開幕戦で2安打に「ホッとはしました」
「この2年間を振り返って、全然できることがなかったなかで、今年これだけ試合に出続けられているというのは収穫としてありますし、充実させることはできているんじゃないかなと思います。ただ、もっともっとできるなという部分の方が多く、満足はしていないです」。
開幕から全試合に出場するロッテの髙部瑛斗は、打率.270、64安打、18盗塁をマークし、盗塁数はリーグトップ、安打数もリーグ2位につけるなど、レギュラーポジションをモノにしつつある。
プロ入りから2年連続ファームで打率3割以上をマークしながら、昨季は一、二軍を何度も往復し、一軍定着とはならなかった。今季に向けてオフは技術、フィジカル、メンタルの向上を図り、2月の対外試合で打率.387(31-12)と打ちまくり、オープン戦でも打率.393、22安打、5盗塁、出塁率.435はいずれも12球団トップと文句なしの成績を残した。
“結果”を残し自らの手で掴みとった開幕一軍。開幕前日は「やるしかないなという気持ちだった。気負うことなく過ごせたなと思います」と、緊張感で眠れないということはなかったという。
迎えた3月25日の楽天との開幕戦。『1番・左翼』でスタメン出場すると、0-0の6回一死一塁の第3打席、先発・則本昂大が投じた初球、三塁線へセーフティバントを決め今季初安打を放つ。9回の第5打席には小峯新陸からレフト前に弾き返す安打で、開幕戦でいきなりマルチ安打をマークする幸先の良いスタートとなった。
「スタートダッシュでヒットが出たというのはホッとはしました。シーズンに入って流れというのを切らさないで、入れたというのは大きかったと思います」。
これで勢いに乗った。3月29日のソフトバンク戦では0-1の8回に一時同点となる適時打を放てば、4月中は5試合連続安打を2回記録し、4月30日の日本ハム戦ではプロ入り3年目で初の猛打賞を達成。4月を打率.269(108-29)で終えると、5月に入ってからも13日のオリックス戦では先頭打者で出塁した初回の第1打席(中安)、3回の第2打席(四球)、8回の第4打席(四球)はいずれも盗塁を決め、ホームに還ってくるなど、これぞリードオフマンという働き。
さらに21日のソフトバンク戦も3安打2四球で全打席出塁し、24日の広島戦も2安打1四球、6月も8日の中日戦で1安打2四球2得点と、いまやマリーンズ打線に欠かせない打者のひとりになっている。
相手から厳しいマークも
打線において欠かせない存在になっているということは、当然相手からのマークも厳しくなってくる。
「初球から振っていくタイプ。前の攻め方はストレートから入ってきたりしますけど、いきなりフォークであったりとか振らせにくるボールから入ってきているなと感じます。最初よりも内角が増えてきて、多少なりとも違うなと感じます」。実際に打席内で相手投手の攻めの変化を感じている。試合を見ていると、インコースに攻めてくることが増え、二塁や一塁へのゴロアウトが多くなった印象だ。
「内角の球を引っ張るというのがセオリーだと思うんですけど、2ストライクになったときに内角でも逆方向に打てるというのは強み。決めつけたりせず、いくときはいく、追い込まれてから逆方向という感じで幅広くやっていけたらなと思います」。
体調管理も重要
相手投手からのマークだけでなく、開幕から59試合を消化し、そろそろ疲れも出てくる時期だ。
「もちろん(体力的なキツさを)感じていますけど、それでも自分と見つめあってできているなと思っています」。
ロッテはZOZOマリンスタジアムを本拠地にしており、暑い夏場をどう乗り越えていくかも1年間戦っていくうえでカギとなる。「体重を落とさないように。フィジカル面で頑張らなきゃいけないなと思います」と話す。
4月、5月、そして交流戦もレギュラーとしてプレーし、あとは夏場以降にどれだけ調子を落とすことなくプレーできるか。「1年間しっかり試合に出て、それに見合う結果を残せるように1試合、1試合見つめながら、全力でプレーしていきたいと思います」。髙部が1年間レギュラーで活躍できれば、チームの未来も明るくなる。最後までトップバッターとして、チームを引っ張っていって欲しい。
取材・文=岩下雄太