に対しても外から入ってくる“バックドア”のスライダーで抑えるなど、ここまで左打者の被打率は.059(17-1)だ。
4月6日の日本ハム戦では、清宮幸太郎をバックドアの127キロのスライダーで空振り三振。さらに、4月27日のオリックス戦では西野真弘の体に当たるスライダーで空振り三振に仕留めており、その威力は抜群だ。
ただ東條は「スライダーは普通くらいかなと思います」と、まだまだ良いボールが投げられると見ている。左打者のバックドアのスライダーについても「そこは今、コントロールよく投げられているポイントだと思います」と自己分析した。
様々な局面で登板
今季はここまでイニング途中のピンチの場面で登板したり、イニング頭で登板したりするなど、様々な状況で登板している。
「そこはやっぱり普通にゼロに抑えたいという思いでマウンドにあがっています」。イニング途中、イニング頭からの登板でも変わらず、打者一人一人を抑えることに集中する。
ここ最近は勝ち試合の登板も増えてきたが、「プレッシャーはありますけど、今一軍で投げられているのは嬉しいこと。いい気持ちでマウンドにあがれています」と話し、ゆくゆくは“勝利の方程式”で投げたいという想いを持っている。
「今のところはいい感じでやれています」と東條。国吉佑樹、佐々木千隼、唐川侑己といった勝利の方程式が一軍を不在とするなかで、その存在感は日に日に高まっている。
取材・文=岩下雄太