ポーカーフェイスのニューヒーロー出現!
もう「スゴい」のひと言に尽きる。
DeNAが序盤に飛び出した3本の本塁打と投手陣の零封リレーで広島に快勝。本拠地・横浜スタジアムでの連勝を「17」に伸ばし、首位・ヤクルトに4ゲーム差と迫った。
高卒6年目右腕がマウンドとバッターボックスで躍動した。
先発した京山将弥は平均140キロ後半の力のあるストレートを軸に、カーブで緩急を使いながら、スプリットやカットボールを織り交ぜてスコアボードにゼロを並べていく。
3点リードの7回、先頭の坂倉将吾にレフト前に運ばれ、一死後に矢野雅哉に死球を与えたところで降板となったが、6回と1/3を投げて104球、被安打が6に奪三振も6で無失点という見事な投球を見せた。
また、人々を驚かせたのが2回の打席だ。
広島先発・大道温貴が投じた真ん中高め144キロのストレートを振り抜くと、白球はレフトスタンドの最前列へ。
昨年10月17日にプロ5年目で初安打を放ち、通算成績は64打数1安打。昨年の思い出に初安打を挙げて「初だったので嬉しかったです。ボールは飾ってある」と喜び、年末には「目標は打率2割3分」と冗談めかして語っていた男のまさかの一発に、ベンチは沸きに沸いた。
お立ち台に登った京山は「本当に勝てて良かったなと思っています」と第一声。
ピッチングについては「キャッチャーの伊藤光さんのリードだと思います。ミット目がけて腕を振って投げました」と女房役に感謝を述べながら、本塁打には「いつも一発行ってやろうというのは狙っているので、ホームランが出てよかったです」とコメント。
ならばとバッティングについて期待されると、「それはやめてください」と真顔でおどけ、場内の笑いを誘っていた。
指揮官もビックリ
三浦大輔監督も「キャンプの時から、打席に入れば一打者として、打てなくてもその気で打席に入る。打線の1人として相手投手攻略になる」と意識付けはしていたと明かしたが、「まさかホームランとは。びっくりしました」と仰天。「初ホームランで自分も乗っていけたと思うし、ナイスバッティングでした」と称えた。
また、ピッチングについても「今までだったら変化球がボール、ボールになって真っ直ぐが甘くなって打たれる。またそれを気をつけて四球になっていた」という課題を挙げながら、この日は「真っ直ぐに力があり押し込めていましたし、カットボールでカウントを整えられていました。カーブも(伊藤)光が要所要所で挟みながらリードして、うまくコントロールしてくれました」と高評価。「京山も光のサインを信じて腕を振って、自分の良さを出してくれた」と成長ぶりに目を細めた。
勝負どころの7回表には、代わった伊勢大夢と広島の代打・松山竜平の対戦で、三塁エキサイティングシート付近への飛球を宮﨑敏郎がネットとフェンスにぶつかりながら執念のキャッチ。
指揮官は「宮﨑も難しいところで体を張って、あのアウトは非常に大きなアウトだった」とコメント。その後、満塁までピンチが広がったが、代打の長野久義を空振り三振に切って取り、伊勢にはホールド、京山も自責点0と、記録の面でもチーム一丸でサポートする形が作れた。
投げても打ってもポーカーフェイスのヒーロー誕生と、変わらぬチーム一丸の戦いで、怒涛の連勝街道を突き進む三浦ベイスターズ。
指揮官も「やってきたことを変えずに、1個1個積み重ねていくだけ。自分たちができることを継続して、また来週やっていく」と自然体を強調する。
“やれることをやれば勝てる”。勢いと実力を兼ね備えたチームは、一戦必勝で突き進む。
取材・文=萩原孝弘