自信を取り戻したツーシーム
今から1カ月前の8月26日の楽天との二軍戦。中村稔弥が0-1の5回二死三塁で内田靖人を空振り三振に奪ったツーシームは真ん中低めに落ちて素晴らしかった。
8月31日に行ったオンライン取材でそのことを中村に伝えると、「多分、ツーシームも1年目の時の方が落ちていたんですよ。空振りも取れていて」とポツリ。納得のいくツーシームではなかったのか、失礼なことを聞いてしまったなと思った直後、中村は「3年目、今年とかはあまり落ちなくて試行錯誤していました。この前の楽天戦(8月26日)のときの内田さんとかに投げたボールが、1年目のときの右バッターの空振りの仕方でした」と悩んでいた左腕に光をもたらす1球となった。
その裏には、ある捕手が存在する。中村は「田村さんに試合前のブルペンで受けてもらっているときに、『ツーシームの球速が速くなっているよな』と言われて、ちょっと握りを深くというか、縫い目の外にして持ってああいう落ち方をしました。タムさんの一言がなかったら今まで通り投げていたのかなと思います」と、きっかけを与えてくれた田村龍弘に感謝した。
同日のオンライン取材で中村は「(楽天戦)1回しか投げていないのでわからないですけど、感覚は良かったです」と、あの楽天二軍戦で投げたツーシームを継続して投げられるかが課題だった。
あれから1カ月。9月28日に一軍昇格を果たすと、同日の日本ハム戦に登板。11-3と大量リードの8回にマウンドにあがった中村は、一死走者なしから野村佑希を131キロツーシームで空振り三振、続く杉谷拳士を3ボール2ストライクからの6球目、ストライクゾーンからボールゾーンに落ちる132キロのツーシームで空振り三振を奪った。
一軍で結果を残すために
中村は一軍で結果を残すために「空振りを取れる変化球とカウントが取れる変化球をしっかり2種類いつでも投げられるというのが、必要だなと思います。まっすぐは一軍のバッターはファウルにできるのに、空振りはそんなに取れない。最後粘ってファウルを打たれるので、決められる変化球とカウントをしっかり取れる変化球の2種類は必要だと思います」と自己分析していたなかで、28日の日本ハム戦では決め球のツーシームで空振り三振を2つ奪った。
28日の日本ハム戦ではあまり投げていなかったように思うが、カウント球として「速いカーブ、スライダーとかでしっかり(カウントを)とっていけるようになっていかないと、と思います」。昨年あたりから投げている縦に落ちるスライダーは中村いわく「速いカーブ、パワーカーブですね。ハーマンに教えてもらって、ハーマンが投げていたのでそれを投げています」と、カウント球、2ストライクと追い込んでからでも投げたい球種として考えている。
中村は新人時代の19年オフからストレートの強さを求め、試行錯誤しながら強いストレートを投げられるようになり、課題だった変化球もツーシームの落ちが戻り空振りが取れるようになった。一軍の公式戦は残り2試合。ファームで取り組んできた成果を出し、来季に繋がるきっかけにしたい。
取材・文=岩下雄太