ヤクルトへ移籍
29日、ロッテの山本大貴投手とヤクルトの坂本光士郎投手の交換トレードが成立した。
山本は球団を通じて「正直、ビックリしました。必要としていただいての移籍ですので、このチャンスを生かすことが出来るように頑張りたいと思います」と新天地での活躍を誓った。
不器用な左腕
19年のシーズン序盤まで、どこかコーチ陣に頼りすぎるところがあった。大隣憲司二軍投手コーチは19年6月の取材で「最近、山本とかにも言っているんですけど、『俺がいなかったらどうする?』と。毎回(全体練習が終わったあとに)キャッチボールとかしているじゃないですか。それもいいけど、『もし、一軍に行きましたずっと投げています。俺おらんで』と。最近こうなっているなとか自分で気づけるようにならないと変われないよ。今変われても実際、次に同じ場面を迎えたとき、またあかんかったらファームになる。そういうのも含めてやらないといけないよと言っていますね」と話していた。
確かに19年の春先は全体練習後に大隣コーチとキャッチボールすることが多かった。大隣コーチを取材後の19年7月以降、山本の練習後の動きに注目すると、同年の夏頃からはファームのブルペン捕手と全体練習後にキャッチボールし、キャッチボール後にコミュニケーションを取る場面が増えていった。
山本自身もシーズン終了後に「最初は頼っていたんですけど、いざ一軍にあがったことを考えると、大隣コーチは二軍の投手コーチなので、隣さんに「俺がいないとき、どうするんだ!」と言われました。そこから自分で考えるようになりました。本当に迷ったときに一言自分で聞きにいくというスタンスがある程度固まってからいい方向に向かっていきました」と明かした。
当時二軍投手コーチを務めていた小野コーチも19年11月の取材で「自分でやっている姿が(19年)8月くらいからあった。ファームでやられて、自分のなかでなんとかしなくちゃというものが、おそらくあったと思う」と変化を感じ取っていた。
山本は同年オフに、プエルトリコのウインターリーグに参加。
「周りの外国人選手は、切り替えが上手。楽観的というか、そういう面では周りの空気が自分をそうさせていたという感じだったので、勉強になりました。悪くても、良くても何がよかったのか、何が悪かったのかを反省して、次の日にチーム移動で普通に話しかけてくれる。どれだけ悪くても次やれよ、みたいな雰囲気でした」。
「そういう雰囲気を味わえただけでも、いいところは日本でもやっていかないともったいないかなと思いましたね。そういった面では、さらに勉強になったというか、自分の切り替えが、まだまだそこまでできていなかったんじゃないかなと思うくらいの経験ができたのでよかったです」。
メンタル面で大きく成長し、20年は2年ぶりに一軍登板を果たすと、ビハインドゲームを中心に12試合に登板。12試合中11試合で無失点に抑え、防御率2.63と、手薄な“左”のリリーフ陣のなかで存在感を示した。
「もっともっと試合数を投げたいと思っていますし、そのなかで去年(20年)は負けている試合が多くて、経験という感じで投げさせてもらっていた。自分で掴み取りにいかないといけないと思っている。そのつもりでやっていますし、その気持ちを忘れずにこれからもやっていきたいと思います」と21年開幕前に決意を述べたが、結局同年は2年ぶりに一軍登板なしに終わった。
今季も開幕からファームで過ごし、27試合に登板して2勝1敗6S、防御率2.87の成績を残していた。特に6月は10試合・10イニングを投げて、防御率0.90。6月8日の巨人戦で今季初セーブを挙げると、19日のヤクルト戦から7月2日のDeNA戦にかけて5試合連続セーブ。これまではどちらかというと、制球に不安定な部分があったが、6月の与四球は10イニングでわずかに1つ。走者がいないときはリズム良く投げ、投球テンポが抜群に良くなった。
20年には「具体的になにかをやったからスピードが上がったという確証はないのですが、全体的にしっかりとトレーニングをやりました。速いだけでは意味がないとは思うんですけど、とにかく速い球を投げたいという思いはあったので、それが結果になってくれていた」とストレートの球速がアップし、メンタル、修正力、思考力という部分でも毎年成長した姿を見せていた。
ただロッテは左のリリーフが手薄ではあるが、左打者を抑えきれるだけの右投手が揃っていたことに加え、山本自身、春先にオープン戦でなかなか結果を残せず、シーズンに入ってから尻上がりに調子を上げいく傾向が強かった。昨年、今季と一軍の登板はなかったが、必要とされてのヤクルトへトレード移籍。このチャンスを掴まなければと気負いすぎず、ロッテで取り組んできたことを自信にして、ヤクルトで大輪の花を咲かせて欲しい。
▼ 山本大貴
「正直、ビックリしました。必要としていただいての移籍ですので、このチャンスを生かすことが出来るように頑張りたいと思います。プロ入りして5年。色々な経験をさせていただいて野球選手として成長をすることが出来ました。千葉ロッテマリーンズの皆様には感謝の気持ちで一杯です。そして、なんといってもファンの皆様の応援がボクの力になりました。プロ初登板した際にスタンドから声援をいただき、これがプロかと感動をしたのを覚えています。もっともっと応援してもらえるように頑張りたい。応援に応える投球がしたいといつも思いながら練習に励んできました。感謝の気持ちで一杯です。応援ありがとうございました。新しいチームで精いっぱい頑張ります」
文=岩下雄太