開幕直後に右肘手術
ロッテの岩下大輝は開幕直後の3月28日に『右肘関節クリーニング手術』を受け、8月25日の西武戦で今季初登板を果たすと、14試合全てリリーフで投げ、防御率0.55の成績を残した。
岩下は新人時代の15年11月に右肘のトミー・ジョン手術、3年目の17年11月に椎間板ヘルニアの手術を受けた経験がある。当時は期待の若手投手の一人だったが、今回は一軍の戦力として活躍が期待されたなかでの手術。早く戻らなければいけないという焦りなどはあったのだろうかーー。
「焦りはあんまりなかったです。シーズン最初から投げたかったですけど、リハビリ経験がないわけではなかったので、ちょっと無理してもというところはありました」。
「復帰したらどっちみち無理しなきゃいけない場面が出てくることもわかっていたというか、ある程度一軍で投げさせてもらっていたので、そういうことがあることを知っている。リハビリ期間中だけは、焦らず治すことメインで考えていました」。
トミー・ジョン手術から復帰する過程において、当時現役だったサブローさんのフリー打撃に登板し、「ピッチャーとしての特徴と、バッターからの意見を教えて頂きました」と金言をもらっていたが、今回は新たな気づきや学びはあったのだろうかーー。
「あの頃は一軍経験がなく、練習の過程でサブローさんと対戦させてもらう形でいろいろ勉強させてもらいましたけど、今回は正直、去年まで一軍で投げさせてもらっていたので、打者の反応を見るのは大事ですが、まずは自分の感覚をメインにリハビリをしていました。リハビリ期間が長かったので、また1度最初から投球を見つめ直す時間が結構あったのかなと思います」。
復帰後のストレート
リハビリ期間を経て、8月7日のDeNAとの二軍戦で実戦復帰を果たすと、ファームで3試合に登板して、8月24日に今季初昇格。岩下は一軍に定着した19年から先発を務めてきたが、一軍昇格後、任された役割はリリーフ。
今季初登板となった8月25日の西武戦では0-2の6回から登板し2回を無失点に抑えた。1イニング目の6回二死走者なしで、オグレディに2ボール0ストライクから3球目の151キロの高めストレート空振り、4球目の151キロ高めストレート空振り、5球目の高め150キロストレートで空振り三振を奪ったストレートは素晴らしかった。復帰後はストレートに力強さがあり、ストレートで空振りも奪えていた印象だ。
「復帰して1番最初の試合だったので肘の状態もよかったですし、力押しできた試合だった」と話しながらも、「球速自体は140中盤、後半、150出ても前半、正直去年の方が平均球速は速かったです」とのこと。
「今年に関しては中(リリーフ)からいくということも含めて、タイミングを外すことだったり、間合い、長くもったり、すぐ投げたりというところで球というよりタイミングをうまく外してバッターと勝負できたかなと。そこで空振りを奪えたんじゃないかなと思います」。
ストレートともに武器にするフォークは、ストライクゾーンでカウントをとるフォーク、空振りを奪うストライクゾーンからボールゾーンに落ちるフォークをうまく投げ分けた。9月25日のソフトバンク戦で野村勇から空振り三振を仕留めた139キロのフォークはストライクゾーンからボールゾーンへ落ちていく良い球だった。
「先発をやっているときからまっすぐ、フォークのピッチャー。フォークでストライクをとれないとカウントを整えられないというか、他の変化球を投げるタイプのピッチャーじゃなかったので、投げわけじゃないですけど、ストライクを取れるようなフォークと、空振りを狙いにいく時のフォークをある程度投げわけというか、器用なことじゃないですけど、やらないとな、と思って投げています」。
復帰後好成績も本人は…
一軍復帰後、14試合・16回1/3を投げ自責点はわずかに1と素晴らしい活躍を見せた。球種自体はストレート、フォークと当時と変わらないが、一軍デビューしたばかりの18年にリリーフを務めた時に比べ、気負いがなくなり、自分の持ち味をしっかりと発揮できた印象だ。
「球の強さとか調子自体は去年の方がよかったと思います。今年一軍で投げたなかで納得いく試合が1試合、2試合くらいだった。正直あまり調子が上がりきらずにやっていました」。
「去年120イニング投げさせてもらっていたので、似たような状況とか、なんども対戦している打者と対戦させてもらったことが多かった。うまくいえば経験だと思うんですけど、情報を整理しながら投げていたのかなと思います」。
本人が調子があまり良くなかったと話す中で、一軍復帰後、しっかりと結果を残したのは見事。来季こそ、1年間怪我なくシーズン通して投げて欲しいところ。
「まずは1年間投げないといけないと思います。先発をやるにしても、中継ぎをやるにしても、どっちも苦しい時期だったり、調子が良いい時だったりあるというのは今までの経験上わかっている。今年よりはうまくシーズンを回せるように、今までよりうまくできるようにやらないとなと思います」。吉井理人新監督のもと、1年間一軍で投げ抜くことを誓った。
取材・文=岩下雄太