奪三振率10.13は先発投手でチームトップの数字
11月6日、東京ドームで行われた侍ジャパンと巨人の強化試合。オーストラリアとの2連戦を控える日本代表は、村上宗隆に山田哲人、塩見泰隆といったヤクルト勢の一発攻勢で逆転勝ち。さすがの力を見せた。
一方、巨人の投手陣は計8人が登板。そのうち5人が失点を喫するなど、球界を代表する打者に挑んだ中で様々な課題が出た。その中で輝きを放ったのが、先発した高卒3年目左腕の井上温大である。
21歳の若き左腕は、3回を投げて無失点の好投。最速150キロをマークするなど、上々の投球を披露した。
許した安打も牧秀悟(DeNA)に許した1本だけ。イニング数を上回る4つの三振を奪うなど、来季に向けて期待の膨らむ登板となったのは間違いない。
今季一軍デビューを果たし、7試合目の登板となった9月23日の中日戦でプロ初勝利を掴んだ。
シーズン通算では7試合(うち先発は3試合)で1勝1敗、防御率は6.00。字面だけ見れば苦しんだ印象を受けるかもしれないが、24イニングで27個の三振を奪っている点は見逃せないポイントと言えるだろう。
奪三振率(K/9)を見ると10.13で、チーム内の20回以上を投げた投手のなかではトップという好成績。投球回数が大きく違うものの、最多奪三振のタイトルを獲得したチームメイトの戸郷翔征は8.07(154奪三振/171.2回)であり、それを大きく上回っている。
左腕不足に終止符を
今季の巨人は12球団ワーストのチーム防御率3.69が表すように、投手陣のやりくりに苦しんだ。
FA権を行使した投手や外国人選手の補強はあるかもしれないが、現時点では既存の投手たちの奮起に期待するしかない。
一方で、今季はNPB記録となる8人の投手が一軍初勝利をマークしたように、若い投手たちの芽は確実に出てきている。その8人のなかで、堀田賢慎、赤星優志、直江大輔、山﨑伊織、そして井上が先発ローテーション候補となるが、左腕は井上ひとりだけである。
巨人の先発ローテーション候補を見ると、確約といえそうなのは菅野智之と戸郷翔征だけ。メルセデスは残留が決定的であることが報道されているが、昨季11勝を挙げた高橋優貴は今シーズンわずか1勝に終わり、9月には左肘のクリーニング手術を受けたことで自由契約になった。
高橋は育成契約を結ぶようだが、開幕に間に合うのかどうかは不透明。やはり日本人の先発左腕は、喉から手が出るほどほしい状況だろう。それだけに、先発で奪三振を多く奪うことのできる先発左腕、その先の左腕エースの確立へ向けて、井上にかかる期待は大きい。
2022年シーズンと、オフの侍ジャパンとの強化試合でその片鱗はしっかりと見せた。冬を越え、球春を迎える頃にどんな姿を見せてくれるのか。井上温大の今後を楽しみにしたい。
文=BASEBALLKING編集部