デビュー以来毎年「9」を超える奪三振率の高さ
勝負の夏場を迎え、足踏み状態が続いているヤクルト。
前半戦の快進撃で作った貯金がまだあるとはいえ、後半戦は7勝12敗で5つの負け越し。2位・DeNAとのゲーム差は「4」となっている。
なかなか投打が噛み合わない戦いが続いているが、先発陣を支えているのが左腕の高橋奎二だ。
今年は8月上旬に新型コロナウイルス感染症の濃厚接触疑いで離脱する期間があったものの、後半戦は2試合に登板して7回無失点と6回2失点の好投。2勝負けなしで防御率は1.38というエース級の働きを見せている。
シーズン通算で見ても8勝2敗で防御率2.61と安定した投球。そんな高橋のウリは、なんといっても「奪三振率」の高さだ。
キャリアで規定投球回をクリアした経験はないものの、デビューした2018年から4年連続で奪三振率9以上をマーク。
現在セ・リーグの規定投球回到達者では大貫晋一(DeNA)の「7.80」が最高値であり、高橋の奪三振率の高さは目を見張るものがある。
また、大混戦となっているセ・リーグの奪三振王争いでは、112個の戸郷翔征(巨人)がリードしているものの、高橋も105個で3位と好位置をキープ。
自身初のタイトル獲得に期待がかかると同時に、この「最多奪三振」のタイトルは球団にとってもっとも遠ざかっている投手タイトルでもある。
最後の獲得は「2000年」
ヤクルトが本拠地とする明治神宮球場は狭く、投手不利な球場として知られる。よって、近年のタイトルホルダーも、村上宗隆や山田哲人を筆頭に野手の方が多い。
それでも、最優秀防御率は石川雅規(2008年)が、最多勝と最高勝率は小川泰弘(2013年)が獲得。リリーフ投手も、最優秀中継ぎは清水昇(2020年・2021年)が、最多セーブはトニー・バーネット(2015年)が直近で獲得しており、それほど投手タイトルから遠ざかっているわけではない。
しかし、最多奪三振のタイトルだけは、石井一久(現・楽天監督)が獲得した2000年までさかのぼる。つまり、21世紀に入ってから誰も獲得していないということだ。
近年のヤクルトの先発陣を見ても、石川を筆頭に打たせて取る投球スタイルの投手が多かった。
長年ローテーションを守っている小川にしても、イニング数以上の三振を奪ったことはこれまでにない。三振を多く奪う、いわゆる「本格派」という投手はほぼいなかったといってもいいだろう。
そのような流れのなか、高橋という本格派がようやく台頭してきた。21世紀に入ってから球団初となる、最多奪三振のタイトルホルダーへの期待も大きい。
偶然にも高橋は、最後に奪三振のタイトルを獲得した石井と同じ「速球がウリの高卒左腕」でもある。
追われる立場として、チームがこれから厳しい戦いを強いられることは間違いない。
DeNAの追撃を振り払い、2年連続のリーグ優勝を決めるためには、ここ一番でしっかりと勝ち星を掴み取ることが求められる。
高橋が自分の力を出し切り、チームを優勝へと導く活躍ができた時、おのずと最多奪三振のタイトルもついてくるだろう。
文=BASEBALLKING編集部