全員で守り抜いた“1点”
虎からもぎ取った、虎の子の1点。
崖っぷちのDeNAが阪神を1-0で下し、ファーストステージの対戦成績をタイに戻した。
負ければ即終戦。まさに崖っぷちの状況でマウンドに登った大貫晋一は、1回に二死から近本光司に安打を許したものの、桑原将志が打球を弾く間に二塁を狙った近本を刺してピンチ脱出。結果的に3人斬りのスタートを切る。
すると、その後は6回まで15人連続でアウトに仕留める“準完全”の快投を披露。打線も5回に大和が適時打を放って先制点を挙げ、接戦のまま終盤戦を迎えた。
7回も続投した大貫は、先頭の中野拓夢を不運な形の内野安打で出してしまい、この試合初となる走者を背負った投球に。盗塁と犠打で一死三塁とされ、ここで三浦監督は継投を決断する。
一打同点のピンチでマウンドに登ったのは伊勢大夢。当たっている近本を1球で三邪飛に仕留めてガッツポーズを見せると、4番の大山悠輔も2球で中飛に斬る見事な火消し。窮地をわずか3球で乗り切った。
伊勢はそのまま8回も続投して3人斬り。9回も山﨑康晃がしっかりと締め、3投手のリレーで阪神打線をシャットアウト。1-0で逃げ切り、この対戦を1勝1敗のタイに戻した。
「スタンドと一緒になって戦います」
先発の大貫は6回と1/3を97球、被安打2、無四球で10奪三振の快投。「満員のスタジアムでしたし、最初は緊張したんですが、投げているうちにだんだん楽しくなっていった。ファンの声援をたくさんいただいて、良いマウンドでした」と笑顔で振り返る。
前日の第1戦で中野と近本の2人に計7安打とかき回されたこともあって、「ゲームを見ていても、あの2人が起点となった攻撃が目立った。初回は緊張もすると思ったので、ひとつストライクを取ること、ひとつアウトを取ることに集中しようと、ブルペンで(伊藤)光さんとも話していた」という考えを明かしつつ、「長いイニングを投げることは頭になかった。それが良かったと思う」と胸を張った。
見事なリリーフを見せた伊勢も、「一死三塁。1点は仕方ない。でも2点目は絶対にダメ。ここでもし取られた場合にもズルズルいかないように、最低のラインを持って準備をしていました」と、登板時の心境についてコメント。
つづけて「相手も当然勝ちたい気持ちがいつも以上に強いので、その分あっちが焦ってくれた。ただ冷静に投げただけですが、抑えられたのかなと思います」とし、相手の打ち気をうまく利用した“3球火消し”だったと語る。
ガッツポーズについては「あそこでクールに帰ってきても、ちょっと“スカしてる”って言われるなっていう思いもありますし……」と笑わせながら、「打線が苦しんでいるなと2日間ベンチで見ていたので、どうにか盛り上げて、まだまだ行くぞと」とチームを勢いづける意味合いもあったのだという。
緊張感漂うCSという舞台にも「マウンドに上がればアドレナリンが出てくる。そっちのほうが投げやすい。ボールに魂を込めて投げられている感じはしています」と、プレッシャーも大歓迎。
「今日なんて負けたら終わりですし、相手のリリーバーもとても良いピッチャーがいる。1点勝負、追いつかれたら危ない状況なので、昨日とは違った緊迫感がありました」と重圧も力に変えながら、あすに向けても「今日と一緒で負けたら終わりですが、僕らはそれを経験し、相手は経験していない。うちの方が絶対に有利なので、勢いに乗って初回からみんなで勝ちに向かって行けたら」と再び闘志を燃やした。
三浦監督も「投手も守備も、全員が守り切ったなと思います」とまずは安堵のコメント。
つづけて「昨日もそうですが、今日も雨の中でたくさんの方が駆け付けてくれて、球場の雰囲気を作ってくれている。その応援、期待に応えられるように。スタンドと一緒になって戦います」と力強く決意を表明した。
青い炎が宿ったその眼には、“日本一”しか見えていない。
取材・文=萩原孝弘