話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、7月のパ・リーグ投手部門で月間MVPを受賞した西武2年目、水上由伸投手にまつわるエピソードを紹介する。
例年、強力打線が売りの埼玉西武ライオンズ。だが、今季のチーム打率はリーグ5位、得点数もリーグ3位(いずれも8月9日時点)と、爆発力という点で物足りなさを感じるファンも多いはずだ。
それでも、現在リーグ1位を走る原動力となっているのが安定した投手陣。昨季、チーム防御率がリーグワーストの3.94だったのに対し、今季はリーグ1位の2.50と1点以上も改善しているのだ。髙橋光成以外に規定投球回数に達した先発投手がいないなか、救援陣の奮闘ぶりが光る。
その1人こそ育成出身の2年目、水上由伸。7月の月間MVP受賞が決まるなど、いままさに波に乗っている選手だ。
7月は11試合に登板して2勝7ホールド、防御率は圧巻の0.00。クローザーの増田達至がコロナ陽性のため離脱したこともあり、7月は従来の中継ぎだけでなく9回のマウンドも経験。7月30日にはプロ初セーブも記録している。
もちろん、この快投ぶりは7月に限った話ではなく、前半戦は40試合に登板して3勝1敗22ホールド、防御率は0.69。監督推薦でオールスター出場も果たしている。
名前の「由伸」は巨人ファンの父が名付けたもので、オリックスのエース・山本由伸は1998年生まれの同学年。大学3年で投手に転向したという変わり種で、2020年のドラフトでは西武育成5位、「12球団全体で最後に指名された男」として逆に注目を集めたことも。
そんな「最後尾からの船出」を感じさせない2年目の飛躍。その要因とも言えるのが、チーム首脳陣も認める「強気な性格」と「ポジティブ思考」、そして、そのメンタルにふさわしい「インコース攻め」にある。振り返れば支配下登録が決まった際、西武・渡辺久信GMの言葉に、その魅力が既に垣間見えていた。
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今季、勝利の方程式として水上を重用する辻監督も、こんな言葉でその性格面を言い表している。
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この性格面、ポジティブ思考があるからこそ、相手バッターに対して臆せず、動じずに勝負を挑むことができている水上。そのポジティブ思考の原点は、山梨・帝京三高時代に専門の講師から学んだメンタルトレーニングにあるという。大学進学後も独学で勉強を続けたというこのメンタル面のベースがあるからこそ、ピンチの場面でも「ここで抑えればヒーローだ」と力に変換することができているのだ。
そして渡辺GMの言葉にもあった通り、強気な性格を武器に打者のインコースにしっかり投げ込むことができるのも水上の魅力。なかでも、代名詞になりつつある球種がシュートだ。そして、この球がプロでも通用すると自信を植え付けてくれたのは、昨季までチームメイトだった松坂大輔の存在だった。
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現時点で44試合登板4勝2敗1セーブ、23ホールドで防御率1.05と充実のシーズンを過ごす水上。1年目の昨季投球回数は27イニングで、新人王資格(投手は30イニング登板以下)を満たしているだけに、ここにきて新人王候補としても俄然注目を集めている。
ただ、本人は自分のことよりも、他人が喜ぶ姿を見たいタイプ。座右の銘には、他人を喜ばせる力=「他喜力」を掲げている。ならば、より多くの人が喜ぶ瞬間「リーグ優勝」に向けて、ここからの終盤戦、ますます西武躍進のカギを握る存在になるのではないだろうか。
例年、強力打線が売りの埼玉西武ライオンズ。だが、今季のチーム打率はリーグ5位、得点数もリーグ3位(いずれも8月9日時点)と、爆発力という点で物足りなさを感じるファンも多いはずだ。
それでも、現在リーグ1位を走る原動力となっているのが安定した投手陣。昨季、チーム防御率がリーグワーストの3.94だったのに対し、今季はリーグ1位の2.50と1点以上も改善しているのだ。髙橋光成以外に規定投球回数に達した先発投手がいないなか、救援陣の奮闘ぶりが光る。
その1人こそ育成出身の2年目、水上由伸。7月の月間MVP受賞が決まるなど、いままさに波に乗っている選手だ。
7月は11試合に登板して2勝7ホールド、防御率は圧巻の0.00。クローザーの増田達至がコロナ陽性のため離脱したこともあり、7月は従来の中継ぎだけでなく9回のマウンドも経験。7月30日にはプロ初セーブも記録している。
もちろん、この快投ぶりは7月に限った話ではなく、前半戦は40試合に登板して3勝1敗22ホールド、防御率は0.69。監督推薦でオールスター出場も果たしている。
名前の「由伸」は巨人ファンの父が名付けたもので、オリックスのエース・山本由伸は1998年生まれの同学年。大学3年で投手に転向したという変わり種で、2020年のドラフトでは西武育成5位、「12球団全体で最後に指名された男」として逆に注目を集めたことも。
そんな「最後尾からの船出」を感じさせない2年目の飛躍。その要因とも言えるのが、チーム首脳陣も認める「強気な性格」と「ポジティブ思考」、そして、そのメンタルにふさわしい「インコース攻め」にある。振り返れば支配下登録が決まった際、西武・渡辺久信GMの言葉に、その魅力が既に垣間見えていた。
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『本当に強気な性格。ただこれは、とても大事なことで、(今後一軍の)試合の中でも打者のインコースに投げることができると思います。ボール自体も強く、変化球も多彩なので、これから戦力になってくれると思います』
~『週刊ベースボールONLINE』2021年5月17日配信記事 より
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今季、勝利の方程式として水上を重用する辻監督も、こんな言葉でその性格面を言い表している。
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「俺に『頑張りましょう』『悩みとかあるんですか』とか言うんだよ。水上なんか最高に楽しいよね」
「そういう性格なんだろうね。あいつのいいところ。動じずに攻められる気持ちが、意外とそういうところに合うのかな」
~『日刊スポーツ』2022年7月26日配信記事 より
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この性格面、ポジティブ思考があるからこそ、相手バッターに対して臆せず、動じずに勝負を挑むことができている水上。そのポジティブ思考の原点は、山梨・帝京三高時代に専門の講師から学んだメンタルトレーニングにあるという。大学進学後も独学で勉強を続けたというこのメンタル面のベースがあるからこそ、ピンチの場面でも「ここで抑えればヒーローだ」と力に変換することができているのだ。
そして渡辺GMの言葉にもあった通り、強気な性格を武器に打者のインコースにしっかり投げ込むことができるのも水上の魅力。なかでも、代名詞になりつつある球種がシュートだ。そして、この球がプロでも通用すると自信を植え付けてくれたのは、昨季までチームメイトだった松坂大輔の存在だった。
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「ブルペンを見ていただいたんですけど、その時に『シュートどんどん使っていきなよ』と言ってくれました。それから自信を持ってシュートを使うようになって、今がある。あの言葉がなかったら、今の自分のポジションはないと思います」
~『Full-Count』2021年11月3日配信記事 より(水上の言葉)
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現時点で44試合登板4勝2敗1セーブ、23ホールドで防御率1.05と充実のシーズンを過ごす水上。1年目の昨季投球回数は27イニングで、新人王資格(投手は30イニング登板以下)を満たしているだけに、ここにきて新人王候補としても俄然注目を集めている。
ただ、本人は自分のことよりも、他人が喜ぶ姿を見たいタイプ。座右の銘には、他人を喜ばせる力=「他喜力」を掲げている。ならば、より多くの人が喜ぶ瞬間「リーグ優勝」に向けて、ここからの終盤戦、ますます西武躍進のカギを握る存在になるのではないだろうか。