規定打席到達は2017年の一度だけ
交流戦開幕直前の10試合で7勝3敗と大きく勝ち越すなど、5月の半ばからようやく日本ハムにエンジンがかかってきた。
最大「14」あった借金は23日時点で「9」。依然として最下位ではあるが、5位のロッテとはわずか1.5ゲーム差で交流戦に突入する。
投手陣では上沢直之と伊藤大海の2枚看板がチームを引っ張っているが、野手陣では松本剛の存在が大きい。松本剛は2011年ドラフト2位で指名を受け、帝京高から日本ハムへと入団。今年がプロ11年目で、8月には28歳になる。年齢的にもプロ年数的にも、いわゆる「中堅選手」だ。
6年目の17年に規定打席に初めて到達し、同年オフに開催されたアジアプロ野球チャンピオンシップでは日本代表に選出された実績もある。しかし、18年以降は結果を残すことができず、昨シーズンも47試合の出場にとどまっていた。
それでも、BIGBOSSが監督に就任した今季は、開幕一軍スタートを勝ち取ると、ここまで打率.366(142-52)、14盗塁と主要成績2部門でリーグトップ。また、得点圏打率.435も吉田正尚(オリックス)に次いでリーグ2位と、勝負強さも発揮し、新生ファイターズの中心選手としてチームを牽引している。
打順を固定されることなく、守備でも外野の3ポジションをカバーするユーティリティな側面を持ちながら、これだけの好成績を残している点も評価に値べきポイントだろう。
打率&盗塁の二冠はイチローら過去3人
上々のスタートをきった松本剛へ、今後期待されるのは個人タイトル獲得だ。
歴代のパ・リーグ首位打者を振り返ると、日本ハム勢では2007年の稲葉篤紀(現GM)が最後。近藤健介が19・20年と2年連続で最高出塁率に輝いたことはあったが、ここ14シーズンもの間、首位打者が誕生していないのだ。
また、首位打者と盗塁王の同時獲得となれば球団史上初となる。打率&盗塁の二冠は球史を遡っても珍しく、広瀬叔功(南海/1964年)、佐々木誠(ダイエー/1992年)、イチロー(オリックス/1995年)と過去3度しか達成されていない。過去7人(計11度)が成し遂げた打撃三冠よりも希少なのだ。
もちろん、シーズンはまだ序盤戦だが、松本剛は球団15年ぶりの首位打者に盗塁王も加えた二冠という歴史的な偉業への“挑戦権”を手にしているとみていい。
昨季まで通算15盗塁しか記録していなかった松本剛が、23日時点で今季14盗塁という変貌っぷりは、守備走塁を重んじる新監督・BIGBOSSの意識改革による影響も小さくないはずだ。
新庄監督は開幕から打順や守備位置をほぼ固定せず、様々なバリエーションでスタメンを組んできた。そのなかで松本剛は、全45試合中40試合に出場し、155打席に立っている。出場試合数はチームトップタイであり、打席数もチームトップだ。そのあたりの数字からも、松本剛に対する新庄監督の信頼の厚さがよくわかる。
入団11年目のブレイクは遅咲きではあるが、いまやチームに欠かせぬ選手となった松本剛。巧打と勝負強さを武器にチームを牽引していく姿に、引き続き注目だ。