前半戦は抜群の安定感
「去年も1年間投げさせてもらいましたけど、それを踏まえても1球の大事さ、1球で勝負が決まる重要性、難しさを学べたような年だったと思います」。
ロッテの小島和哉は背番号を『43』から『14』に変更した今季、2年連続で規定投球回に到達し、防御率は昨季の3.76から3.14に良化したものの、3勝11敗と黒星が先行した。
小島は先発ローテーションに定着した20年が7月終了時点(新型コロナウイルス感染拡大により開幕が6月にずれ込む)の防御率が4.73、昨季が4月終了時点の防御率が4.03と、開幕直後の不安定さが目立った。
過去2年の反省を踏まえ今季に向けて小島は「去年、一昨年は長いシーズンなので、開幕に100%持っていくのはどうかなと思ったんですけど、それでも出だしが、あまりよくなかった。今年に関しては早めに自分のなかで仕上げて、自主トレ期間も含めて早めに調整してきていました」と例年に比べて調整を早めた今季は4月終了時点の防御率が2.77、4試合中3試合でクオリティスタート(6回以上・3自責点以内)を達成した。
小島は「入りは自分のなかでは良かったと思っていたんですけど、開幕のカードで投げる登板日が決まっていたが雨で流れて、1戦目投げてピッチャーライナーを2発食らった。登板がちょっとズレてというのもあり、誰のせいでもないですし、自分で意識したら変えられるかといったらそうでもない部分なので、そこは仕方がなかったかなと思いますが、全体を通したら前半は結構いい投球ができて、去年、一昨年よりもいい入りができていたんじゃないかなと思います」と自己評価。
特に前半戦は小島が好投しながらも打線の援護に恵まれず、なかなか白星がつかなかった。それでも小島はチームのために腕を振り続け、今季10試合目の先発となった6月10日のDeNA戦で今季初白星。ちなみに6月2日のヤクルト戦までの9試合全て5イニング以上を投げ、QSも6回クリアする安定ぶり。今季初勝利を手にした6月10日のDeNA戦も6回を1失点に抑えた。前半戦は防御率2.47で折り返すも、1勝7敗と勝ち星に恵まれなかった。
後半戦はやや苦戦
後半戦に入ってからも、安定した投球は続けていたが、後半戦最初の登板となった7月30日のオリックス戦、1-3の5回に3点を奪い勝ち越してもらった直後の6回に、安打と四球で一死一、三塁のピンチを招いたところで降板し、後を受けて登板した廣畑敦也が紅林弘太郎に同点犠飛を浴びた。特に後半戦は得点をとってもらった後に、失点する印象があった。
「僕自身も調べて点を取られた回数は他の投手と比べても、回数的にはそこまで変わっていなくて、それもイメージなんだろうなと。ただ勝負所で踏ん張れないという印象が僕の中で思っていて、これも自分の精神的な部分の弱さ」と話したように、オールスター明け攻撃陣が得点した直後に失点したイニングは3回しかない。
「勝ち星が全然積み重ならないぶん、ここだというときに絶対に1点もやってはいけないという思いがすごく強かったというか、それがどちらかといったら僕みたいなタイプは力みに繋がったのかもしれない」。
「球数が多くなってしまったり際どいところに投げて、いいカウントを作れなくて悪循環に陥ってしまったのかなと思うので、精神的な弱さも出てしまったのかなと思います」と反省した。
引き出しが増える
今季の小島は、オープン戦では昨年試すもシーズン中に投げなかったカーブをオープン戦だけでなく公式戦で投げたり、7月1日の楽天戦ではこれまで投げていなかった縦に落ちるスライダーで島内宏明を空振り三振に仕留め、チェンジアップも右打者だけでなく左打者にも投げる場面があるなど、投げる度に投球の幅が広がっている印象を受けた。
「チームごとにすごい対策というか、“この球は打てなくてもいい”、“この球は絶対に食らいつく”という張り方をする選手が増えている印象がありました」。
「そうなったときに1パターン、2パターンだと厳しいというか、2パターン、3パターンで3、4打席抑えたり、今年は楽天戦で7試合投げている。単純に4打席対戦したら30回くらい対戦するので、1、2パターンじゃ投球パターンが少ない。50%、50%の張り方で待たれてしまう」。
「ちょっと幅を広げる意味でも、今年に関してはいろんなキャッチャーと組ませてもらって、(佐藤)都志也と組んだら『小島さんこれちょっと入れていきましょうよ』とか、都志也からも意見をいってもらいましたし、僕からも「こういうのを試してみようよ」というのができました。都志也だけでなく、松川と組んだら新しい部分を引っ張り出してくれたり、たくさんのキャッチャーと組めたのでいろんな部分が見つかった。そこは発見になりました」。
多くの捕手陣とバッテリーを組むことによってまた新しい引き出しが増えた。
修正能力の高さに期待
今季は勝ち星に恵まれず苦しいシーズンになったが、2年連続で規定投球回に到達したのは立派。それとともに年々、小島に求めるレベルが高くなっているのも事実だ。来季から吉井理人監督が就任する。
「井口さんもそうですが、吉井さんが我慢して僕を使ってくださったので今があると思います。僕が胴上げとか大きいことをいうのはおこがましいですけど、今年の悔しさを晴らしてというか来年も規定、そして2桁勝利、防御率も2点台というところをクリアして成長したところをしっかり見せられるように頑張りたいと思います」。
試合で出た課題を分析し、それを修正していく能力が高い。今季も課題にしていたシーズン序盤の不安定さをなくすため自主トレから早めに調整するなど工夫を凝らし、前半戦は安定した投球を見せた。今季出た課題点を秋季練習、その先のシーズンオフの自主トレで克服し、来季もう一回り成長した姿を見せてくれるだろう。そして来季、小島が規定投球回到達、2桁勝利、防御率2点台をクリアしたとき、歓喜の秋を迎える可能性がグッと高まるはずだ。
取材・文=岩下雄太