◆ まさかの“指名漏れ”
今年は10月20日に開催されたプロ野球のドラフト会議。
育成ドラフトを含めて126名が指名を受け、夢へのスタートラインに立った。
その一方で、指名が有力視されていながら、見送られた選手も少なくない。
ここでは、今年のドラフトでは縁がなかった有望選手にフォーカス。前回の高校生編に続き、今回は大学生編だ。
◆ 日の丸を背負った逸材が…
筆者が“指名漏れ”となった選手で驚いたのは、野口泰司(名城大・捕手)と山田健太(立教大・二塁手)の2人だ。
ともに大学日本代表で活躍を見せ、上位指名の可能性も囁かれていた有望株。まさかの“指名漏れ”に驚いた関係者やファンも多かった。
野口は今年の大学球界を代表する強打のキャッチャー。投手のレベルの高い愛知大学野球で打率3割を3度記録し、全日本大学野球選手権でも3年時に7割以上、4年時には5割という打率を残した。
ドラフトで名前を呼ばれた青山美夏人(亜細亜大→西武4位)からホームランも放っており、構えやスイングは少し外国人選手のようだが、パワーだけでなく対応力の高さは申し分ない。
山田は東京六大学野球を代表する右の強打者で、1年春から一塁や二塁で出場。大学日本代表ではキャプテンを務めている。巧みなリストワークで広角に打ち分ける上手さがあり、芯でとらえた時の飛距離も十分だ。
野口・山田ともに、プロ側からは守備面が課題と見られ、指名が見送られたと考えられる。とはいえ、これだけ打てる右打者はやはり貴重だ。社会人野球で結果を残して、2年後のドラフト会議で注目を集める可能性は十分ある。
◆ 社会人球界での飛躍に期待
捕手のなかで、野口とともに注目を集めていた選手が石伊雄太(近大工学部)だ。
2.0秒を切れば強肩と言われるイニング間のセカンド送球ではコンスタントに1.8秒台をマーク。素晴らしいスローイングで、昨年の秋には大学日本代表候補に選ばれた。
バッティングは、高いレベルの投手に対応できるかが課題として残る。タイプとしては小林誠司(巨人)のような捕手になれるだけの選手であり、社会人野球で打撃を伸ばしつつ、守備面で圧倒的な存在感を見せてもらいたい。
▼ 主な“指名漏れ”選手【野手】
・斉藤大輝(法政大/二塁手)
・下山悠介(慶応大/三塁手)
・小中健蔵(西南学院大/三塁手)
・道原 慧(立教大/外野手)
・松下豪佑(武蔵大/外野手)
◆ 投手の注目選手は?
▼ 主な“指名漏れ”選手【投手】
・高坂 綾(千葉経済大)
・宮 海土(立教大)
・杉本幸基(日本大)
・羽田野温生(東洋大)
・神野竜速(神奈川大)
・日渡柊太(中部大)
・漢人友也(中京大)
・久保玲司(近畿大)
・大石晨慈(近畿大)
・西 隼人(関西学院大)
・伊原陵人(大阪商業大)
・山口直哉(京都産業大)
羽田野はスケールという観点からみると、上記の選手のなかでNo.1といえる。
汎愛高校時代から大阪で評判だった大型右腕で、大学進学後も順調にスケールアップに成功。昨年秋のリーグ戦では抑えに定着し、9試合に登板して防御率0.00という見事な成績を残した。
ストレートはコンスタントに150キロを超え、鋭く落ちるフォークもブレーキ十分だ。最終学年は故障に悩まされ、秋のリーグ戦は登板なしに終わったとはいえ。これだけのスピードボールを投げられる大型投手は貴重だ。
一方で、サウスポーの伊原は身長が170センチで、スピードも140キロ台前半が多いものの、数字以上に打者の手元でボールの勢いがある。
加えて、コーナーに投げ分けるコントロールのレベルも高い。今後もう少し球威が出てくれば、貴重な本格派左腕として、プロの注目を集めることになりそうだ。
今年のドラフト会議でも、楽天から2位指名を受けた小孫竜二(鷺宮製作所)は高校・大学・社会人2年目でも指名がなく、“4度目の正直”でプロ入りを果たしている。
このように、年齢を重ねてどんどんスケールアップしていく例もある。今回の記事で取り上げた選手が、2~3年後にプロから高い評価を得て、ドラフト会議で名前が呼ばれることを期待したい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所