愛弟子が大舞台で躍動
『SMBC日本シリーズ2022』が30日に決着。オリックスが3戦未勝利からの4連勝で、一気に頂点まで駆け上がった。
この瞬間、オリックス・能見篤史の今季全日程が終了。この日をもって現役生活に幕を下ろした。
ポストシーズンでの登板はなかったが、日本シリーズでも40人枠には名を連ねており、第5戦ではベンチにも入っていた。
戦いを終え、能見は「良かったですね。僕も日本一は初めて。みんな頑張ってくれて非常に良かったです」と喜びのコメント。
今年の日本シリーズは強力な中継ぎ陣が大きな注目を集めたが、「中継ぎもそうですけど、先発が試合を作らないと中継ぎにも回せない。シーズンから頑張ってきた投手たちが、まぁ上手くいかないこともありましたけど、持ち味はしっかりと出してくれた。本当に全員で頑張った結果だと思う」と激闘を振り返った。
第7戦で好投を見せた先発の宮城大弥については、「きょうは良かったですね」と高評価。
プロ入り後初の中4日での先発となったが、「なかなかシーズン中はああいうことができない。本人も割り切っていたと思いますし、できることをするというところと、臆せずしっかりと向かって行くというところはすごく出ていた」と良かった点を強調。
そのうえで「もともと繊細というか、ある程度怖さも知っている投手。向かって行けば打たれることもありますけど、野手も見ているので、やっぱり攻める投球というのは野手にも伝わる。この辺はこれからも大事にしてほしい」とアドバイスを送った。
さらに、引退会見で「もっとやれる選手」と名前を挙げた山﨑福也も2試合に先発して9イニングを無失点。優秀選手賞に選ばれる活躍を見せた。
山﨑についても「もともと甲子園でもあれだけ安打を打ったりとか、大舞台に本当に強い。そういうものを持っている投手なんだなと改めて思った。シーズン中は大したことないんですけど(笑)」と刺しながら、「しっかりと持ち味を出してくれた。チームとしても相当助かったと思う」と愛弟子の奮闘を称えた。
「由伸のケガで泣いた」
エースの山本由伸からは「能見さんが泣いている姿を見たことがないので、(日本一になって)泣かせたい」と言われていたが、これについては「由伸のケガで僕が泣きました」と返して笑いを誘う。
「シーズン通してずっと頑張ってくれているので、たまには……ゆっくり見るのもアリかなと思います」と笑いながら、「穴はなかなか埋まらないんですけど、由伸に頼り切っているというのはみんなが思っているので、何とかしようというのは見えた」とし、大黒柱のアクシデントが投手陣の気持ちをよりひとつにしたという。
自身の登板はなかったが、「監督は本気で投げさせようとしていたのですごい怖かった。どこで言われるんかなって」と常に緊張感があったことを明かす。
思えば、シーズン最後の登板も9月30日のロッテ戦。逆転優勝に向けてひとつも落とせない中、2-2の同点で迎えた8回に山本由伸の後を受けた。
「引退試合もとんでもないところで行かされたので(笑)。たぶん村上宗隆選手のところで行かせようと考えていたと思います」と、冗談まじりに話していた。
今季はコーチ兼任だったが、今後の去就については、「まだまだこれから。それは後日決まると思う」と明言を避けた。
チームの連覇を支え、日本一に登り詰める原動力となった投手陣に能見が与えた影響は大きい。
今後は“チルドレン”たちが、能見の教えを財産として、今後の野球人生で躍動してくれるはずだ。
取材・文=どら増田