話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、混戦パ・リーグを象徴する試合となった西武対ソフトバンクの最終戦と、西武が払拭した “負の連鎖”にまつわるエピソードを紹介する。
オリックスの劇的すぎる最終戦逆転優勝で決着となった今年(2022年)のパ・リーグペナントレース。この歴史的混戦が物語るように、上位3チームに大きな差はないだろう。となれば、「チームの勢い」もクライマックスシリーズ(CS)の展望を探る上では重要な要素になるはず。だからこそ注目したいのは、3位からの下克上を目指す埼玉西武ライオンズだ。
そもそもオリックスの逆転優勝が実現できた要因の1つは、優勝が決まった前日(10月1日)、優勝マジック「1」で引き分けでも優勝が決まるソフトバンク相手に、西武が延長戦の末に逆転サヨナラ勝利を収めた一戦が大きかった。サヨナラ2ランを放ったのは西武の4番・山川穂高。通算218本塁打を誇る山川にとって、意外にもこれがプロ初のサヨナラアーチだった。
そしてこの山川の一撃は、ソフトバンクの優勝を阻止しただけでなく、西武にとってある「負の連鎖」を断ち切ったことを意味する大きな1勝だった。
西武といえば2010年代、いつも「優勝見届け球団」となり、その本拠地である西武ドーム(現・ベルーナドーム)が何度も胴上げ会場となってきた屈辱の歴史を忘れるわけにはいかない。2011、2013、2016、2017年と、西武ドームで4度も繰り返された「敵チームの胴上げ」。その劇的シーンを改めて振り返ってみよう(所属はすべて当時)。
■2011年10月1日@西武ドーム
優勝マジックを「1」としたソフトバンクは西武ドームで西武と対戦。試合はソフトバンクの岩嵜翔、西武・岸孝之の両先発が好投を演じ、5回まで0対0。迎えた6回表、ソフトバンクの攻撃。ここまで好投を見せていた岸は、ソフトバンクの5番・長谷川勇也に二塁打を許すと、7番・福田秀平、8番・明石健志の下位打線にも連打を浴び、2点を献上。7回にも1点を追加された西武は、岩嵜のあとをつないだファルケンボーグ、馬原孝浩のホークス救援陣を打ち崩せずに完封負け。ソフトバンクは前年に続いてのリーグ連覇を成し遂げたのだった。
■2013年9月26日@西武ドーム
優勝へのマジックを「2」としていた楽天は1回表に1点を先制。しかし、胴上げを阻止したい西武は5番・秋山翔吾の本塁打などで逆転。6回までに3対1とリードを奪う。しかし7回表、満塁のピンチを迎えると、楽天の4番ジョーンズに走者一掃のタイムリー二塁打を打たれ、4対3と楽天が逆転。別球場で2位のロッテが敗れ、勝てば優勝が決まる楽天は、このシーズン24連勝を飾ることになるエース田中将大をマウンドへ。西武も意地を見せ、田中からヒットと四球でチャンスをつくるも、3番・栗山巧、4番・浅村栄斗が連続三振でゲームセット。ウイニングボールは嶋基宏が掴み、楽天が球団創設9年目にして初のリーグ優勝を達成した。
■2016年9月28日@西武プリンスドーム
優勝マジックを「1」としていた日本ハム。この大一番にマウンドを託したのは大谷翔平。優勝を阻みたい西武のマウンドは菊池雄星。花巻東の先輩後輩対決となったこの試合は、菊池が先に日本ハムの6番レアードにソロホームランを許し、西武が1点を追う形に。この年、リーグ最多のチーム本塁打数を誇った西武強力打線だったが、本領発揮の大谷の前ではなすすべなし。結果的に出塁できたのは4番・森友哉の意地のヒットと四球だけ。大谷は125球で被安打1、15奪三振の完封勝利。西武はまたも本拠地で相手チームの胴上げを許す形となった。
■2017年9月16日@メットライフドーム
優勝マジックを「1」としていたソフトバンク。2年連続での胴上げ見届けは阻止したい西武は2回裏、4番・山川穂高が先制ホームラン。しかし4回表、ソフトバンクの4番・柳田悠岐に逆転2ランを許すと、5回にはヒット5本で4点を献上。7回にもデスパイネにダメ押し弾を打たれた西武は2年連続で本拠地での胴上げを許す結果に。勝ったソフトバンクは2年ぶり18度目のパ・リーグ優勝を果たしたのだった。
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こうして振り返ると、田中将大や大谷翔平を筆頭に、パ・リーグを代表する顔ぶれたちが西武ドームで劇的勝利の末、歓喜の瞬間を迎えてきたことがわかる。
この「本拠地での胴上げ見届け」以外にも、2009年は札幌ドームで日本ハムの優勝を見届け、2012年は西武ドームで千葉ロッテに敗れ、試合のなかった日本ハムの優勝を許す形に。2015年はソフトバンクの本拠地・ヤフオクドームで敗れ、ソフトバンクのリーグ連覇を許し……と、この15年近くは西武がいつも優勝見届け人だった。
この「シーズン終盤での勝負弱さ」も起因してか、2008年の日本一以降、西武は8回のAクラス(1位2回、2位4回、3位2回)を経験しても、いつもCSで苦渋を舐め、日本シリーズに進出できなかった。
そんな「負の連鎖」をついに断ち切った今回、その因縁の相手とも言えるソフトバンクと対戦するCSファーストステージでどんな戦いを見せてくれるのか。8日開幕の決戦もまた、最後まで読めない展開を期待したい。
オリックスの劇的すぎる最終戦逆転優勝で決着となった今年(2022年)のパ・リーグペナントレース。この歴史的混戦が物語るように、上位3チームに大きな差はないだろう。となれば、「チームの勢い」もクライマックスシリーズ(CS)の展望を探る上では重要な要素になるはず。だからこそ注目したいのは、3位からの下克上を目指す埼玉西武ライオンズだ。
そもそもオリックスの逆転優勝が実現できた要因の1つは、優勝が決まった前日(10月1日)、優勝マジック「1」で引き分けでも優勝が決まるソフトバンク相手に、西武が延長戦の末に逆転サヨナラ勝利を収めた一戦が大きかった。サヨナラ2ランを放ったのは西武の4番・山川穂高。通算218本塁打を誇る山川にとって、意外にもこれがプロ初のサヨナラアーチだった。
『僕たちは順位(3位)が決まっていますが、それでもグラウンドに立つ以上は全力でやる。勝てて良かったです』
~『西日本スポーツ』2022年10月1日配信記事 より
そしてこの山川の一撃は、ソフトバンクの優勝を阻止しただけでなく、西武にとってある「負の連鎖」を断ち切ったことを意味する大きな1勝だった。
西武といえば2010年代、いつも「優勝見届け球団」となり、その本拠地である西武ドーム(現・ベルーナドーム)が何度も胴上げ会場となってきた屈辱の歴史を忘れるわけにはいかない。2011、2013、2016、2017年と、西武ドームで4度も繰り返された「敵チームの胴上げ」。その劇的シーンを改めて振り返ってみよう(所属はすべて当時)。
■2011年10月1日@西武ドーム
優勝マジックを「1」としたソフトバンクは西武ドームで西武と対戦。試合はソフトバンクの岩嵜翔、西武・岸孝之の両先発が好投を演じ、5回まで0対0。迎えた6回表、ソフトバンクの攻撃。ここまで好投を見せていた岸は、ソフトバンクの5番・長谷川勇也に二塁打を許すと、7番・福田秀平、8番・明石健志の下位打線にも連打を浴び、2点を献上。7回にも1点を追加された西武は、岩嵜のあとをつないだファルケンボーグ、馬原孝浩のホークス救援陣を打ち崩せずに完封負け。ソフトバンクは前年に続いてのリーグ連覇を成し遂げたのだった。
■2013年9月26日@西武ドーム
優勝へのマジックを「2」としていた楽天は1回表に1点を先制。しかし、胴上げを阻止したい西武は5番・秋山翔吾の本塁打などで逆転。6回までに3対1とリードを奪う。しかし7回表、満塁のピンチを迎えると、楽天の4番ジョーンズに走者一掃のタイムリー二塁打を打たれ、4対3と楽天が逆転。別球場で2位のロッテが敗れ、勝てば優勝が決まる楽天は、このシーズン24連勝を飾ることになるエース田中将大をマウンドへ。西武も意地を見せ、田中からヒットと四球でチャンスをつくるも、3番・栗山巧、4番・浅村栄斗が連続三振でゲームセット。ウイニングボールは嶋基宏が掴み、楽天が球団創設9年目にして初のリーグ優勝を達成した。
■2016年9月28日@西武プリンスドーム
優勝マジックを「1」としていた日本ハム。この大一番にマウンドを託したのは大谷翔平。優勝を阻みたい西武のマウンドは菊池雄星。花巻東の先輩後輩対決となったこの試合は、菊池が先に日本ハムの6番レアードにソロホームランを許し、西武が1点を追う形に。この年、リーグ最多のチーム本塁打数を誇った西武強力打線だったが、本領発揮の大谷の前ではなすすべなし。結果的に出塁できたのは4番・森友哉の意地のヒットと四球だけ。大谷は125球で被安打1、15奪三振の完封勝利。西武はまたも本拠地で相手チームの胴上げを許す形となった。
■2017年9月16日@メットライフドーム
優勝マジックを「1」としていたソフトバンク。2年連続での胴上げ見届けは阻止したい西武は2回裏、4番・山川穂高が先制ホームラン。しかし4回表、ソフトバンクの4番・柳田悠岐に逆転2ランを許すと、5回にはヒット5本で4点を献上。7回にもデスパイネにダメ押し弾を打たれた西武は2年連続で本拠地での胴上げを許す結果に。勝ったソフトバンクは2年ぶり18度目のパ・リーグ優勝を果たしたのだった。
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こうして振り返ると、田中将大や大谷翔平を筆頭に、パ・リーグを代表する顔ぶれたちが西武ドームで劇的勝利の末、歓喜の瞬間を迎えてきたことがわかる。
この「本拠地での胴上げ見届け」以外にも、2009年は札幌ドームで日本ハムの優勝を見届け、2012年は西武ドームで千葉ロッテに敗れ、試合のなかった日本ハムの優勝を許す形に。2015年はソフトバンクの本拠地・ヤフオクドームで敗れ、ソフトバンクのリーグ連覇を許し……と、この15年近くは西武がいつも優勝見届け人だった。
この「シーズン終盤での勝負弱さ」も起因してか、2008年の日本一以降、西武は8回のAクラス(1位2回、2位4回、3位2回)を経験しても、いつもCSで苦渋を舐め、日本シリーズに進出できなかった。
そんな「負の連鎖」をついに断ち切った今回、その因縁の相手とも言えるソフトバンクと対戦するCSファーストステージでどんな戦いを見せてくれるのか。8日開幕の決戦もまた、最後まで読めない展開を期待したい。