V燕との差埋める「助け合う」エースの矜持

　DeNAのエースであり選手会長でもある今永昇太が8日、契約更改交渉に臨み、4000万円アップの年俸1億4000万円でサイン。「どの数字でも一番になっていないので、自分自身、チームが優勝するため、チームを引っ張っていけるような数字を出していきたい」と来季への抱負を語った。


　今季は11勝4敗と、ひとりで貯金を7つ作り、防御率も2.26。交流戦ではノーヒットノーランを達成し、8月は5戦無敗と、チームを2位に引き上げる原動力となったが、「一年間一軍にいたわけではないので、満足しているわけではない。球団からは労いの言葉を頂きましたけれども、もっとやってくれと思っていたんじゃないかなと僕は予想してます」と冒頭から今永らしい言葉が飛び出した。

　自らの成績について「一年間一軍でローテ守れていれば当たり前に超えていかなければいけない数字なので、この数字が出せてよかったではなくて、最低限の最低限の最低限の数字だと思います」としながらも、「6月の後半に3試合連続で良くなかったですけど、そのあと8月立て直して見栄えのいい数字になった。そこは盛り返せてよかったなと思います」と一定の満足感は示していた。

　印象に残る試合は「やっぱりクライマックスシリーズ、一戦目に先発して勝てなかったというところ」と阪神戦を振り返る。地元・横浜スタジアムでの大一番で5回2失点。青柳晃洋との投げ合いに敗れ、「それが一番自分の力を表していると思うんで、あそこで勝てないところがまだまだ物足りない、情けない選手だなと思いました」と悔しさを顕にした。

　このオフは「左の逃げる球の被打率が良くない」と、自ら“弱点”だと認める左打者対策に取り組む予定で、「（カット系とは）対になるボールに力を入れて自分の弱点を薄くみせる。そう考えたほうがステップが早い。弱点の方ばかりに目を向けすぎると良くない」と発想の転換で克服していく考えを示した。


　チームとしては、前年最下位から2位にジャンプアップしたが、首位・ヤクルトの背中が見えてきたところで突き放された。今永は「村上（宗隆）選手が『助け合い』と口にしていた。ヤクルトに限らず強いチームは、誰かのミスは誰かがカバーする。誰かがいないときは、誰かがまた出てきて結果を残したりとかできるのが強いチームだと思う」と王者との違いを痛感。

　「先発陣としてそれは何かというと、誰かが早い回でマウンドを降りてしまったとすると、誰かが長いイニングを投げる。もちろん自分も早い回で降りることもあるんですけど、来週はそのミスを取り返す。それを一年間できるかどうか。僕は当たり前ですけど、助けてもらうのではなく、助ける側に回る気持ちで来年一年間、引き続きやっていかなければならない」とエースの矜持も口にした。

　会見の最後には「今年一年間皆さん、取材ありがとうございました。来季以降も前向きな記事を書いてもらえるように、選手一同頑張っていきたい」と感謝と決意で結んだ左腕。人一倍高い志で、8年目こそ頂点を掴む。


取材・文・写真＝萩原孝弘（はぎわら・たかひろ）